バイオドール

友情の寅ふぐ

　本生（もとじょう）優人（ゆうと）（１８才（さい））と、バイオドール『オナ子（こ）さん』の間（あいだ）に、男女（だんじょ）の友情（ゆうじょう）が芽生（めば）えました。

　切（き）っ掛（か）けは、近頃（ちかごろ）の優人が、オナ子さんを玩具（おもちゃ）にする時（とき）、性欲（せいよく）を最（さい）優先（ゆうせん）させて、Ｂ級（きゅう）エロスを尽（つ）くしまくった事（こと）です。

　それに対（たい）して、オナ子さんは、全（ぜん）リアクション『苦情（くじょう）を徹底（てってい）』しました。すると、痴話（ちわ）喧嘩（げんか）のような『感情（かんじょう）のぶつかり合（あ）い』が、十日（とおか）ほど続（つづ）いたのです。

　その‥‥挙句（あげく）の果（は）てとして、友情が芽生えました。

　最早（もはや）、二人（ふたり）は、男女の友達（ともだち）でもある『性的（せいてき）パートナー』です。

　しかしながら、それまでに、優人が、オナ子さんに費（つい）やした精力（せいりょく）は、呆（あき）れるほど絶大（ぜつだい）でした。なにしろ、オナ子さんには、他者（たしゃ）の精力を回復（かいふく）する能力（のうりょく）『聖乳（アムリタ）』があります。それ故（ゆえ）に、優人は、聖乳（せいにゅう）を吸飲（きゅういん）しながら、オナ子さんに『絶倫（ぜつりん）性欲』を注（そそ）ぎまくっていました。

　そのため、友情成立（せいりつ）までに、オナ子さんが、噴（ふ）いたり流（なが）した体液（たいえき）『涙（なみだ）や潮（うしお）』の類（たぐい）は、ドラム缶（かん）１本（いっぽん）分（ぶん）を軽（かる）く越（こ）えていました。

　しかし、その分、二人で費やした感情は、そのまま友情の深（ふか）さに変（か）わりました。

　さらには、優人とオナ子さんは、痴話喧嘩を仲裁（ちゅうさい）していた『七守（しちがみ）丁子（ちょうこ）（２９才）』とも、友情が芽生えました。

　まあ、感情を交（まじ）えながら性欲を満（み）たすと、友情などの『親愛（しんあい）』が深まるのかもしれません。３人（にん）は、百合（ゆり）を含（ふく）めた『肉体（にくたい）関係（かんけい）』同士（どうし）ですから‥‥

＃聖暦（せいれき）２０２２年（ねん）５月（がつ）２９日（にち）（日、友引（ともびき））――

　本日（ほんじつ）、優人と七守さんは、普段（ふだん）着（ぎ）での市街地（ストリート）デートです。

　七守さんは、腕（うで）を、優人の腕に絡（から）めています。

　もちろん、優人の腕には、七守さんの豊乳（バスト）が密着（みっちゃく）しています。ですが、優人は、それが当（あ）たり前（まえ）のように、平然（へいぜん）として歩（ある）いていました。

　デート開始（かいし）から、間（ま）もなく‥‥七守さんが、年下（としした）の優人にアイスを奢（おご）りました。

　二人は、ひとつのアイスを、仲（なか）良（よ）く食（た）べています。

　しばらくして、七守さんが、優人の頬（ほほ）に、あどけないキスをしました。

　七守さんが、告（つ）げます。

「‥‥師匠（ししょう）、アイス付（つ）いてた」

「そっか」

　七守さんのキスは、アイスを拭（ぬぐ）うためでした。

　正午（しょうご）になり、空（す）いている飲食（いんしょく）店（てん）を探（さが）しますが‥‥良（よ）い店（みせ）が、見（み）つかりません。そこで、今度（こんど）は、優人が『たい焼（や）き』ひとつだけを買（か）って、七守さんと一緒（いっしょ）に食べ歩いていました。

