第15話 白の天使と水着
夏休みが始まり1週間が経った。バイトや夏休みの課題をしたりとやや忙しい日が続いていたが今日はプールに遊びに行く日だ。
皆それぞれ乗る駅が違うため現地集合となった。俺は亮と未玖と同じ駅から乗るため駅で集合。一方、雪と瑠奈は一緒に現地まで行くそうだ。
水着を入れたリュックを背負い、家を出ると玄関の前に未玖がいた。いつもと雰囲気が違う気がするのは多分彼女の髪型がポニテだからだろう。
ドアが開く音に気付いた未玖は手を振りながらこちらへ歩いてきた。
「おはよ、晴。迎えに来たよ」
「公園で待ち合わせだったはずだが……」
「えへへ来ちゃったっ。晴とたくさん話したくて」
「そ、そうか……未玖が髪くくってるなんて珍しいな」
先ほどから髪型のことに触れて欲しそうにしていたので話してみると未玖は嬉しそうに髪を触った。
「そうなんだよ、気付いてくれて嬉しっ。髪下ろしてる人がふと髪をくくる……ドキッとするでしょ?」
「ドキッとするよりビックリかな、俺の場合は」
「そかそか。気付いてくれたことだし、高宮くんが待ってる駅に行こっか」
「あぁ、そうだな」
***
駅に着くと亮は先に来ていた。そこから3人で電車に乗り目的地の室内プールの最寄り駅へと移動する。
「あっ、瑠奈ちゃん達着いたってさ」
未玖は5人のグループのところに送られてきたメッセージを見て俺と亮に教えてくれた。
俺達も後数駅で着くため彼女達を長時間待たせることにはならないだろう。
スマホの画面から目を離すと未玖が何かを見つけ「あっ」と声を漏らすと亮に話しかけた。
「高宮くん、見てこれ」
「おぉ、美味しそう」
「こんなの見たら食べたくなってきたよ」
「だね」
2人で楽しそうにパンケーキの話で盛り上がっている中、俺は雪から来たメッセージに返信をしていた。
『もうすぐ着くよ』
『わかりました、待ってますね。晴斗くんをドキッとさせるような水着を持ってきたので覚悟してくださいね』
(ドキッとさせるような水着……)
どんな水着だろうと想像していると未玖から肩をポンポンと叩かれた。
「晴、ニヤニヤしてるー」
「ほんとだ、ニヤつくのはまだ早いぞ」
口元が緩んでいることに気付き、慌てて2人に背を向けた。
てか、ニヤつくのはまだ早いって亮はこの後、ニヤつく場面があると思っているのだろうか。
電車から降り、プールの施設へと着くと入り口前に雪と瑠奈を見つけた。
「2人ともおはよ」
「おっはよー、2人とも!」
未玖は2人を見つけるなり、瑠奈に抱きついた。するとこの前も見た光景だが、瑠奈がとても苦しそうにしていた。
「おはようございます、八雲くん」
「うん、おはよ、白井さん」
彼女も未玖と同じでポニテだ。今日は暑いから髪をまとめているのだろう。
「本日は私もお誘いくださりありがとうございます。友達とプールなんて初めてなので楽しみです」
「うん、俺も楽しみ」
ニコッと笑う白の天使の笑顔を見ていると暑いことなんて忘れてしまう。天使スマイルは凄いな。
全員集まり中へ入ると入館料を払い、そして着替えるため男女別れることに。
「じゃ、後で連絡して集合ね!」
「わかった」
女子3人の背中を見送った後、俺と亮は男子更衣室へと入った。
男子と別れると女子は着替えながら話していた。
「白井先輩、服着た状態からでもわかってましたが大きいですね」
「大きい? どこがですか?」
瑠奈にじっーと見られて気付いた雪は恥ずかしくて手で胸を隠す。すると隣で着替えていた未玖が後ろからぎゅっと彼女を抱きしめた。
「後、いい体してるよね」
「み、未玖さん!?」
雪を抱きしめる未玖と未玖から逃げようとする雪を着替えながら見ていた瑠奈は小さく笑った。
「未玖先輩、危ない人の発言してますよ。まぁ、白井先輩がスラッとしたスタイルをお持ちなのはわかりますが……」
「うんうん。ところで瑠奈ちゃんの水着可愛いね。似合ってる!」
「あ、ありがとうございます……去年買ったんですけど受験で結局プールには行かなかったんですよ」
黒の水玉が模様が入った水着を着た瑠奈は髪の毛を触りながら未玖に言う。
「そうなんだ。雪ちゃんは、やっぱ白が似合うね。可愛い!」
「そうですね、『白の天使』と呼ばれていますから先輩には白が似合います」
「ありがとうございます。未玖さんと雪さんもとても似合ってます」
雪がそう言うとまた未玖が彼女に抱きつこうとしていたので、瑠奈が未玖を引き止めた。
***
夏休みということもあって人が多い。探すのは時間がかかるので着替え終えると連絡を取り合い、集合した。
「瑠奈、似合ってるな」
「ありがとうございます、高宮先輩。というか会うの久しぶりですね。元気でしたか?」
「元気だったよ」
「そうですか。噂の他校の彼女さんはどうなりましたか?」
「黙秘で」
「えぇ~気になるんですけど」
瑠奈はニヤニヤしながら亮と楽しそうに話してる中、俺のところに未玖が来て、彼女はクルッと回った。
「晴、どうかな?」
「似合ってるよ」
「ふふっ、ありがと! お次は雪ちゃんだね。晴に似合うって言ってもらえるような水着を買ってきたんだって」
「へ、へぇ……」
ほんとか?と半信半疑でいると雪がラッシュガードを着たまま俺の近くまで来た。そして、その場でラッシュガードを脱いだ。
「お婆様と選んだものなのですが……どう、ですか?」
脱ぐところにもドキドキしていたが、水着姿にもドキッとさせられた。
雪は白い水着で、まさに白の天使だった。会ったことないがお婆様、雪が似合うものをよくわかってらっしゃる!
「凄い似合ってるし可愛いよ」
「! あっ、ありがとうございます……」
ストレートな言葉に雪は顔を真っ赤にして、素早くラッシュガードを着た。
「雪ちゃん可愛すぎるから晴、護衛ね。ナンパしそうな奴から守るんだぞっ!」
「護衛って……まぁ、白井さん、可愛いしナンパされそうだけど……」
「ちょっとちょっと別にいいんだけど、晴、雪ちゃんがアワアワしちゃってるよ」
(アワアワ?)
未玖に言われて雪の方を見ると彼女は顔だけではなく耳まで真っ赤にしていて、両手で頬を触っていた。
「白井さん、大丈夫?」
「だっ、大丈夫でしゅっ」
(うん、これ大丈夫じゃない……噛んでて可愛いけど)
苦笑いしていると雪はゆっくりとこちらに近づきそして耳を貸してほしいのか小さく手招きしていた。
少しかがんで耳を傾けると雪は俺の耳元で小さな声で囁いた。
「じっくり見たいのであれば後で二人っきりになったときに見せてあげますね」
「!」
雪は俺から離れると柔らかい天使のような笑みで微笑んだ。
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