第10話 真相
俺たちは朝食を食べると、調査に出掛けた。今日は、綺麗な水はどこから来ているのかを突き止めるつもりだ。本当は『魔術師』のカードで水の中身を特定したいのだが、今日は他に何があるかわからないので、一日が終わる時に調べることにした。
俺も少しは計画性が身に付いたかもしれない。
水路を辿って行くと、小川に行きついた。
どうやらこの村の西側は山の上流の小川から水を引いているようだった。川の周りは岩がゴツゴツしていて、ちょっとした登山だ。
「リョウ!! 待っていてくれ。先に上に昇ってロープを垂らす」
アルはまるで野生動物のように軽やかに崖のような山道を登って行った。アルが少し山道を登り、ロープを垂らし、俺がそれに掴りながら登り、またアルが先に行ってということを繰り返し、等々俺たちは山頂近くに着いた。
「はぁ~~ついた~~~!!」
ずっと険しい岩ばかりだった俺は、これまで登って来た道を確認すべく、景色を見た。
「すげぇ……」
俺の語彙力は死に絶え、単純な言葉しか口に出来なかった。
「美しい景色だな」
アルが俺の隣に立ちながら呟いた。
俺はそんなアルの隣で大きく息を吸い込んだ。
「やっほ~~~!!」
小学校や中学校の頃に、山に登ることはあっても、あまり言う機会のなかった憧れの言葉をおもいっきり口にしていた。実は一度言ってみたかったのだが、周囲にいつも人がたくさんいたので言いたくても言えなかったのだ。
「やっほ~~って何だ??」
すると足元から、やまびこが返ってきた。
俺もやまびこが返ってくるという知識はあったが、言葉が変化するのは知らなかった……。
「って、そんなわけないじゃん!! やまびこが違うこという訳ないし!!」
俺は、足元を見た。
「アル!! 近くに何かいる!!」
「ああ」
俺たちは、警戒して周囲を見た。そして、アルが反対側から山を降りた。もし、ここで魔物が出てきても対処できないので、俺もアルについて行く。
すると目の前に大きな洞穴があり、高さがキリンくらいある大きさのフクロウに似た鳥が俺たちを見ていた。
「珍しいな。この山に人の子が足を踏み入れるとは……」
フクロウに似ているが、フクロウじゃない。モコモコしたこの鳥はなんだ?
俺が必死に鳥について考えているとアルが口を開いた。
「ここは聖獣殿の住処だったのか」
「は? 聖獣?」
俺は目の前の大きな鳥を見た。聖獣というからてっきりもっとファンタジー色溢れる見た目かと思えば、魔物の方がまだファンタジーな見た目だ。
「ふん。それは、人の子が勝手に……」
そこまで言うと、フクロウは顔を歪めて、いきなり地面に背中を擦りつけた。
その途端、パラパラと洞窟内の石が崩れ落ちる。
「危ない!! リョウ!!」
俺はアルに抱きかかえられて洞窟を出た。地震のように大地が揺れ、洞窟から石が次と崩れ落ちる。
「クレッシェレ!!」
俺はアルと自分の身の安全のために魔法カードを使った。なんでもいい、何か身を守るものを!! そう願って声を上げた。
「ガラッシア!!」
すると目の前に、みぃ~みゃちゃんが真っ黒な大胆に背中の空いた服を来て、鎌を振り上げ過ぎて、胸元が見えそうになっているというエロの極みだという『死神』のカードが出現した。
よし!! 俺は心の中で喜び、アルをぎゅっと掴みながら声を上げた。
「対象者:アル 逆位置!! 浮遊!!」
するとアルの身体がフワフワと浮き上がり、地面の揺れや岩が崩れるのから逃れ、空に浮かんだ。
「空に浮かんでいる?!」
アルは急いで俺の身体を抱きしめて俺が落ちないようにしてくれた。空から見ると、俺たちは不自然に岩が壊れている場所を見つけた。
「なぁ、アル。あそこ!! なんか、川に流れ込んでない?」
俺の言葉にアルも俺の指差す方を見た。
「本当だ……なんだ。あの不自然な物は……」
俺はアルを見上げながら尋ねた。
「あそこまで行けそう?」
「ああ」
アルは、空を歩くようにゆっくりと川に何かが流れ出している場所に向かった。その場所は崖に割れ目から何かが流れ出していた。どうやら、聖獣と呼ばれる鳥が暴れたせいで岩が崩れて何かが漏れだしてきたようだ。
すると聖獣の動きが止まり静かになった。
「アル……この隙に、俺が『力』のカードを使ってアルを強化するから、あの割れ目を防げる?」
するとアルが頷いて、俺を少し離れて状況の見える安全な場所に置いた。
俺はまたしても魔法カードを発動した。
「クレッシェレ!!」
そしてカードが回り出すと大きな声を上げた。
「セレクト!! 『力』!!」
そして宙に浮かぶアルに向かって言った。
「対象者:アル、正位置!!」
そう叫ぶと、アルは割れ目まで行くと、岩を叩いたたり、剣で切ったりしながら器用に割れ目を防いだ。最後に岩の上に行き防いだ場所をさらに大きな岩で塞いだ。
「よし!!」
そして、俺のところまで戻って来て俺を抱き上げると先程、の聖獣の場所まで戻ったのだ。
聖獣の元まで戻ると聖獣もどこか不快そうな顔をしていた。
「なぜそんなに暴れるのだ?」
アルの問いかけに、聖獣は顔をしかめながら言った。
「私とて、暴れたくて暴れているわけではない!! 背中に異変を感じるのだ!!」
背中に異変?
俺は背中に周り、聖獣の背中を見た、聖獣の背中は毛玉があったり、汚れていた
「ねぇ、ブラッシングとかお風呂とか入ったことある?」
俺が尋ねると、聖獣は眉を寄せた。
「ブラッシングとはなんだ?」
俺はアルの大きな木を取って来て貰って、枝を固定して俺の等身大くらいのブラシを作った。
「アル~~反対側持って。聖獣様は頭や身体を低くして」
聖獣は、言われた通りに身体を下げたので俺はアルと一緒に、聖獣をブラッシングした。
「なんだ、これは気持ちいい~~」
目を細めた聖獣の背中から吸血の魔物が飛び出した。
「リョウ!! 下がれ!!」
アルは華麗に吸血の魔物を倒すと足元に魔石が転がった。
「な、我の背に魔物が?!」
聖獣が目を丸くしていた。恐らく、この魔物のせいで聖獣は痒くて我慢できずに、背中を地面に擦りつけていたのだろう。
「アル~~もう一回行くよ」
「ああ」
そして、再びブラッシングをすると、またしても魔物が飛び出した。俺とアルは何度かブラッシングをして、魔物を倒してというのを繰り返したのだった。
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