往復切符の二重人格

天川裕司

往復切符の二重人格

タイトル:(仮)往復切符の二重人格


▼登場人物

●軒原勇人(のきはらゆうと):男性。20歳。普通の大学生。

●真利彩子(しんりあやこ):女性。20歳。美形。勇人と同じ大学に通う大学生。生まれ付きの殺人鬼。彩子の心理から生霊が飛び出し、もう1人の人格を形成している(実在の人物のように存在している)。殺害動機は愉快犯(人を殺さずにはいられない性の持ち主)。

●彩子の生霊:中年熟女の容姿。名前もはっきりとした年齢も不詳。彩子の手を離れて殺人を犯す。この生霊と彩子の両方を同時に殺さなければ、2人とも決して死なない(片方が片方に生命エネルギーを与えて生き返らせる)。

●馬男木良太(まおきりょうた):男性。20歳。勇人と同じ大学に通う。彩子に殺害される。勇人の親友。

●海野由愛(うみのゆめ):女性。20歳。勇人と同じ大学に通う。彩子の友達(最近知り合った感じ)。彩子に殺される。勇人の彼女。

●春子(はるこ):女性。30歳。勇人通う大学で心理学を教えている(勇人がその科目を履修している)。実は勇人の助けを求める心の奥から生れた生霊(実在しない:短期間だけ実在の設定)。

●警察:一般的な警察のイメージで。

●工員:男性。50代。大学で働いている工員。


▼場所設定

●同慶(どうけい)大学:一流私学。心理学研究で有名。死亡事故が多発。

●カフェデリ:大学最寄りの喫茶店。学生に人気のお洒落な喫茶店。


NAは軒原勇人でよろしくお願いいたします。



メインシナリオ~

(メインシナリオのみ=3995字)


ト書き〈同慶大学〉


NA)

俺の名は軒原勇人(20歳)。

ここ同慶大学の学生だ。

この大学は心理学研究で有名だった。

心理学部を受験する学生は結構多い。


ト書き〈心理学のクラス〉


春子)「それでは来週までに『二重人格形成』についてのレポートを提出して下さい。参考文献は各自で用意する事。じゃあ今日はここまでにします」


勇人)「まぁたレポートかぁ~(汗)ったく、レポート課題多いよなぁ」


由愛)「ねぇ勇人、次、授業あるの?」


勇人)「ん?いや」


由愛)「よかった♪じゃあさ、一緒にカフェデリ行かない?」


勇人)「お♪いいな」


ト書き〈カフェデリで由愛と〉


NA)

こいつは海野由愛(20歳)。

入学してすぐ知り合った。

俺達はいま付き合っている。


由愛)「ねぇね、卒業までにさ、2人でどっか旅行に行かない?」


勇人)「2人きりって、そんなの親が許さねぇだろ?」


由愛)「大丈夫だよそんなの!普通に皆もやってるよ」


NA)

前からずっと旅行の計画を立ててはいたがずっと先延ばし。

確かに俺は意気地が無い。

由愛にそう言われ、卒業までには「行ってもいいかなぁ」なんて思った。


勇人)「悪ぃ。そーだな、どっか良いトコ探しとくか」


由愛)「うん!」


ト書き〈彩子が来店〉


由愛)「あ」


勇人)「ん?どした」


由愛)「おーい、彩子ぉー♪こっちこっち」


勇人)「彩子?」


NA)

真利彩子(20歳)。

俺はこの時全くの初対面。

どうやら由愛の友達らしい。


由愛)「あ、勇人、初めてだったよね?」


NA)

お互いに自己紹介した。


彩子)「よろしくね♪」


勇人)「あ、うん!よろしく…」


由愛)「こぉら~、なーに見惚れてんのよ!」


勇人)「い…いや見惚れてねーだろ!」


ト書き〈翌週、心理学の授業にて〉


春子)「はーい。皆さんレポート書けましたかー?今日、提出ですよー」


NA)

いつものように授業を受けていた時。

急に外がガヤガヤし始めた。

そして…


勇人)「え?警察…?」


NA)

教室に警官が数人入って来て、先生に何か言っていた。


ト書き〈警官退室、教室が騒ぎ出す〉


勇人)「何だろ…」


春子)「はーい静かにー。今日はレポート提出だけで授業は休講にします」


NA)

