Part37:「ラッシュ&ラッシュ」

 チームは搭載艇区画より艦内へと侵入。

 艦内を通る通路を駆け抜け、目標たる艦の主要区画を目指して進行。

 時折散発的に遭遇する敵Party兵を相手取り排除しながら、押し進んでいく。


「隔壁だッ」


 先鋒を担当して、レーザー・アサルトを構え進んでいたファースが、発し示す。

 進める艦内通路の前方には、閉ざされた隔壁が立ちはだかった。


「破るぞ」

「了解っ」


 しかしファースは続けて促し。そして星宇宙等各員は返しながら、迷う事無く流れるように次の動きに移る。

 星宇宙とモカ、ファースの三名が隔壁の両側に取り付きスタンバイ。

 クラウレーとスノーマンが後方で配置し警戒に着く。

 そして工兵の役割を担うオックスは、隔壁を破るための爆薬装備を取り出し準備。小さくコンパクトだがしかし確かな破壊力を有するそれを、隔壁の四隅に手早く張り付け取り付けて行く。


「完了、さがれよッ」


 爆薬の設置を完了したオックスは、各々へ警告を促しながら自分もオックスの横後ろへと退避する。


「いいか?」

「いつでも」


 タイミングの確認を尋ねたファースに、星宇宙は準備完了している旨を返す。


「よし、オックスやれッ」

「了ッ」


 それを受け、ファースは背後のオックスに指示。それを受けたオックスは返答と同時に、手元の爆薬の起爆装置を作動。

 ――瞬間。爆薬が起爆して、厚い隔壁がしかしみごとに吹き飛んだ。


「GOッ」


 隔壁扉が向こうに吹き飛び、隔壁が開口。

 それと同じタイミングで、いやそれすら焦れったく思う程の早さ動きで。星宇宙は先陣を切って、SCAR-Hを突き出し構えて向こうへと踏み込んだ。


「――」


 踏み込んだと同時に隔壁の向こうに確認できたのは、何らかの機械室と思しき一室空間。

 そして、各所に見えたのは数名のParty兵だ。

 いずれも最早お約束のように、MODの効果影響でプロテクタスーツ装備の美少女や美女姿。

 それの彼女たちは、隔壁の爆破に影響を受けて、身を打ちあるいは庇う姿を見せ。そうでなくとも驚き混乱する色を見せている。


 それらの光景を一瞬のうちに流して見たと同時に、星宇宙は構えるSCAR-Hの引き金を引いた。

 この戦いに備えて、ウェポン・クラフトによって改造を施しておいたSCAR-H。その機構によって打ち出された7.62mm弾は、その威力で向こうにいたParty兵の美少女を、纏うプロテクタスーツを貫通して屠り仕留めた。

 その装備する火器を構え、応戦の姿を見せようとしていたそのParty兵は。しかしそれを成す前にもんどり打って床に放られ崩れ、沈黙した。


 ワンダウン。

 そこからさらに、星宇宙等のチームの側の動きが圧倒した。


 星宇宙に続き、ほとんど同時に踏み込んだモカが。彼女の火器であるM27 IARを用いて撃ち、また別方向に位置していたParty兵を続き撃ち仕留める。

 さらに一拍置いて、ファースも機械室空間に突入。ファースにあっては背後から空間を広めに見て、星宇宙とモカの背後援護に着く。


(次ッ)


