第31話 状況終了!(sideM)


「くそう! 例えこの命が無くなっても、二宮金次郎だけはやらせはせん! やらせはせんぞ!」


 いや向こうの狙いはアナタですよね? 良いんですかそれで?


「今だあああああああああああ!」


 教頭は叫ぶと、ゴロッと転がって銅像の陰から出た。すぐさま屋上に向かってタタタタタタタタ! とサブマシンガンを撃つ。


「ぐっ……!」


 と、屋上から短い男の悲鳴が聞こえてきた。どうやら教頭の弾が当たったらしい。

 ここで、バララララ! とヘリコプターのプロペラ音が近づいてきた。

 ヘリコプターは学校まで来ると、屋上付近でホバリングした。


「ふふっ、敵わないと思って退却ですか」


 教頭は不敵に言った。

 ヘリコプターから梯子が伸び出て、屋上に居た迷彩柄の服を着た男がそれに掴まって中に入っていった。

 ヘリコプターは旋回し、学校から離れようとする。


「考える人の恨み、晴らさずして逃がすものかああああ!」


 教頭は、今度は二宮金次郎の銅像の土台に付いた赤いボタンを押した。パカッと開いた先から出てきたのは、ロケットランチャーだった。


「え? え? え?」


 色んな感情に縛られて動けないボクをよそに、教頭はロケランを右肩に担いで照準を定める。


「行っけええええええええええええええええええええええ!」


 と叫びつつ、教頭はロケランの引き金をカチッと引いた。

 ドオン! とロケランが発射された。弾は綺麗な直線を描きながら、ヘリコプターに直撃。


 ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 ヘリコプターは、空中で木っ端みじんになり、小さな破片がバラバラと落ちた。

 爆発により、校舎や地面が揺れるほどの衝撃が走る。


(え、えええええええええええええええ? てか、ええええええええええええ?)


 ちょ、いや、えっと、え、ええええ?

 もう何が起こってんの?


『皆さん、極悪ごくあく非道ひどう六神ろくしんじゅう城ヶ崎じょうがさきには気をつけましょう』


 なんで何事も無かったかのように校内放送?

 みんな普通にそのへん歩いたり談笑したりしてるんですけど。

 え、これが教頭のサイレント何ちゃらの効果?


「ふふふ。まあ、今ので倒せたとは思いませんよ」


 いや木っ端みじんになってませんでした?


「彼らを甘く見てはいけません。あれはデコイ。私がロケランで撃った頃にはもう、ヘリコプターには誰も乗っていなかったのでしょう。ヘリをオトリにして逃げるとは、なかなかやりおる」


 教頭はロケランを銅像の土台の中に戻した。


「え、あの、その……」


「心配無用ですメガネくん。もう今年の課外授業は破滅に向かいません」


 いや他に聞きたいこと山ほどあるんですが?


「悲しい者たちよ。彼らは昔、課外授業にトラウマがあって、こういうことをするのです。もし、彼らがワタシたちの学校で課外授業を受けることが出来ていたら……」


 教頭は首を横に振ることで、先の言葉を飲んだ。


「こんなことを言っても仕方ありませんね……。ではワタシはこれにて失礼」


 悲しげに言うと、教頭は静かに去っていった。


 なんだか良く分からないけど……、


(良く分からないけど……)


 この学校は、教頭先生が居れば大丈夫。

 そう感じた日でした。


 あ、因みにボクのお昼ご飯は教頭のふところに封印されたままです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る