第12話 よろしくお願いしまーっす☆


「じゃあ城ヶ崎じょうがさきくんと鞘師さやしさん。クラス委員長として、前に出て自己紹介してくれるかしら。クラスのまとめ役としての抱負もお願いね」


 ギシュリと立ち上がった鞘師と共に、俺は教壇の前まで行った。そして岩田いわた先生と入れ替わるように教壇の前へ立ち、皆の方を向く。

 俺の隣には白い物体が一つ。


(くっそー。やるっきゃない、か)


 やむを得ない。腹を括るか。こっから巻き返す他の作戦を考えよう。


「え、えーと、男子のクラス委員長をやることになった城ヶ崎俊介しゅんすけです。学校に知りあいが居ないので不安ですが、よろしくお願いしま~っす☆」


 学校内で孤独という、話しかけやすくなる要素をさり気なく組み込んでの挨拶は、我ながら誤解を解くには上出来な自己紹介だと思った。

 んだけど、


「ぜってー嘘」


「だな」


「中学ん時の軍団とか居そうだし」


「いつかバイクで突っ込んでくるって、校門に」


「恐〜い」


「やだ〜」


 と、余計恐怖を煽るような感じになっていた。


(何でだよおおおおおおおおおおおおお!)


 くそ……。あの鞘師さえ……鞘師とのやりとりさえなけりゃこんなことにはならなかったのに……。


「え、えっと、とりあえずよろしくお願いしま~す……」


 俺は力無く一礼した。


「何はともあれ、これから頼むわよ」岩田先生は教卓に腰をかけている。「じゃっ、次に鞘師さん。お願いね」


 今度は鞘師が教壇の前に立ち、皆の方を向く。黒塗りのゴーグルでその焦点が何処に向かっているのか分からないが。


「どうも初めまして、女子のクラス委員長になった鞘師トアリです。早速なんですが、このクラスのスローガンを発表したいと思います」


 ざわっとする教室。


「いつ如何なる場合であっても、教室の除菌率九十九・九パーセントを目指しましょう。あっ、そこのあなた」


 鞘師は中央付近の席の男子を指差した。


「今、汚い息を吐いたでしょう。呼吸器官の活動を止めなさい」


 死ねってこと?


「は〜い、そこの女子〜」鞘師はまたも指差す。「咳払いしたじゃーん。はいたった今、汚染度上がりましたー。教室のために今後はずっと呼吸器官活動停止するように」


 死ねってこと?


「あっ、そこのいかにも体育会系の男子~。部活の朝練で汚染されてるでしょう? 今から摂氏一七〇度以上のサウナルームで一分半ほど全身を熱消毒してくるように」


 だから死ねってこと?


 鞘師の怒濤の除菌プランに、ほとんどのクラスメートたちはキョトン顔。

 岩田先生と、鞘師のことを昔から知った風の女子たちは呆れ顔だ。

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