アイドルは教頭先生

 ――勇者ゆうしゃは、不老ふろう不死ふし獲得かくとくしました。



 正確せいかくには、勇者『本生もとじょう優人ゆうと(18さい)』のびと七守しちがみ丁子ちょうこ(29才)】がレベルアップして、パッシブ能力のうりょく『不老不死(自己じこ回春かいしゅん)』を獲得したため‥‥それを、勇者が、スキルポイントでまなんだのです。


 何故なぜなら、勇者は、自分じぶんの『ハーレム女性じょせい』の能力を、スキルポイントで獲得できるからです。


 そして、パッシブ能力『不老不死(自己回春)』とは、永久えいきゅうてきに『わかさ(18才の状態じょうたい)』を維持いじするスキルです。しかも、この能力は、ケガとどく病気びょうきのダメージを半減はんげんします。


 さらには、精力せいりょく『スタミナ回復かいふく速度そくど』を、倍増ばいぞうさせます。また、精力の増進ぞうしんにより、色気いろけ増幅ぞうふくします。


 それによって、七守さんの肉体にくたいが、伝説でんせつきゅうグラビア・アイドルにわりました。もはや、彼女かのじょは、以前いぜんからの『さっぱりとした性格せいかく』にくわえて、色気いろけ豊潤ほうじゅんです。

 もっとも、七守さんは、やることすこと、干物ひものおんなですが‥‥



 それと‥‥何故だか、優人がかよ学校がっこう都立とりつ八幡はちまん高校こうこう』の独身どくしんアラフォー教頭きょうとう河合かわい亜美あみ』までもがわかがえります。


 いまや、彼女の外見がいけんは、神話しんわ級アイドルです。しかも、歌唱かしょうりょくが、伝説級なのです。ただし、体型たいけいは、一般いっぱんグラマラスですが‥‥

 じつは、教頭『亜美ちゃん』も、優人の恋人こいびと(ハーレム女性)です。ちなみに、二人ふたりなれめは、優人による亜美ちゃんの処女しょじょ喪失そうしつ先月せんげつのこと)でした。


 おかげで、亜美ちゃんは、アイドル教頭としました。

 ただ、普段ふだんの亜美ちゃんは、魔法まほうアイテム『伊達だて眼鏡めがね』を愛用あいようしています。



聖暦せいれき2022ねんがつにちもく友引ともびき)都立八幡高校のひるやすみ――


 優人が、学校の中庭なかにわあるいていると、少女しょうじょ『ドエス眼鏡さま』が、優人のはばみます。ちなみに、ドS眼鏡さまとは、3年4くみ委員いいんちょう谷間たにま芳果よしか』のことで、彼女は成績せいせき学年がくねんトップ』常連じょうれんなのです。


 ドS眼鏡さまが、くちびるひらきます。

「どうして、今回こんかいは、あなたごときが、学年トップなわけ!

 どういう、カンニングをしたのかしら?」

「今回は、問題もんだい簡単かんたんだったから‥‥うんかな?」

 優人は、疑問ぎもんかえしました。


 ドS眼鏡さまは、キレています。

「簡単ですって‥‥あなた、邪魔じゃまよ!」

 ドS眼鏡さまの周囲しゅういに、邪悪じゃあくかげのぼり、13びきもの悪魔デビル出現しゅつげんしました。



 優人は、インベントリから、長剣ちょうけんして、立ちまわります。

 戦況せんきょうは、圧倒あっとうてきに‥‥優人が優利ゆうりです。優人のけんさばきは、まるで、時代じだいげき主役しゅやくのようにあざやかでした。悪魔あくまが、次々つぎつぎと、やぶられて行きます。


