余剰
熒惑星
余剰
「こうやって手をつなぐのよ」
そう言ったあなたの手は柔らかくありました。
いたずらに取られた私の手はどれほど冷たかったことでしょう。それでもあなたは肩ひとつ揺らさないものですから、私は手をそっと握り返しました。
あなたは無垢でいたかったのでしょうね。それだからこんなことをするのでしょう。でも、あなたが無垢でいられないことを、私は知ってしまいました。
「ねぇ、さようならと言わなくてはいけないのでしょう」
あの柔らかさを忘れられない私は、余剰で溢れているのかもしれません。
――花屋で一つ、百合を買いました。
けれど、余剰というのは空虚で私には触れられませんでした。ですから、私は本に尋ねました。
――私たちが手を取りあった帰り道を辿ります。
必要な分を除いた余り。必要以上の余分。残り。残余。剰余。そう辞書で引いた言葉に、言葉では表せない、という意味を知りました。
――あの頃のあなたに私は百合を一輪添えました。
貴方に抱いたこの感情を「余剰」と呼ぶのなら、私は余剰を愛しています。
余剰 熒惑星 @Akanekazura
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