第13話 今夜はハンバーグらしいです(知らんがな)


「とまあ、こんな感じでクラスを仕切っていくので、よろしくお願いしますね」


「んなクラス委員長聞いたことないんだけど!」


 俺は堪らずツッコンだ。


「いきなり大声を出さないで下さい城ヶ崎じょうがさきくん」鞘師さやしはギシュリとこちらを向いて、「クラスの風紀が乱れます」


「いや鞘師のやり方を呑んでるとそのクラス自体が滅亡するんだよ! おまえさっきから死刑宣告しかしてないからな?」


 ハハッと鞘師は笑う。


「私が提言する除菌についていけないようならそこまでの器ってことですよ。私は振り落としていくタイプの委員長ですし」


「振り落とすどころか絶え果てるの! 呼吸器官の活動停止しろとか摂氏一七〇度のサウナ入るとかやってみ? 死ぬわ普通!」


 あぁ……、と鞘師は至極冷静な声を出した。


「それなら大丈夫。私のマスクなら逆に空気を清浄にできますから呼吸器官の活動を停止する必要性もありませんし、摂氏一七〇度も防護服ならなんとか耐えられますから」


「言うと思ったああああぁ! ゼッテー言うと思った! おまえマジで自分のことしか考えてねえのな!」


「当たり前じゃないですかー(さっきからうるさいなこの素朴オブ素朴男子は。ビックリマーク付けすぎだっつーの。ビックリマンかよ。てか語彙も乏しいしツッコミのセンスもない、キレもない、合理性も無い。ダメだねこれ、ツッコミの才能無いわ。てか今晩はハンバーグらしいから、テンションマックスマックス! メガマックス! テラマックス! 空前絶後っ! 究極にツイてるっ!)」


「括弧内なげーよ! 普通に言え! つーか後半超どうでもいいしウザいんだけど!」


 ツッコミに疲れて息継ぎした拍子、俺は自分の立ち位置が教壇の前であることをハッと思い出した。皆が恐れるような顔で俺を見ている。

 ツッコミにヒートアップした俺を見たクラスメートたちは、


「やっぱヤバイな」


「こえええ……」


「委員長になった理由がハッキリしたな」


「ああ、クラスを支配するためとかだな」


「恐〜い」


「どうなるのこのクラスは?」


 ヒソヒソしだした。


(くっ……。ダメだ……これ以上、みんなの恐怖を煽るようなことは出来ない……)


 俺は深呼吸して、なんとか落ち着きを取り戻した。


「ま、まあ、とりあえず……。鞘師……さんのプランは一つのジョークみたいなものなので、みんな気にしないように」


「えっ? ジョークじゃないって、ワリとマジで本気――」


「うんうるさい」


 付き合うときりがないので、俺は速やかに切り上げてやった。舌打ちした鞘師と入れ替わって、俺は教壇の前に立つ。


「なにはともあれ、俺たち二人でこれから頑張っていくので、よろしくお願いします」


 精一杯の笑顔を見せたつもりだったが、引きつっていたのが自分でも分かった。クラスメートたちは分かりやすく恐怖で支配された顔をしていた。

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