いきなりの休講。

周りの学生は俄かに喜んだ。

俺も一緒に教室を出ようとした時…


春子)「あ、軒原君、ちょっと残っててくれる?」


勇人)「あ、はい…」


NA)

急に先生に呼び止められた。


ト書き〈衝撃の事実〉


NA)

学生が皆、退室した頃。

黒板を消し終えた先生は落ち着いて俺のほうを見た。


春子)「あのね、軒原君。落ち着いて聞いてね。確かあなた、このクラスを受講していた海野由愛さんと仲が良かったわよね?その海野さんの事なのよ」


NA)

いきなり由愛の名前が出て来てちょっと驚いた。


勇人)「あ、はい。由愛がどうかしたんですか?」


春子)「実はね、彼女…」


NA)

信じられない事を言って来た。


勇人)「えぇ?!そ…そんな、嘘だ!」


NA)

由愛がついさっき死んだと言う。

死因は飛び降り。

キャンパスで1番高い2号館から飛び降りた。


勇人)「絶対にそんなこと有り得ない!」


NA)

俺はすぐ教室を飛び出した。

先生は前もって俺のショックを和らげようとしてくれたのか。

確かに俺と由愛は先生とも仲が良かった。

だから余計に信じられない!

その先生の口からそんな事を聞くなんて!


ト書き〈2号館前〉


勇人)「ハァハァ…!ゆ…由愛ぇえ!」


NA)

2号館前には既に人だかりが出来ていた。

その前の煉瓦フロアには青いビニールシートが敷かれている。

由愛はそのシートに覆われていた。


ト書き〈死亡事故多発〉


NA)

それから信じられない事が立て続けに起きた。

大学構内で死亡事故が多発!


警察)「はい下がって下がって!」


NA)

もう大学内には警察が常駐の形で待機している。

「犯人が大学内にいる」「大学関係者が真犯人?」

こんな言葉が校内を飛び交った。

俺はそんな喧騒とは関係なく、由愛を失くした事のショックに暮れていた。


勇人)「由愛…なんで…なんであんな形で…」


NA)

由愛は間違っても自殺なんかしない。

旅行の計画も立てていたんだ。

俺がよく知っている。

しかし警察は、他殺と自殺の両方の線で捜査していた。


ト書き〈カフェデリ〉


良太)「なぁ勇人、気持ちは分かるけど、元気出してくれよ」


勇人)「簡単に言うなよ!」


良太)「…」


NA)

こいつは馬男木良太(20歳)。

俺の親友。

由愛が死んでからずっと俺を励ましてくれた。

有難かったが、元気なんか出る筈も無い。

しかしこの日が良太と会った最期になった。


ト書き〈良太が飛び降り自殺〉


勇人)「な…なんでだよ…。なんで次々にこんな…」


NA)

数日後。

良太が3号館から飛び降りて死亡した。

3号館は2号館のすぐ隣り。

彼女と親友を一気に失った俺。

まるで放心状態。

訳が解らなかった。


勇人)「あいつは…!あいつは絶対自殺なんかする奴じゃありませんよ!」


警察)「わかってる、わかってるから」


NA)

警察の事情聴取に呼ばれた時。

俺は思いきり警察に突っ掛かりそう言った。

でも警察は親身に聞かない。

通り一遍の捜査をしていった。


ト書き〈カフェデリ〉


NA)

それから数週間後。

俺は何となくカフェデリに来た。

由愛と良太、2人と最期に会った場所。


勇人)「由愛…。けっきょく旅行、行けなかったな…」


NA)

俯きながら思い出に浸っていた時。

あの真利彩子がやって来た。


彩子)「あ、軒原君?」


勇人)「…え?あ、真利さん」


NA)

彼女は俺と相席し、いろいろ話して来た。


彩子)「由愛ちゃん、あんな形で亡くなっちゃったけど、何か悩みでもあったのかしら。それに馬男木さんも。立て続けにあんな形で亡くなるなんて…」


勇人)「…」


NA)

俺は由愛の事を思い出す度、何も言えなくなってしまう。

でもこの時、少し妙に思った。


勇人)「…真利さん、何で馬男木の事知ってるの?」


彩子)「え?あ、いや、前に由愛ちゃんから聞いた事があったから」


NA)

確かに由愛と良太は友達だった。

でもそんなに親しくない。

付き合ってた時でも、由愛の口から良太の事が出たのはほんの数回だ。


勇人)「そう…」(疑うように)