 その気配を感じ、ファースに背後を巻かせながら。星宇宙とモカはさらに数歩押し進める。

 そして二人はそれぞれ各方に火器、銃口を向けて。その方向に敵兵を見つけ、瞬間には撃ち仕留め排除。

 機械室内で、何度かの銃声が響き木霊する。


「――クリアッ」

「クリアだよっ!」


 その機械室空間の制圧無力化に掛かったのは、ものの数秒であった。

 自分等以外の気配の無くなった事を感じ、確認の視線を走らせ。敵の姿が無くなった事を確信すると、星宇宙やモカは立て続けてクリアを知らせる声を張り上げる。


「こちらもクリア」

「あぁ、クリアだよッ」


 さらに背後からはファースに。殿でサブマシンガンを構え突入したオックスからも、空間内のクリアを知らせる声が張り上げられ届いた。


「ふぁッ」


 クリアリングの一行動が完了した事に。星宇宙は警戒の姿勢を保ちつつも、一息を思わず零す。


「ヨォ、序盤戦ですでにお疲れかァ?」


 そこへ、オックスから飛び来たのは。その可憐な姿と声に似合わぬ、皮肉気に揶揄う声。


「はんっ、ただの適度なクールタイムさッ」


 それにニヒルに返す星宇宙。

 ダーティーさの含まれる星宇宙の憧れのやり取りだが、今のは意識せずに自然に出たものであった。


「悪ふざけの余裕はないぞ。ベーシック・オックス、ここにも爆薬を仕掛けておくぞ」

「了解」


 そこへファースの忠告が、合わせての指示の言葉が飛び。オックスはそれに答えて指示された設置作業に取り掛かっていく。


「ここから上階層に上がれるな」

「位置関係的に上は、格納庫デッキだろうな」


 ファースはさらに、機械室空間の一角に設けられる昇降タラップを見つけて、推察しつつ促す言葉を発し。

 星宇宙は過去のゲームプレイ経験を頼りに、艦内構造を思い出しつつ。この先の構造を不自然にならないよう推察の言葉で伝え知らせる。


「よし、続ける。隊形分担はこのまま、私たち三名で先に行く。爆薬設置が終わったら、オックスにクラウレーたちも追いついて来てくれ」

「了」

「了解だ」


 そしてファースは行動の継続、それぞれへの行動指針を促す。

 そして各々から了解の返信を聞くと、時間がもったいないと言うように行動をまた再開した。



 星宇宙、モカ、ファースの三名は先行して昇降タラップを上がり、艦内の上階層へと出た。

 出た先は、艦内各エリアを接続するための接続通路。

 そしてしかしそのすぐ向こうには、両開きの大きな隔壁が、しかし開け放たれて存在。その向こうに広い空間が見える。

 そこは、Party部隊の用いるパワーアーマーの格納整備デッキであった。

 いくつもの整備用ステーションが並び設けられ、それぞれにパワーアーマーが置かれている。


 星宇宙等はそれを見止めつつ、まずは隔壁の両側にまた取り付きカバー。身を隠し、警戒しつつその向こうのパワーアーマー整備デッキを観察する。

 デッキ内では多くのParty兵が慌て急く様子で動いている。そこには傍から見える限りでも、大分の動揺困惑が見えた。


 Partyの本拠地たるこの巨大航空戦艦「エクログロフス」はその外見の通り、破格なまでの難攻の要塞だ。

 しかし、そんな強固な拠点に籠っていたParty兵たちには、自然と驕りと油断が生まれていたのだ。

 この恐怖の要塞に挑んでくる者など居ない、襲撃などまずあるはずが無いという慢心。

 しかしそのまさかが現実となってしまった現在。Party兵たちは大いに浮足立ち、困惑狼狽に陥っていたのであった。


(大分、狼狽えているな。これがPartyの弱点といった所か)

(弱いもの虐めしかしてこなかった連中の、実態ってカンジか……っ)


 そんなParty兵たちの様子を向こうのデッキに見つつ。ファースに星宇宙はそれぞれ、内心でそれに容赦の無い評を描きつつ、視線を交わしそれぞれの意思を漠然とだが通わせる。


 かといって遠慮容赦など必要は無く、する余地もない。

 星宇宙とモカ、ファースは視線とハンドサインでこれよりの動きをまた調整。

 そして次にはファースはスカウト・スーツに下げ装備していたグレネードを取り。星宇宙もモカからグレネードを受け取り手元に備える。


(やれっ)