　しばらくして、優人が、七守さんの口元（くちもと）に、さり気（げ）なくキスします。

　優人が、言（い）います。

「七守さん‥‥餡子（あんこ）、付いてた」

「ありがと、師匠」

　七守さんは、キスの御礼（おれい）を言いました。

　午後（ごご）１時（じ）‥‥やっと、空（す）いている喫茶（きっさ）店を見つけます。

　そこで、二人は、入店（にゅうてん）しました。優人は、カルボナーラを、七守さんがポークカレーを注文（ちゅうもん）します。

　数分（すうふん）後（ご）、料理（りょうり）が並（なら）べられて、食べ始（はじ）めてから‥‥しばらくすると、七守さんが、優人に質問（しつもん）をします。

「師匠‥‥カルボナーラって、美味（おい）しいのか？」

「美味しいよ」

「どれ、どれ‥‥」

　七守さんは、そう言って‥‥優人にキスして、カルボナーラを味見（あじみ）しました。

　美男（びなん）美女（びじょ）によるキスシーンに‥‥周囲（しゅうい）の女性（じょせい）客（きゃく）が、憧（あこが）れの眼（まな）差（ざ）しです。一方（いっぽう）、男性（だんせい）客は、女性からのフレンチキスを見て、感動（かんどう）していました。

　七守さんが、唇（くちびる）を開（ひら）きます。

「‥‥薄味（うすあじ）だな」

「カレーよりもね」

　優人は、そんな感（かん）じに『カレーを食べている最中（さいちゅう）に、カルボナーラを食べても、薄味に感じる』点（てん）を、端的（たんてき）に指摘（してき）しました。

　そんな二人を、監視（かんし）する二人（ににん）組（ぐみ）が居（い）ます。勇者（ゆうしゃ）である優人を担当（たんとう）する要人（ようじん）警護（けいご）官（かん）の『木村（きむら）隆也（たかや）（３０代（だい）の男性）』と『有村（ありむら）和己（かずみ）（２０代の女性）』です。

　しかし‥‥ＳＰ有村さんの表情（ひょうじょう）は、憧れで『ほにゃらけ』ています。その緩（ゆる）み切った表情を、ＳＰ木村君（くん）が呆（あき）れていました。

　食後（しょくご）‥‥支（し）払（はら）いを、七守さんが、優人の『付き人（びと）』として済（す）ませました。

　そして、店から出（で）ると、七守さんがスマホで、警護車両（しゃりょう）『サムライ零式（ぜろしき）』を、召喚（しょうかん）‥‥瞬時（しゅんじ）に、サムライ零式が出現（しゅつげん）します。

　優人たち二人が、サムライ零式に乗（の）り込（こ）むと‥‥さり気なく、ＳＰの二人も乗り込みました。

　行（ゆ）き先（さき）は、お台場（だいば）海浜（かいひん）公園（こうえん）です。

　数十（じゅっ）分後（ご）‥‥現地（げんち）で、優人と七守さんは『寅（とら）ふぐ』を釣（つ）り始めました。

　ここは、投（な）げ釣（づ）りとルアー釣りは、禁止（きんし）なので‥‥練（ね）りエサを針（はり）に付けて、浮（う）き釣りです。

　数時間（じかん）もの時が、ゆっくりと流れ去（さ）りました。

　釣果（ちょうか）は、優人が７匹（ひき）、七守さんが９匹でした。

　ちなみに、寅ふぐは、サムライ零式のＡＩ『エフゼロ』が、専門（せんもん）スキルで調理（ちょうり）『下（した）ごしらえ』しました。当然（とうぜん）ながら、寅ふぐには、毒（どく）があるので、調理には『専門スキル』が必要（ひつよう）でした。

　こうして‥‥この日（ひ）の午後１０時――

　優人が、帰宅（きたく）しての夕食（ゆうしょく）後（ご）、ダイニングのソファーで、眠（ねむ）ってしまったので‥‥優人を、オナ子さんが、ベッドに運（はこ）んでパジャマを着（き）せました。

　いまだ‥‥優人は、ぐっすりと眠っています。このところ、オナ子さんとの夜（よ）更（ふ）かしが続（つづ）き、疲（つか）れていたのです。

　この夜（よ）、七守さんとオナ子さんは、優人の両側（りょうがわ）で眠りました。

　七守さんも、久々（ひさびさ）に、パジャマを着ています。

　朝（あさ）まで‥‥３人は、仲（なか）睦（むつ）まじく『川（かわ）』の字（じ）で、眠りました。