要人警護官と付き人

くして、いまだ、聖暦せいれき2022ねんがつ17にち友引ともびき)――



 この本生もとじょう優人ゆうと(18さい)は勇者ゆうしゃである』という事実じじつが、おおやけになりました。


 しかも、日本にほんの勇者は、優人だけで、世界せかいの勇者も、数名すうめいしか存在そんざいしません。そのうえ、世界でも、男性だんせい勇者は、優人ただ一人ひとりです。

 つまり、それだけ、優人は、希少きしょう人財じんざいなのです。



 そのため、この日の午後ごご、優人は、校長こうちょうしつばれていました。

 ただし、校長が不在ふざいなので、女性じょせい教頭きょうとうとの対話たいわです。


「あなたは、勇者なので、SP『要人ようじん警護けいごかん』がくことになりました。

 かれらが、到着とうちゃくする午後5時まで、ここでっていてください」

「わかりました」

 優人は、教頭の指示しじに、したがことにしました。


 目下もっか、優人と教頭は、応接おうせつソファーで、かいってすわっています。

 ところが、教頭は、純情じゅんじょう赤面せきめんしていました。


 教頭『河合かわい亜美あみ』(アラフォー独身どくしん)は、ファンタジーきです。

 教頭の目前もくぜんには、ゆめにまでた勇者がます。


 そのため、教頭は、赤面しながらも、ながれゆく時間じかんに、しあわせをかんじていました。



 午後5時、時間じかんどおりに、要人警護官の男女だんじょが到着します。このとき、優人と教頭は、いつのにか‥‥となり合って、座っていました。


 ところが、警護官たちの視線しせんは、ゆかちている『パンスト』にそそがれます。

 教頭が、それに気付きづき‥‥赤面しながら、パンストを回収かいしゅうしました。同時どうじに、自身じしんが、素足すあしである事にも気付いて、そわそわしています。


 やがて、警護官たちが、なおして、自己じこ紹介しょうかいをします。

木村きむら隆也たかやです」

有村ありむら和己かずみです」

 警護官は、30才だいの男性が木村で、20才代の女性が有村でした。


 しばらくすると、優人は、教頭の純情な微笑ほほえみおくられながら、警護車両しゃりょうに向かいました。


 優人が、ったあと‥‥教頭が、なにやらゆびかぞえています。

今日きょうは、安全あんぜんか‥‥だけど‥‥処女しょじょは、卒業そつぎょうできた♪」

 美女びじょ教頭は、そうって、こい妄想もうそうはじめました。



 優人がくるまむと、真紅しんくの警護しゃ【サムライ零式ゼロしき】のAI『F-ZERO』が、挨拶あいさつをします。

『はじめまして、勇者さん。

 ――わたしは、スキルが使つかえるAIのエフゼロです。

 今後こんごとも、よろしくねがいします。

 それから、おちかづきのしるしに、コーヒー牛乳ぎゅうにゅうをどうぞ!』


 エフゼロの言葉ことばのちに、優人の手中しゅちゅうに、コーヒー牛乳が出現しゅつげんしました。

 それは、エフゼロが、スキルで生産せいさんしたアイテムです。


 早速さっそく、優人は、コーヒー牛乳をみながら、質問しつもんします。

「エフゼロの所有しょゆうスキルって、どんなのがあるの?」

『ソフトドリンク生産や、ロボット変形へんけいなどです』


「ロボット変形‥‥もしかして、合体がったいは?」

『トレーラー「ブレイブローダー」が、近くにあれば可能かのうです』

すごいな‥‥」

 優人が、感心かんしんしています。



 午後5時はん、優人の自宅じたくには、警護車『サムライ零式』の変形/合体のくわしいはなしを、色々いろいろいているうちに到着しました。

 ちなみに、トレーラー『ブレイブローダー』は、神宮じんぐう外苑がいえん地下ちか格納かくのうされているそうです。


 斯くして、優人が自室じしつはいると、ポニーテールがみのアラサー美女が、待ちけていました。

 彼女かのじょは、片膝かたひざいて、優人に御辞儀おじぎします。


七守しちがみ丁子ちょうこ、7月まれの29才です。

 ――貴方きほうの『びと』とるべく、さんじました。

 そして、ねがわくば‥‥

 われ天下てんか泰平たいへい防人さきもりとして、貴方あなたに処女をささげます!」


「‥‥」

 優人が、唖然あぜんとしていると、おとこまさりの七守さんがつづけます。


「まずは、一緒いっしょに‥‥お風呂ふろにしますか?

 それとも、やはり、づくりですか!」

 七守さんは、ドアに向かい‥‥部屋へやかぎを、ガチャリとめました。



 午後7時、夕食ゆうしょくを、優人と七守さん、優人の両親りょうしん、それから‥‥警護官の二人ふたり合計ごうけいめいが、ダイニング部屋ルームっています。

師匠ししょう、そこの醤油しょうゆを、取ってください」

 七守さんは、何故なぜだか優人を、師匠と呼んでいました。


 夕食‥‥優人のちちが、突然とつぜん婚姻こんいんとどけを、テーブルにひろげました。

 父『真人まさと』がげます。

「優人、七守さんとの『けじめ』をけなさい!」


「おづかい、御無用ごむよう!」

 七守さんは、そう言って、ビリビリと婚姻届けをやぶきました。


 その直後ちょくご今度こんどは、SP木村くんが、七守さんに質問します。

報告ほうこくのため、二人の関係かんけい進捗しんちょくを‥‥?」


生中なまなかでしたが、避妊ひにんしてました」

事務じむてき騎乗位きじょういでした」

 七守さんのあとで、優人がこたえました。SP有村さんが、赤面しています。

 SP木村君は、たのみをかべていました。



 こうして、ときち、午後10時、部屋はわり‥‥優人の自室では、七守さんがかたり始めます。


「師匠と聖女せいじょ『オナさん』の関係を、邪魔じゃまするつもりはありません。

 まもっていますから、気にしないでください」

 七守さんは、うやうやしく、かしこまっていました。


 すると、優人が、さわやかにわらいながら、こたえます。

百合ゆり前提ぜんていにして‥‥3人で、どうかな?」


よろこんで!」

 七守さんは、りんとした物腰ものごしで、答えました。

 こうして、火曜日ようびよるが‥‥けてきます。



 ところで、七守さんは、オナ子さんが『優人の実姉じっし』として使つかっていた部屋で、らすことになりました。

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