Part38:「パワーアーマーで押せ!」

 敵が置き残して行ったPA、これを拝借しない手は無かった。

 星宇宙やモカが援護する中、ファースは一度遮蔽を解いて後ろへと下がる。

 背後後方からはクラウレーも同様の動きで移動し。二人はPAステーションに駆け込んで、PAを拝借するための手順に入った。


 整備ステーションに入り稼働に向けての準備状態にあったPAは、セキュリティロックの類も解除され奪取は容易であった。

 すでに新たな操縦者を待ち望むように、PAの背中側の装甲は大きく解放されていた。

 ファースとクラウレーはそれぞれの頂くPAに片手片足を突きこみ、PAの動力を起動。同時に纏うスカウト・スーツの尻腰部から伸びる、尻尾状の接続コネクタをPA側に繋ぐ。

 ToBの使用するPAとPartyのPAは形式・新旧が異なるが、元は荒廃前の同一の軍隊で運用されていたもの。そこには互換性があり、PAはあっさりと起動の条件を満たした。

 そしてファースたちはそれぞれのPAに乗り込み着込み、背面装甲を閉鎖。

 コンディションに異常が無い事を確認し、次にはPAステーションより分離。


 可憐ながらも物々しく頼もしい、PAメカ娘となったファースとクラウレーが。それぞれ一歩を踏み出し、敵へと相対して進行を始めた。


「わぉ」

「ハハッ、頼もしいッ」


 装着を完了して、現れ前に押し進め始めたPAメカ娘姿の二人。

 自身の傍を通り抜けるその姿に、星宇宙は戦闘を継続しながらも感嘆の声を零し。背後からはオックスの囃し立てる声が飛び来る。


「押し進めるぞ、随伴援護を頼む」

「了解」


 二体の内のファースからは、同行しての援護を要請する旨が寄越され。そしてファースはそこからさらに踏み込み進め始める。

 星宇宙とモカも遮蔽物からカバーを解いて、それに随伴しての援護進行を開始した。



 己たちの物であったはずのPAの鹵獲を看過してしまい。それが敵として回ってしまったその場のParty部隊は、一層の困惑混乱に陥った。

 すでにファースたちは押し上げを始めており、他の置き残されたPAを回収して応戦することも叶わず。

 向こう背後で、美少女姿の指揮官クラスが慌てて応援を要請してる姿も見えるが、もう遅かった。


「――ッぅ、激しい歓迎だッ」


 PAを纏いメカ娘となったファースは、先陣を切ってPA整備デッキを押し上げ進む。

 Party側の重機関銃が銃火の猛攻を寄越し、ファースのPAの装甲を叩き鳴らして揺らすが。その装甲の前に実害は皆無であった。


「おォッ」


 そしてファースは彼女(彼)のPAにデフォルトで装備されていた軽機関銃を構え、敵に向けて牽制のためにばら撒きながら。

 銃火が飛び交う中を、果敢に猛々しく押し進め続ける。


「左サイドから1ッ――排除ッ」

「右、ワンダウンっ!」


 そして押し進めるファースの背後真後ろには、ファースのPA装甲巨体に遮蔽を受ける形で、星宇宙とモカが直掩随伴していた。その様相はまさに戦車や装甲車に随伴する歩兵のようだ。

 そして遮蔽の恩恵を受ける代わりに、二人はファースの両サイド、死角をカバーし援護。

 物陰、遮蔽物から側面四角を狙い回り込み、襲い掛かって来るParty兵たちを、しかし隙をみせる事無く迎え撃ち退けて行く。


「っォ……なんの!」

「右、ダウンだッ!」

「左、1排除!」


 さらにファースと間隔開けて、斜め後方に同じくPAメカ娘形態のクラウレーが互いをフォローする形で押し進め続く。

 クラウレーには今と同様の形態で、オックスとスノーマンがカバーを受けながら随伴。隙を狙い接近を試みるParty兵たちを迎え撃ち、激しい戦いの様子を見せていた。


「ダウンッ、ダウンッ!」

「タンゴダウンっ!」


 そしてサイドの隙を狙ってくる敵兵を、援護の星宇宙等各々が退け。

 正面より注がれ来る無数の激しい銃火を、ファースとクラウレーがPAの装甲をもって防ぎ跳ね除けながら。

 チームはPA整備デッキを推し進め抜け、ついに反対向こうのParty兵たちが配置する地点へと到達して踏み込んだ。


「押し込むぞォ!」


 布陣する敵との位置があと少しまで迫った所で、ファースは床を踏み切って重々しくも激しい進撃を響かせて、敵中へ突入した。

 雑多に応急的に物を積んで作った遮蔽陣地を、体当たりで崩し開き。

 その向こうに据えられていた重機関銃を、PAの強靭な脚で踏みつぶして破壊無力化。

 そして同時にPA装備の軽機関銃を、手当たり次第にばら撒き始めた。


「う、うわっ…ぐぁッ!?」

「わぁぁっ!?」


 止められぬPAのとうとうの突入襲撃、そして襲う火力に。

 崩れかけていたParty部隊はいよいよ瓦解、パニックに陥り這い退き逃げ惑い始めた。

 しかしそんなParty兵たちは、ファースの薙ぎ撃つ軽機関銃の掃射によって儚く屠られて行く。


「おのれ――がぁっ!?」


 わずかに狼狽しつつも、応戦しようと武器を構え迎えようとするParty兵もいたが。

 その彼女(彼)たちも、ファースに随伴して合わせて突入した星宇宙やモカのすかさずの射撃によって、あっけなく撃ち抜かれ無力化された。


 ファースを中心として、星宇宙とモカが突入。

 続けてクラウレーを中心として、オックスとスノーマンが突入して別方向をカバー。

 敵の布陣に突入したこちらチームの、その一暴れによってこの場の敵Party部隊はほぼ壊滅。


「左方クリアッ」

「同じくっ」


「右方、お掃除完了ォ」

「排除、クリア確認ッ」


 展開した星宇宙等各々からクリアの報告が上がり。このPA整備デッキは無力化制圧が完了された。


「――うまくいった」

「ふぅっ――PAさまさまだね」


 デッキを推し進めた果てに、その場に鎮座し構えて無力化を確認したファースは。

 PA奪取からここまでを有利に進められたことを歓迎しつつも。しかしそれに驕り油断する様子は無く、すでに次なる戦いに意識を向けている様子で零す。

 それにニヒル気味に返す星宇宙も、そこに油断楽観は決して無かった。


「でェ、次は?」


 そしてオックスから、警戒しつつも次の行動を尋ねる声が飛ぶ。


「この向こうは搭載機のハンガーだ。これを突破し、計画通り艦の中枢へ踏み込む――行くぞ」


 それにファースは続く行動を示し。

 チームは一呼吸だけを整えた後に、さらに進めるべく行動を再開した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る