彩子)「ええそうよ(汗)」


NA)

明らかに体裁を繕っている。


勇人)「俺もう帰るわ」


彩子)「え?」


NA)

すぐ立ち去ろうとした。

あろうことか、俺は「真利彩子が真犯人だ」と思い始めていた。

別に根拠は無い。

強いて言えば直感だ。

大学内で発生している一連の死亡事故。

その事故がもし事件と置き換えられたら…。

いま目の前に犯人がいる事になる。

もう5人以上の学生が死んでいる。

人気の私学も一気に地に落ちた。


ト書き〈心理学の教室〉


NA)

それから更に数日後。

他の学生の為、授業はそれでも普通に開講。

心理学の授業を受けていた時、俺はまた先生に呼ばれた。


春子)「この前のレポート、よく書けてたわね」


勇人)「どうも」


春子)「心理学って不思議なものね。やってもやっても奥行がある。あなたも知ってるように未知の部分がまだまだ多いのよ。最近の研究で特に注目されてるものなんだけど、二重人格が余りに強烈過ぎると、その人格が他の人間を創り出してしまって、まるで2人が実在するような事があるんですって」


勇人)「…確か、解離性同一性障害から多重人格を形成して、それから更に延長されると交代人格を引き起こし、人格の統合が不可能になってしまう…」


勇人)「知ってます。1人の内に何人もの人格が宿され、その人間が全く別人の記憶や技術を会得するってアレでしょう?漫画でもよく扱ってますよね」


春子)「ええ。でもそれは従来の心理学。いま注目されているのは解離性同一性障害が文字通り人間を引き離し、『2人の人間』を作ってしまう現象なのよ」


勇人)「どう言う事ですか?」


春子)「つまり1人の人間がもう1人の人間を生み出すという事」


勇人)「ま、まさか…」


春子)「勇人君。今あなたの身近にそういう人がいるわ。気を付けてね」


勇人)「は?」


NA)

訳が解らなかった。

「俺の身近にそういう人がいる?」

興味はあるが、非現実的。

俺はそんな事より、真利彩子の事が気になっていた。


ト書き〈犯人逮捕〉


NA)

その翌日。

いきなり犯人が捕まった。


彩子の生霊)「離せぇええ!」


警察)「暴れるなこいつ!」


NA)

なんと学内で、おばさんが警察に取り押さえられている。

そのおばさんの足元で、1人の女学生が蹲って泣いていた。

どうやら襲われた直後らしい。

現行犯逮捕されたそのおばさんは、力の限り、抵抗していた。

ふとその時、俺の横に彩子が来た。


彩子)「あの人が犯人だったのね…」


勇人)「あ、君は…」


NA)

「真利彩子は犯人じゃなかった」

大勢の学生の目の前で連行されて行く犯人のおばさん。

その直後…!


工員)「危なぁい!」


勇人・彩子)「え?」


彩子)「ぎゃふ!」


NA)

俺と彩子はちょうど2号館前に立っていた。

2号館は工事中。

鉄筋の柱を工員が誤って落としたらしい。

鉄筋は彩子を直撃。


彩子の生霊)「ぎゃああぁ!」


勇人)「な…なんだ?!」


NA)

連行される途中のおばさんが何故か断末魔の声を挙げた。

見ると交通事故。

警察の手を振り切り、おばさんは車道へ逃げた。

その時、トラックに撥ねられたらしい。

偶然に偶然が重なった事故。

彩子はその場で即死した。


ト書き〈一連を遠くから眺めながら〉


春子)「彩子とあの中年熟女、2人は同一人物。彩子は生まれ付きの殺人鬼。その心理からもう1人の人格を形成し、それが生霊として人に生長していた」


春子)「どちらか一方を殺しても、片方が生き残ればもう片方に生命エネルギーを与え、生き返らせる。つまり2人同時に殺さなければ決して死なない」


春子)「私は、勇人の助けを求める心理から生れた生霊。勇人に危険を報せる為に現れた。彩子は気まぐれに勇人に近付き、取り敢えず邪魔者の由愛を殺したけれど、その後はきっと生来の殺人気質が甦り、勇人も殺害していた」


春子)「偶然の事故が重なり彩子もその生霊も死んだけど、もしあの偶然が起きていなかったら…。魔物のような彩子はきっと生き永らえたでしょう…」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=UuoFGQDPxzc&t=83s

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

往復切符の二重人格 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