第26話 やはり変な数学教師、そして六神獣への布石


「では城ヶ崎じょうがさきくん、解きたまえ」数学教師は言った。


 結局かよ。


「はぁ……」俺は気怠く立ち上がった。「解りません……」


「あぁ城ヶ崎くん、そういうのいいから」


 は?


「いいから解きたまえ」


 いや解りませんっつったよね?


「今ならテレフォンが許されていますよ?」


 テレフォンってなに?


「テレフォンとは、答えを知っていそうな相手に電話をかけられるチャンスのこと。一般常識ですよ?」


 初耳なんですが。


「さあ城ヶ崎くん、どうします? テレフォン使いますか?」


「……じゃあテレフォン使います……」


 俺は渋々言った。すると数学教師はえらく真面目な顔をして、


「授業中に何を言っとるんだキミは? テレフォンなんて認められるわけがなかろう」


 数秒前貴様に指示されたことを渋々実行してやったまでだバカ野郎。


「なーんて、ジョークだよ城ヶ崎くん。キミの緊張をほぐすための、ね」


 こちとら貴様の体を物理的にほぐしたくなっただけだ。


「まあ城ヶ崎くんは良からぬ噂が流れていて、まだお友達も居ないと聞きますから、テレフォンは無理ですかね」


 るせえわ。


「私が、ある生徒の電話番号を教えてあげます」


 教師はスマホを取り出し、ポチポチ操作した。


「は~い、今、城ヶ崎くんのスマホに電話番号を書いたメール送信しましたから」


 何で俺のメルアド知ってんだキモいな。


「さあ、そこに記された番号に電話するのです」


「……はいはい……」


 仕方なく、俺は電話をかけた。一体、誰の電話番号なのだろうか。


「あの、もしもし? 城ヶ崎俊介しゅんすけだけど、さっきの問題でテレフォン使って……」


『ちょっと! 私がトイレ行ってること知って電話かけてくるなんてセクハラよ!』


 おまえかいいいいいいいいいいい。


『生徒会副会長として、あなたを処罰します!』


 ブチッと通話は切れた。そして間もなく、


『生徒会副会長の加藤かとう律子りつこです!』


 校内放送が入った。まさかと、俺に嫌な予感が走る。


『このたびは城ヶ崎俊介という生徒の素行不良を追加で発表したいと思います!』


 やっぱな! やっぱな!


「あんのクソバカ副会長があああああ!」


 俺は教室から出て、放送室に走った。

 が、もう遅かった。


『城ヶ崎俊介という男は、詳しい内容は伏せますが酷い行いをしました! 極悪非道な行為でした! そんな城ヶ崎俊介に皆さん注意して下さい!』


 俺は、きよキラ高校に再び名を馳せた。

 極悪非道行為をする男子生徒として。


「いとをかし」


 極悪非道城ヶ崎が爆誕した瞬間、鞘師さやしはえらく上機嫌でそう言ったという。

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