第25話 最初の授業

 流石は全国トップクラスの進学校といったところだろうか。

 教師の教え方が一流で無駄がなく、高校レベルの知識がすんなりと頭に入ってくる。

 鞘師さやし加藤かとうの二人に挟まれていても、授業に入るとそれが気にならなくなっていた。むしろ逆に心地よさを感じられるくらい、教え方が上手かった。


(凄いな、やっぱ……)


 授業のレベルについていけていないクラスメートの姿が見られない。

 皆、心地よく授業を受けていることが手に取るように分かる。それほど完成度の高い授業内容だった。


「ふむ。今日はここまでにしておきましょう。残りの十五分を自習にしようと思いますが、それも芸が無いと思うので、大学レベルの問題を出してみます。勿論、今回の授業で習った公式を使えば解けなくもありませんが、それはかなり難しいですよ? まあ一種のオリエンテーションとして挑んでみて下さい」


 数学教師は問題を板書した。それはとても長く、俺には到底解けそうにないものだった。


「誰か解る人、居ますか?」


 挙手する者は居ない。数学教師は「ふむ」と声を出した。


「恥じることはありませんよ。それが普通です。でも挑戦してみることは大事ですから、ランダムに当ててみます。では……加藤律子りつこさん」


「はい!」


 加藤は元気良く立ち上がった。


「何事にも挑戦です。加藤さん。解いてみてはどうでしょう?」


 加藤は腕を組み、問題と睨み合った。

 しばらくすると、大きく息を吸ってから、


「解りません!!!!!!」


 力強いな。


「というわけで先生、城ヶ崎じょうがさきくんが解くべきだと思います!」


 どういうわけだよ。


「ぷぷっ」


 隣で密かに笑ってんじゃねーよクソバカフルアーマー系女子。


 数学教師は言う。「じゃあ城ヶ崎くん、解きたまえ」


 じゃあって何だ。


「いいから解きなさい城ヶ崎くん! 私は解けないの!」


 だからって何で俺に解かせるんだよ。ていうかさっきから出てくるおまえのその力強さは何なの? 解けて力強くなるんならまだしも。


「あっ、先生! 私、お手洗い行ってきます!」


 もう何処にでも行け。


「分かりました。では加藤さん、行ってもいいですよ」


「ありがとうございます!」


 一礼し、加藤は教室から出ていった。

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