第2話 ゴブリンリーダー
洞窟を奥に向かって進んで行くと、何度かゴブリンと遭遇した。それらを倒して、一つ分かったことがある。倒した時に魔物が装備している物は一緒に消えてしまうが、倒す前に手放したものは消えずに入手することが可能だ。
先程の戦闘でゴブリンの腕を上手く斬り落とし、その後に首を斬り飛ばして倒したのだが、体と切り離されたナイフはそのまま残っていた。
なので、今は両手にナイフを装備している。
あとは魔石だ。これは倒した後に生成されるわけではなく、魔物の体内に初めからあるようで、それを破壊することでも魔物は倒せるのだが、その場合は一緒に消滅してしまうようだ。
しばらく進むと、小さな泉を見つけた。汚れた手を洗おうと水の中に手を入れると、手の甲にあった傷が消えてなくなった。
回復の泉みたいな物だろうか?
飲んだら体力が回復する?
試しに少し飲んでみると、確かに体力の回復を感じる。腕にあった傷も急速に修復されるように消えていった。
いざという時の為に持っていきたいので、持ってきたペットボトルの1本の中身を捨てて、泉の水に入れ替える。だが、得体の知れない物に違いは無いので、あまり頼り過ぎない方がいいだろう。
その後も度々現れるゴブリンを退治しながら、洞窟の奥へ歩いて行くと、先の方に開けた場所があるのに気が付いた。
警戒して入り口からソッと中を覗いて様子を伺う。
学校の校庭くらいありそうな広い空間に、たくさんのゴブリンがいた。奥の方には他の奴よりも体格の大きいのがいる。あれがこの群れを束ねているのだろうか? とりあえず、あれをゴブリンリーダーと呼ぶことにしよう。
さて、こんな大量にいるところに入るなんて、普通は自殺行為なんだろうけど……もちろん突撃する!
正面から特攻し、近くにいたゴブリン2体の首を瞬時に落とす。その際、先に手首を斬り落とすのも忘れない。可能な限り使える武器は確保しておきたい。
「「ギギギャアーッ!」」
ゴブリン2体が倒れ、一拍遅れて他のゴブリン達が騒ぎ出す。
今はまだパニック状態。やるなら今だ!
何も考えず、近くにいるゴブリンから手あたり次第に殺していく。こちらに向かってくる奴もいるが、攻撃はバラバラであり全て返り討ちに出来る。全て腕を斬り落としてからというのは厳しいので、余裕がある時以外は首か魔石がある胸を狙う。
20体程倒した頃だろうか、ようやく奥に構えるリーダーが動きを見せた。
「ギィィィィッ!」
耳を劈くようなひどく甲高い声を響かせる。その声を聞いたゴブリンは一瞬動きを止め、次の瞬間にまとめて動き出した。
「やっぱりこうでなくちゃ!」
思わず笑みが零れる。
リーダーならば配下のゴブリンに指示が出せる。思っていた通り、ゴブリンリーダーの一言でバラバラだったゴブリンは一斉にこちらに向かって走り出した。
私も同じくすぐに走り出す。
一度この部屋から出て右に曲がる。チラリと背後に目を向けると、大量のゴブリンが追いかけて来ていた。
ここに来る間に、捌ききれない程のゴブリンに出会った場合、どうするかは考えてあった。この先を曲がったところからは道が狭くなっており、通れてもせいぜい2匹程度だ。天井も高くないため上から飛び越えてくることもない。
この細い通路なら、体力が持つ限りいくらでも相手が出来る!
行き止まりを左に曲がり、細い通路に入ったところで振り返る。
大量のゴブリンが一気に細い通路に押し込み、通り抜けられずに騒がしく声を上げていたが、ほとなくして一体ずつ並んで襲い掛かって来た。
狙い通り過ぎて口の端が釣り上がるのが分かる。
「さぁ、狩りの時間だよ!」
襲い掛かるゴブリンを確実に一体ずつ倒し、危なければ後方に回避するを繰り返す。それを先程の倍、40体ほど繰り返したところでゴブリンの追撃は終わった。
使っていたナイフはボロボロになっていたため、落ちていたナイフと交換しておく。さらに、回復の泉の水を飲み体力を回復するのも忘れない。
元の広間に戻ると、ゴブリンリーダーが一人佇んでいた。向こうも私の姿を認めると、ニヤリと口の端を歪める。
いいね。私も同じ。強い者と戦うのはワクワクする。
「さぁ、やろうか!」
二刀のナイフを構えゴブリンリーダーに向かって走る。相手の獲物はロングソード。リーチでは不利だが、小回りが利く分速さで圧倒出来るはず。
「ギィァ!」
私が斬り込む瞬間に、ゴブリンリーダーの剣が振り下ろされ、ナイフでその一撃を受ける。
思ったよりも早い!
受けた方とは逆のナイフで斬りかかるが、相手はそれを腕で受け止める。ゴブリンなら普通に切り飛ばせていた一撃は、ナイフの刃が半分ほど入ったところで止まっていた。
今までのゴブリンよりも硬い。
倒すにはもっといい武器……例えば、相手の持つ剣を奪う必要があるだろう。
一度距離を取るため飛び退くと、それを追うようにゴブリンリーダーが斬りかかって来る。それを受けようとナイフを構えたが、嫌な予感がして両のナイフで受け止めた。その瞬間、片方のナイフが砕け散る。
さっき剣を受けた方のナイフは、もう耐えられないのか。
再び大きく引いて、追い打ちされない様にもう片方のナイフを投擲する。
ゴブリンリーダーはそれを剣を持たない方の腕で受け、ナイフは腕に突き刺さった。
ナイフが刺さったまま気にも留めない……。
なら、少し賭けに出てみるか。
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