第14話  それが判明するのは最終話とかになります


「はあ……」


 午前授業だったのに、その密度に俺は疲れ果てていた。

 あの後も大変だった。鞘師さやしは誰かが咳き込む度に注意したり、咳払いにも過敏に反応して注意したり……。

 くしゃみなんてしようものならもう大変。除菌スプレーを振りまきながら教室からマッハで逃げ出す始末。

 クラス委員長として、俺は事あるごとにフォロー(というかツッコミ)を入れたり鞘師を教室に連れ戻したりで、精根尽き果てていた。その度にクラスメートからの俺の評価はダダ下がりになっていった。


「はあ……」


 席を替わってくれたら友達作りに協力してくれる、と鞘師は約束してくれたけど、あの調子じゃ無理だ。

 高校デビューどころか友達を作ることもままならない。


『ギシュ、ギシュ、ギシュ』


 帰り道を進む度に、後ろから例の音が聞こえてくる。


『ギシュ、ギシュ、ギシュ』


 奴だ。奴が背後に居る。

 不意をつくため、俺は勢いよく後ろに振り向いた。すると背後に居たフルアーマー系女子、鞘師がビクッと後退りした。


「……なにしてんだ?」


 鞘師は「ふっふっふっ」と笑って、


「やりますね。私の気配に気付くとは」


「気配ってか防護服のわずらわしい音が鳴ってんだよ」


「まさか城ヶ崎じょうがさきくんがエスパーとは思いませんでした」


 人の話を聞け。


「ふふふ。ともあれ、今日はここまでにしておきましょう」


「何がだよ? てか何で学校からここまで付けて来たんだ?」


「そうですね……。その答えはあなた自身の中にあるのかもしれません」


 いや防護服の中に居るおまえの中にあるからさっさと教えろ。


「では失礼」


 鞘師はギシュリと疾走した。すれ違い様、鞘師は俺の背中を軽く叩いて消えていった。


「……何がやりたかったんだ、アイツ……」


 その時、鞘師が何故、俺の背中を叩いたのか……。

 それを俺が知るのは、もうちょっと先の話のことであった。

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