第7話 幼馴染みとカフェ

 あれ、というのはお腹が空いたということ。映画館であれだけ食べて、昼食もしっかり取ったというのにまだお腹が空いてるとは……。


 常に鞄に食べ物を入れているわけではないので食べ物は今ない。


「白井さんの鞄に何か食べれるものあったりする?」

「食べられるもの……グミがあります。あっ、八雲くん、着替え終わったのでもうこちらを向いても大丈夫ですよ」


 彼女にそう言われて俺は振り返る。すると、カーテンが少しだけ開き、俺と白井さんは顔を見合わせた。誰が開けたんだと思ったその時、瑠奈がひょこっと現れた。


「先輩方、望月先輩は、もう店から出たので大丈夫ですよ」

「おう、ビックリした……瑠奈か」

「私で悪かったですね。先輩は、早く出た方がいいですよ。試着室で男女2人が入っていたなんて知られたら面倒です」

「あ、あぁ……そうだな」


 試着室の周りに人がいないことを確認してから俺は外に出て、瑠奈と白井さんは、服を買うそうで先に店を出た。

 

 しばらくして、白井さんだけが店から出てきた。瑠奈はまだ会計中のようだ。


「八雲くん、少し壁になってくれませんか?」

「壁? あぁ、うん……わかった」


 白井さんの前に立ち、少し後ろを向くとそこでは彼女が先ほど言っていたグミを食べていた。


(隠れて食べるんだ……)


 よく食べることっていいことだと思うけど、白井さんは、あまり人に知られたくないみたいだ。


「ありがとうございます。八雲くんも食べますか?」


 グミを1つ持った彼女は、俺にどうかと聞いてくる。じゃあ、1つだけというと白井さんは、俺の口元へグミを持っていき、なぜか食べさせてもらった。


「あ、ありがとう……美味しい」

「ふふっ、メロン味です。もう1口食べます?」

「いいの?」

「はい、では、あーん」


 もう一口もらい、食べていると横から視線を感じ、ゆっくりと横を向くとそこには瑠奈がいた。


「お、おぉ……瑠奈」

「はい、瑠奈です。先輩方、本当に付き合ってないんですか?」

「付き合ってないよ」

「そうですか。あま~い雰囲気であーんしてもらっていたので」

「甘い雰囲気……?」


 確かに周りから見て付き合っているんじゃないかと疑われてもおかしくないことはしていたが、甘い雰囲気かどうかはわからない。


「さてさて、服は買えましたしそろそろ解散しましょうか。八雲先輩、私と白井先輩は、この後、まだ他の店に寄りますが、先輩はどうします?」


 ここからはどうやら俺はいらないらしく、ついてきてもいいし、先に帰ってもいいらしい。


 女子2人の方が楽しめると思うし、俺は帰ることにしよう。


「先に帰るよ」

「そうですか。では、先輩、また学校で」

「八雲くん、また話しましょうね」


 2人と別れた後、1人でショッピングモールの出口へ向かい歩いていると、先ほど見かけた未玖が今度は1人でいるのを見かけた。


 一緒にいた友達はいないようで、1人でカフェの前に立っていた。話しかけようか悩んだが、後ろから声をかけることにする。


「未玖」

「ん? おっ、晴じゃん! ぐ~ぜん!」


 振り返った彼女はそう言って手のひらをこちらに向けたのでハイタッチした。


 何回か見たことがあるが、未玖の私服はオシャレだ。肩だしのシャツにスカートは短め。変な人に狙われないか心配な服だ。


「晴は、1人で来てるの?」

「ううん、さっきまで友達と。未玖は?」

「私も友達と。急いで帰らないといけないらしくてさっき別れたところなの。私は、今から甘いもの食べようとしてるんだけど、晴、一緒にどう?」


 甘いものと言われて、いつもなら食べたいと思うが、映画館、昼食と今日はかなり食べてお腹が空いていない。だが、店に入って食べ物ではなく飲み物は飲みたいと思った。


「一緒にいいのか?」

「もちろん。あっ、高宮くんも呼ぶ? ここの店、好きって言ってたし」

「亮も? まぁ、あいつ今日暇って言ってたし、呼んでもいいかもな」

「じゃ、連絡先知らないから呼ぶのは晴がよろしく。先入ってよっか」


 未玖は、パンケーキで有名なカフェへと入り、俺も続いて中に入る。


 後で1人来ることを伝えると店員さんは4人がけのテーブルへ案内してくれた。


 亮に連絡したが、店の名前を言うとすぐに来ると返信が返ってきた。


 亮が来るのは少し後だろうと思い、先に俺は、コーヒー、未玖は、パンケーキを注文した。


「晴がいうさっきまでいた友達って、てっきり高宮くんかと思ってたけど、違うんだね。もしかして、女の子?」

「!」


 もしかして服屋にいたところを目撃されていたのではないかと思い、わかりやすく動揺してしまった。すると、未玖は、ニヤニヤしながら聞いてきた。


「やっぱり。もしかして、瑠奈ちゃん?」

「なぜわかる」

「消去法だよ。晴と仲いい人って言ったら高宮くんと瑠奈ちゃんが1番に思い付くから」

「まぁ、未玖みたいにたくさん友達がいるわけではないからな」


 未玖がなぜ瑠奈のことを知っているのかというと、中学時代、部活動で先輩後輩関係であったからだ。俺と同じバイト先ということも知っている。


「そっか、晴は、瑠奈ちゃんみたいな子がタイプか。瑠奈ちゃん、ちょーいい子だからいいと思うよ」

「別に狙ってないから」

「ふ~ん。そだ、今夜、時間決めて電話しながら久しぶりにオンラインゲームしようよ」

「おっ、いいな。やろう」


 時間を決めてゲームの話で盛り上がっていると頼んだものが届き、その後亮がやって来た。


「デート?」

「あはは、デートじゃないよ。高宮くん、座って座って」


 未玖は、亮とはそこまで親しい仲ではないが、まるで友達のように接していた。こう誰とでも話せるところは未玖の凄いところだ。


 亮は俺の隣が空いていたのでそこに座り、パンケーキを注文していた。


「晴、見てみて新しい服。これ見たことないでしょ?」

「言われてみれば……」

「先週買った服なんだけど、こういうの好きなの。そだ、さっき私が好きなチョコ買ったんだけど、晴も高宮くんにも是非食べてほしくて」


 未玖は、持っていた袋からチョコを取り出し、俺と亮に1つずつ渡した。


(未玖がいると会話が途切れないな……)


「ありがと、未玖」

「ありがとう、望月さん」

「いえいえ、食べたら感想聞かせてね。そう言えば、高宮くんの連絡先知らないや。交換しない?」

「えっ、俺と?」

「うんっ、パンケーキ好き仲間だもん。語り合おうよ」


 未玖と亮が連絡先を交換し、そして俺を含め3人のグループも作った。


(学校ではほとんど関わらないがどういうグループなんだろう……)






         


 

 

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