 やがて、悪魔の残数ざんすうが、5ひきにまでったとき‥‥すべての悪魔を、正面しょうめんえながら、優人がさけびます。

流星りゅうせいざん!」

 叫びとともに、長剣からのひかり波動はどうが、全ての悪魔を撃破げきはしました。


 ところが‥‥おなじタイミングで、ドS眼鏡さまから邪悪な影が立ち昇り、彼女は悪鬼あっき『カブトムシ魔人フィーンド』に変身へんしんします。

 さらには、瞬時しゅんじにして‥‥カブトムシ魔人まじんが、優人の背後はいごに回りんだので、優人はきざまに、魔人の胴体どうたいはらいました。


 しかし、優人の長剣が、おとを立ててこぼれしました。カブトムシ魔人の装甲そうこうのような外皮がいひに、優人の斬撃ざんげきは‥‥無効むこうでした。



 けれども、唐突とうとつに、七守さんがて、カブトムシ魔人に、かたなで斬りかります。

師匠ししょうがって!」

 七守さんが、優人に進言しんげんしました。優人は、この進言を、れました。


 優人が下がると、七守さんが、連続れんぞく斬撃をり出します。

 しかし、刀には、刃こぼれこそいものの‥‥カブトムシ魔人は、たじろぐだけで‥‥ゼロダメージです。


 しばらくして、カブトムシ魔人のすきて‥‥七守さんが、刀舞とうぶアクションをしています。

「ロックアイス‥‥ブレイズ!」

 言葉ことばと共に、七守さんの刀を、こおりのような結晶けっしょうつつみ込み‥‥刀が『氷の野太刀のだち』に変わりました。


 さらに、まんして、七守さんが『氷の野太刀』で、カブトムシ魔人にダメージをあたえて行きます。


 やがて、カブトムシ魔人が、体勢たいせいくずしました。

「スクリュードライバー!」

 七守さんの野太刀が、カブトムシ魔人をばしました。


 この時とばかり‥‥七守さんが、気合きあい一閃いっせんします。

「シトラ(ス)スパーク!」

 七守さんの斬撃が、カブトムシ魔人を、たてぷたつに『乾竹からたけり』しました。

 無残むざんにも‥‥両断りょうだんされた死骸しがいが、地面じめんのこされています。



 ところが、突如とつじょ、カブトムシ魔人の死骸しがいが、邪悪なる黒煙こくえんとなり‥‥全長ぜんちょう6メートルもの巨大きょだいカブトムシに変わります。

 空宙くうちゅうに、邪悪なる怪物かいぶつ『カブトムシ魔神デーモン』が、出現しました。


 咄嗟とっさにも、優人と七守さんが、呼吸こきゅうわせて、剣技けんぎ刀技とうぎの『合体がったいわざ』を発動はつどうさせます。

豪華ごうか‥‥絢爛けんらん!』

 しかし、二人の斬撃は、カブトムシ魔神まじんたいして‥‥ダメージを、まったく与えられませんでした。



 ですが、いきなり‥‥なぞ流星りゅうせいが、カブトムシ魔神をつらぬきました。魔神は、放電ほうでん(スパーク)しながら麻痺まひ(フリーズ)しています。


 謎の流星『オナさん』が着地ちゃくちして、すずやかに宣告せんこくします。

「今のが、オナ子さんキックだ‥‥」

 宣告をっ掛けにして‥‥カブトムシ魔神のからだが、崩壊ほうかいはじめました。

 魔神の残骸ざんがいが、くろはいと化して、崩れるように‥‥えて行きます。



 ところが‥‥何処どこからとも無く、不吉ふきつ詠唱えいしょうひびいて来ます。

「イア‥‥イオ、マーラドンナ‥‥」

 今度こんどは、魔神の崩壊がまり、復活ふっかつを始めました。


<ダンッ!>


 しかし、突然とつぜん銃声じゅうせいと共に、ふたたび、カブトムシ魔神が、崩壊して行き‥‥今度こそ、魔神は、消滅しょうめつしました。


 それは、亜美ちゃんによる、職員しょくいんしつまえからの破魔はまだん『シルバーバレット』での狙撃そげきでした。教頭の亜美ちゃんは、さりげなく‥‥自分のライフルを、インベントリに収納しゅうのうします。



 くして、こののち、3年4組の委員長『谷間芳果』こと、ドS眼鏡さまの姿を見たものは‥‥ませんでした。

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