第30話 モノホンです(sideM)


「なかなか腕の良いスナイパーを雇ったようだ」


 言うと、教頭は『考える人』の銅像の土台に付いた赤いボタンを押した。するとそこがパカッと開き、中からサブマシンガンが出てきた。


「え? え? え?」


 何が何やら解らないボクを尻目に、教頭はサブマシンガンをガシャガシャ鳴らして銃弾を装填する。

 その途中、タタタタタタ! と銃声? が鳴って、『考える人』の銅像がどんどん削られていった。


「え? え? え? これ、え?」


 もしかして本物の銃で撃たれてます?


「メガネくん、間もなくこの銅像は終わりです。ワタシが合図を送ったら、向こうの銅像に走って下さい!」


 教頭が視線で差した方向には、二宮金次郎の銅像が。


「あの、えっと」


「簡潔に言います! 今ワタシたちはスナイパーに狙われています! もちろん、本物の銃で!」


 ここで銃声は鳴りやんだ。その機を見計らってか、教頭がしゃがんだ状態で銅像の陰から出た。そして屋上に向かってタタタタ! とサブマシンガンを撃つ。


(え、えええええええええ? てか、ええええええええ?)


 なんかもう……情報量が多すぎてついていけないのですが。


「くっ、なかなかやりますな!」


 教頭はゴロンと転がって銅像の後ろに戻って、サブマシンガンに銃弾を装填する。その隙に、再び屋上からタタタタタ! と銃が撃たれて『考える人』が削られていく。


(ヤバいヤバいヤバい!)


 もう考える人が考えられないほど削られてるって!


『皆さん。極悪ごくあく非道ひどう六神ろくしんじゅう城ヶ崎じょうがさきにはご注意を!』


 こんな時に校内放送おおおぉ?

 そんな場合じゃないよね?

 銃弾に気を付ける時だよね?

 何でみんな気づいてないっぽいの?

 え、もしかしてボクたちだけ別次元に居ます?


「他の皆のことならご心配なく!」教頭は素早く言った。「ワタシが編み出した『サイレントマインド』の効果によって気づきませんし、相手にもワタシたちだけしか見えませんし攻撃も当たりません!」


 なにそのゲームのスキルみたいなやつ。

 これってそういう作品でしたっけ?


「今ですメガネくん!」


 銃声が止んだのを見計らって、ボクと教頭は走って二宮金次郎の後ろに隠れに行った。向こう側の『考える人』の銅像は、撃たれすぎてもう足の断片しか残っていない。


「許せません! よくもお気に入りの『考える人』の頭を撃ち抜いて考えさせないようにしましたね!」


 うまくねーし、怒るとこ違くね?


「どうやら今年も『きよキラの課外授業撲滅委員会』が動き出しているようですね!」


 なにそのピンポイントな組織?


「確かに、ワタシを倒せば課外授業を壊滅に向かわせることは容易い!」


 しかし! と教頭は続ける。


「生徒たちのために、ワタシは戦いますよ! 何せ課外授業は、学校で友達が居ない生徒のために作られた大切な行事! そう! 孤立する生徒を作らないための、大切なものなのです!」


 タタタタ! と屋上から銃撃が。今度は二宮金次郎が削られていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る