 そしてファースの視線での合図と共に。ファースは、続けて星宇宙は立て続けにグレネードの隔壁向こうのデッキに思いっきり放り込み。

 ――直後には炸裂音が響き届いた。


「突入ッ」

「GOッ」


 それを聞いた瞬間。ファースと星宇宙はほぼ同時に発し上げると同時に、隔壁の向こうへ踏み込み突入した。


 踏み込み見えるは、グレネードの炸裂に巻き込まれ吹っ飛び、打ち崩れる何名かのParty

兵。

 そして炸裂こそ逃れたが、驚愕して叫び声を上げるParty兵。

 星宇宙等は、そんなParty兵たちに向けて容赦の無い銃撃を向け注ぎ始めた。


「ぎゃぁッ!?」

「しゅ、襲げ……ぐぁっ!?」


 狼狽していたParty兵たちから上がり届く悲鳴。

 しかし構わず、星宇宙等は引き金を引いて向こうへ銃撃を撃ち注ぎながら。同時進行で動き位置を変えてカバー。

 近場の機器装置や、PAステーションに遮蔽する。


「ワンダウンッ」

「左1っ、ダウンだよっ!」

「右に2、抑えるッ」


 遮蔽から戦闘を継続。

 星宇宙等は敵の位置情報を伝え合い、互いに連携を取りながら。火力を注ぎ、敵の一体一体確実に敵を無力化していく。

 浮足立ち、態勢構築に後れを取るParty兵達を討つ事は容易であった。


「――ヨォッ」

「すまない、待たせたッ」

「お待たせ」


 そこへ、背後よりオックス、クラウレー、スノーマンの三人が追い付いていた。

 星宇宙等三人の背後後方に散会から配置カバーし、戦闘に加わる。


「構わない、さらに前に進めるぞッ」

「俺たちで少し押し上げる、援護お願いッ」


 それにファースが一言返して告げ。さらに続けて星宇宙が、押し上げる旨を伝えて援護を要請する。


「任せなァ」


 それに返るはオックスからの返答。それを聞くが早いか、星宇宙とモカ、ファースは遮蔽を解いて、火器を撃ち牽制しながらさらに踏み出した。

 敵との距離をさらに少し詰め、牽制射撃をばらまきながら、前方次に遮蔽物にスライディングで飛び込む星宇宙等。


「――っとぁ!?」


 遮蔽物に飛び込んだ瞬間、星宇宙等の真上を何かが掠め飛んだ。明確な殺気の含まれたそれは、敵Party部隊からの射撃攻撃である事はすぐに察しがついた。


「ッぅ」

「ひえっ」


 僅差で逃れたそれに星宇宙とモカは冷や汗を掻きつつ。飛び込んだ遮蔽物から視線をわずかに覗かせ、前方向こうを確認する。

 PAデッキ空間の向こう奥側、そこには据え置かれ配置した重機関銃が鎮座し。Party兵たちの手によって我武者羅にばら撒かれる動き光景があった。

 浮足立つParty兵たちもしかし流石にいつまでのやられっぱなしな訳は無く。ふんだんな装備の中から引っ張り出して来たそれで、応戦行動を始めたようだ。


「ッ、銃火器を引っ張り出して来たッ」

「あぁ、忌々しいッ」


 星宇宙は歓迎しがたいそれに一言ぼやき。背後からはオックスの明確な悪態が聞こえてくる。


「そんなら――ファースさん、そいつを拝借しようッ」


 しかし次には、星宇宙は遮蔽の姿を取り。手早くの再装填から装備火器を突き出して牽制射撃を行いつつも、ファースに向けてそんな促す言葉を飛ばした。


「!――成程、これを有効利用しない手は無いなっ」


 星宇宙の促ししめすものに、ファースはすぐに気づいて、不敵な笑みを合わせて言葉を返す。

 星宇宙が示したのは、自分等の展開する一帯の背後の一角。

 そこに見えるは、星宇宙等による唐突な襲撃により。Party兵たちが撤収も爆破処理もできずに残して行った、物々しい代物。


 ――PAステーションに残され置かれた、二機のPartyのパワーアーマーであった。

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