魔王討伐RTA〈なんか知らんが終わってた〉

大久保 伸哉

第1話

 俺の名前は『討伐とうばつ 駿はやお』。

 トラックに轢かれた俺は、気づいたら真っ白な部屋の中で目を覚ました。

 何がなんだか分からないが、目の前で金髪の女神様が――――


 「あ〜〜〜そういうの良いから、速く決めて。」


 目の前のと名乗る女は、面倒臭そうにこちらを見てそう言う。


 「良いじゃん! もっとこう、雰囲気作ってくれよ!」

 「こっちからしたら、そんなのしても意味ないもん。……で、異世界行くの? 行かないの? どっち!」

 「あ〜もう! 行く行く! 行きます! なんだよ楽しみにしてたのに……。」


 そう言うと俺の足元に魔法陣のような物が浮かび上がる。

 面倒臭そうにふんぞり返っている女神も立ち上がり、女神にも関わらず、肩を回して準備運動の様な行動をしている。


 「チート能力とかはあるんだよな?」

 「あるわよ。まあ、そういうのはあっちに行ってからでも説明できるから、取り敢えずさっさと行きましょ。」

 「そうか。………え、お前も来んの?」


 返事を聞く前に視界は真っ白に変わる。


――――――――――


 転移した先は暗かった。

 さっきまで真っ白な部屋にいたので、そのギャップで目が慣れない。


 「何だお前!!」


 後ろの方で野太い声がする。

 その声に釣られて後ろを見ると、目の前には大柄な男が立っていた。


 その男は2メートルはゆうに超える大きさをしていて、筋肉質な体、角を生やし、おでこには第三の目がある。

 男はこちらを睨みつけ、ズンズンとこちらに詰め寄ってくる。


 「い、いえ、その、違うんです………。」


 その男の迫力は凄まじく、生物として圧倒的に違う事が瞬時に悟る。

 殺気というものはこういうの物なのかと思えるほどの迫力。

 ただ佇んでいるだけにも関わらず、俺の体が震え、本能でヤバいと警告をしている。


 「お前人族か。………ははっ、なるほどな。遠路遥々えんろはるばるこの俺の寝室まで暗殺しに来たのか! だが残念だったな、この俺、『魔王』シュンサーツ様には―――――」


 「女神パーーーーーンチ!!!!!!」


 「―――ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


 魔王シュンサーツの口上を聞き終えること無く、女神の拳が顔面を直撃して塵となって消えた。

 名は体を表すというが、ここまで綺麗にそうなるのを初めてみた。


 「おいおいおい! 今、魔王って言ってたじゃん! 転移先のラスボスじゃねぇのか!? 何してくれてんだ!」

 「何してくれてんだって何よ。あなたに倒して貰うなんて言ってないでしょ。」

 「それはそうだが、何と言うか、もっとこうさぁ!!」


 てか、なんでコイツがいるんだよ。

 女神が戦場に出るなんて反則だろ。


 「そうですよ。何をしてるんですか。」


 いつの間にか背後に、もう一人の女神らしき人物が立っていた。

 彼女は黒髪で、整った顔は呆れた顔をしてこちらを見ている。


 「下界に降りて、ましてや魔王を討伐してしまうなんて言語道断です。絶対神ぜったいしん様がお許しされませんよ。」

 「ルールはちゃんと守っているわ。そこの男のステータスを見てみなさい!」

 「………チートスキル『女神召喚』。」

 「そういう事。ちゃんとチートスキルを渡して、そのスキルで私はここに居て、それで魔王を討伐しているという事は、何も問題ではない。」


 金髪女神は女神らしくないゲスい顔をしている。


 「………ん? ちょっと待ってください。討伐とうばつ 駿はやおさんのスキル使用を確認できないんですが――――」

 「―――えいっ。」


 さっきの魔王の時と同じく、またもや言い切る前に金髪女神が行動を起こす。

 今度はフラフープの様な物の輪っかの中に黒髪女神の体を通す。

 すると、さっきまで黒髪女神が居た所には誰も居なくなり、シンッと静まり返る。


 「それじゃあ、次の異世界に行きましょうか! ガンガン女神ポイント稼ぐわよぉ!」


――――――――――


 その後、やっぱり反則だったそうで、俺と金髪女神は異世界の中でもハードな世界に降ろされた。


 「なんで俺もなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


 「うえぇぇぇぇん、天界に帰りたぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!」


 ―おしまい―


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魔王討伐RTA〈なんか知らんが終わってた〉 大久保 伸哉 @tati001

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