第29話 おいでなすったぜ、敵さんがよう!(sideM)


「お昼ごはんはそれかね?」


 教頭はボクが持つアンパンを視線で差した。


「あ、はい。本当は焼きそばパンが良かったんですけど、やっぱり人気で残ってなかったんです」


「ふむ。そういうことなら」


 言うと、教頭はスーツのふところから焼きそばパンを出した。


「ワタシの焼きそばパンと交換しないかい?」


「え、ええ? 悪いですよ!」


「ふふっ。遠慮する必要はありませんぞ。ワタシなら毎日のように焼きそばパンを強奪できますからね」


 強奪?


「ふっふっふっ。焼きそばパンの取り合いでも、まだまだ若い者には負けませんぞ。まあ彼らはワタシの存在にすら気づいていないでしょう。某国の隠密機動隊トップクラスに所属していたワタシの、ね」


 何者なんですかアナタは?


「じゃ、じゃあ、遠慮なく……」


 ボクが教頭と焼きそばパンと交換しようとした時だった。

 チュイン! と音が鳴り、近くの地面に小さな穴が空いた。そこから煙が立ち昇る。


「……え?」


 今のは一体……?

 面食らっていると、


「メガネくん、少々お付き合いを!」


 教頭が僕からアンパンを取り上げ、自分が持つ焼きそばパンごとスーツのふところにしまった。


「え? なんですか?」


「失礼!」


 言いつつ、教頭はボクの頭を掴んでその場に伏せさせた。


「しばらくそうしていてください!」


 ワケが解らぬまま、伏せていると……。


 タタタタタタ! と銃声? のようなものが聞こえてきた。その音に連動して、地面に小さな穴が沢山出来ていく。


「え? え? え?」


 混乱するボクとは対照的に、


「ふっふ。なるほど、彼らもスナイパーを雇ったようですね」


 教頭はとても冷静だった。

 銃声? が鳴りやむと、教頭は、


「メガネくん、今です! あの銅像の後ろに隠れましょう!」


 指示通り、ボクは教頭と一緒に『考える人』の銅像の陰に隠れた。


「え、あの、何が起こって?」


「なーに、ただの襲撃ですよ」


 ただの襲撃って何ですか?


「銅像から顔を出さないでくださいね。頭を撃ち抜かれますから」


 ちょっとさっきから話についていけないのですが?

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