第27話 真実を知る者(sideM)


 どうも、メガネです。

 牛乳瓶の底のようなメガネをかけた男子ですよ。


 ええ、鞘師さやしトアリさんのとばっちりを受けて最前列になったメガネです。

 一応、早乙女さおとめ勇気ゆうきって名前があるけど別に覚える必要はありません。


 ボクは今から購買でお昼ご飯を買いに行くところです。

 焼きそばパンは人気ですぐ売り切れるらしいので、練乳パンか何にしようかと思ってます。


「あ……」


 教室を出ようとした時、一人寂しく席でお弁当をつつく城ヶ崎じょうがさきくんが目に入った。

 皆は誤解してるようだけど、彼は良い人です。

 数学の授業で、極悪ごくあく非道ひどうな奴だとか校内放送が入ったけど、そんなことありません。


『皆さん、お昼の時間です。極悪非道六神獣ろくしんじゅうの城ヶ崎には注意しましょう』


 校内放送が入った。副生徒会長の加藤かとう律子りつこさんの声だ。


(城ヶ崎くんはそんな人じゃない……。パン買ったら城ヶ崎くんと一緒に食べよう……)


 ボクに出来ることは、城ヶ崎くんの味方になることだ。

 うん、そうしていくうちに、ボクが少しずつ誤解を解いてあげよう。


(ええと……)


 購買コーナーは人で溢れていた。焼きそばパンはもう売り切れ。でも隅っこの方にアンパンが残っていた。ボクはそれを買って、その場を離れた。


(……あれ?)


 渡り廊下の先から、鞘師トアリさんが走ってきた。

 鞘師さんはギシュギシュと防護服を鳴らしながら、慌ただしくボクとすれ違っていった。鞘師さんが向かった方向は下駄箱。


(なにか家に忘れ物でもしたのかな……)


 ぶっちゃけ、鞘師さんに良いイメージはありません。

 でも、なんだろう……。

 城ヶ崎くんのように、鞘師さんも……もしかしたら本当は良い人なのかなと思う時があります。

 今度、勇気を出して話して、確かめてみよう。


(……ん?)


 中庭に差し掛かった、その時だった。

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