バイオドール

集合写真

　西暦（せいれき）世界（せかい）の地球（ちきゅう）にとって、聖暦（せいれき）宇宙（うちゅう）の各（かく）惑星（わくせい）は、異（い）世界に相当（そうとう）します。

　西暦の地球と、聖暦の地球は、別々（べつべつ）の宇宙に在（あ）ります。

　しかしながら、西暦の地球と、聖暦の地球には、不思議（ふしぎ）な因果（いんが）関係（かんけい）があり、それこそが、双方（そうほう）の地球を行（ゆ）き来（き）できる、理論（りろん）上（じょう）の根拠（こんきょ）です。

　ともあれ、本生（もとじょう）奈央（なお）が転生（てんせい）‥‥オナ子（こ）さんが製造（せいぞう）された日（ひ）のことです。

　オナ子さんは、製品（せいひん）検査（けんさ）により、聖女（せいじょ）であることが判明（はんめい）しました。その後（ご）、オナテックの本社（ほんしゃ）に、天使（てんし）ヒエロメルが降臨（こうりん）しました。

　その際（さい）、天使ヒエロメルは、オナ子さんに武装（ぶそう）を施（ほどこ）すように指示（しじ）します。

　さらに、その上（うえ）で、故（こ）・本生奈央の実弟（じってい）『本生優人（ゆうと）（１８才（さい））』に、オナ子さんを贈（おく）りました。

　尚（なお）、オナテック社（しゃ）は、聖暦宇宙に存在（そんざい）しています。

　そして、話（はなし）は、異世界群（ぐん）『聖暦宇宙』に戻（もど）り‥‥現在（げんざい）、聖暦２０２２年（ねん）５月（がつ）１８日（にち）（水（すい）、先負（せんぶ））です。

　本日（ほんじつ）、かなりの無理（むり）がありますが‥‥優人の付（つ）き人（びと）『七守（しちがみ）丁子（ちょうこ）（２９才）』が、都立（とりつ）八幡（はちまん）高校（こうこう）に転校（てんこう）して来ました。

　しかも、七守さんの席（せき）は、優人の隣（とな）りです。

　それは、そうとして、昼（ひる）休（やす）みに‥‥オナ子さんが、勝手（かって）に実体（じったい）化（か）します。オナ子さんは、相（あい）変（か）わらず、風俗（ふうぞく）バニーガール衣装（いしょう）とシリコン製（せい）の両（りょう）腕（うで）両脚（あし）です。

　オナ子さんのリアル性感系（センシュアル）ボディーに、男子（だんし）たちが歓喜（かんき）しています。

　オナ子さんは、優人に、要件（ようけん）を伝（つた）えます。

「ご主人（しゅじん）さま‥‥散々（さんざん）、悩（なや）んで、結論（けつろん）が出（で）ました。

　‥‥せめて、わたしを、年上（としうえ）として扱（あつか）わないでください！

　その代（か）わり、元（もと）・実姉（じっし）としての沽券（こけん）は、不（ふ）本意（ほんい）だけど‥‥忘却（ぼうきゃく）します」

「まだ、忘（わす）れて無（な）かったんだ‥‥」

　優人が、冷（さ）めた感（かん）じで、呆（あき）れています。

　ところが、突然（とつぜん）、幼馴染（おさななじみ）の豊田（とよた）健二（けんじ）（まじめ眼鏡（めがね）系（けい））が、話に割（わ）って入（はい）ります。

「実姉って‥‥その人（ひと）、よく見（み）ると、奈央ちゃんに似（に）てるけど？」

「うん、姉（ねえ）さんが転生して、オナ子さんになった」

　優人が、そう答（こた）えると‥‥健二は、目（め）を見（み）開（ひら）きます。

「オナって‥‥もしや、アダルト器具（きぐ）『オナホ』のことか！」

「まっ、まあ、そうなんだけど‥‥」

　健二の驚（おどろ）きを、優人が、気（き）まずそうに肯定（こうてい）しました。

「おっ、お前（まえ）‥‥まさか、実（じつ）の姉（あね）を？

　こ、子供（こども）とか、赤（あか）ちゃんとか‥‥どうする気だ！」

「にっ、妊娠（にんしん）は、極（きわ）めて低（てい）確率（かくりつ）だから‥‥

　そ、それに、転生で、姉さんとは、血縁（けつえん）関係（かんけい）が無くなったから！」

　健二の怒声（どせい）に、優人は、慌（あわ）てながら応（こた）えました。

　教室（クラス）中（じゅう）に、性的（せいてき）驚愕（きょうがく）による、衝撃（しょうげき）が走（はし）ります。

　不意（ふい）に、優人の後（うし）ろから、大（おお）きな声（こえ）がします。

「慶次（けいじ）、大丈夫（だいじょうぶ）か！」

　見れば、別（べつ）クラスの幼馴染の二人（ふたり）‥‥大柄（おおがら）ポッチャリ系『松田（まつだ）判治（はんじ）』と、爽（さわ）やかスポーツ系『本田（ほんだ）慶次』が居（い）ました。

　慶次が、放心（ほうしん）状態（じょうたい）で呟（つぶや）きます。

「優人が、奈央ちゃんと‥‥ガチ生（なま）エッチ‥‥」

「優人、どうすんだよ？

　慶次の奴（やつ）、奈央ちゃんを好（す）きだから！」

　慌てながら、眼鏡の健二が、大声（おおごえ）を出（だ）しましたが‥‥デカポチャの判治までもが、慌てて怒（ど）鳴（な）ります。

「馬鹿（ばか）、慶次の秘密（ひみつ）を、バラすな！」

　哀（あわ）れにも‥‥慶次は、黙（だま）って、その場（ば）から立（た）ち去（さ）りました。

　その後（あと）を、これまた幼馴染で、パワフル系の美（び）少女（しょうじょ）『日野（ひの）五十鈴（いすず）』が、追（お）いかけて行きます。

　こうして‥‥慶次に、彼女（かのじょ）が出来（でき）ました。もちろん、相手（あいて）は、五十鈴です。

　後（あと）で、聞（き）いた話では『五十鈴が、慶次を、抱（だ）きしめながら慰（なぐさ）めたら‥‥』あっさりと落（お）ちたそうです。

　そして、放課後（ほうかご）‥‥

　校舎（こうしゃ）の屋上（おくじょう）に、優人、健二、判治、慶次、五十鈴たちが、集合（しゅうごう）していました。

　やがて、他愛（たわい）のない無駄話（むだばなし）の途中（とちゅう）で、オナ子さんも実体化して加（くわ）わります。

　さらに、しばらくすると、慶次のスマホで、自撮（じど）り集合写真（しゃしん）が写（うつ）されました。

　その写真は、ありふれた、青春（せいしゅん）の１ページでした。