第50話 誰でも出来る
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ついに動いている魔物どもがいなくなった。
見渡す限り死屍累々ってカンジだ。
「終わったか?」
ちょうど機関銃の弾も無くなったので、
九郎は戦車と機関銃をプラモ化してアイテムボックスに放り込んだ。
離れていたオポチュニティズとスパイス・ガールズがこちらにやってきた。
俺たちは誰一人、かすりケガすらしていなかった。
「完勝だったな!」
話しかけると九郎が肯いてくれたのだが、
サポネは緊張したままだった。
「・・・まだ、いるにゃ!」
サポネもマリンも油断など、全くせずむしろ警戒を強めていた。
「様子を伺っているのか。こいつ等、強いぞ。」
「しまった!フラグを立ててしまった!スマン!」
しばらく、様子を伺っていると、
オーガ、一際デカいトロール、デカいオーク4匹が出てきた!
戦車と機関銃がなくなったことを理解しているようだった。
「おい、オーガの角、3本あるぜ!ハイオーガの中でも強い奴だ!」
「どうする?」
「グレイトトロールはアタシたちがもらう!」
出番が少なかったスパイス・ガールズが一番に選んだ。
「じゃあ、私は一人で、ハイオーガを殺る!
みんな、手を出すなよ!」
決意を見せたのは、アルテ。今日は全く戦っていないからな。
「オポチュニティズ、強いところを見せろ、オーク4匹だ。」
「兄貴!あれ、オークジェネラルですけど!強すぎますって!」
「いける、いける。
それに、怪我したらパメラが治してくれるから!嬉しいだろ?」
「やった~!って喜べるか!」
「乗りツッコミとは余裕じゃないか!」
「くそっ!死んだらアンデッドになって兄貴を襲ってやる!」
「そうなったら、パメラがターンアンデッドの魔法で気持ちよく
土に返してくれるさ。」
「ちっくしょ~!絶対、倍返ししてやるからな~!」
ウォーレンは血の涙を流さんばかりに俺を睨みつけていた。
「じゃあ、サポが助けるにゃ~。」
だけど、サポネが助けてくれると聞いて奴らは笑顔を浮かべた。
まさに豹変だ!
「あっ、お願いします。」
「お前ら、女の子に助けてもらうってプライドないのか!」
「生き残って、ケガして、パメラ様に治してもらうんだ~!」
「だっは~!」
バカやっていたら、スパイス・ガールズとグレイトトロールの戦いが始まったが、
一方的だった。
グレイトトロールはデカく、凄いパワーで、体も硬く、
魔法も効きにくいようだったが、なんせ動きが遅かった。
トロールの攻撃はことごとく躱され、その右膝に攻撃を集中されて、
少し時間がかかったものの右膝が砕けると、起き上がれなくなってしまった。
後は後ろから回り込んで、タコ殴りで終了だった。
それと同時に、ハイオーガとアルテの戦いが始まった!
身長2メートルを軽く超すハイオーガは両手に巨大な剣を持って、
アルテに向かって、暴風のように襲ってきた!
「アルテ!」
眉をひそめたパメラが両手を組んで、心配そうに見つめていた。
ハイオーガの攻撃は圧倒的な速さで、反撃なんて全くできそうになかった。
強いな・・・
だけど、左右の剣を自在に操るハイオーガにアルテは盾で固く守り続けた。
防戦一方だけど、全く危なげがない!凄い!
しばらくして、体の大きさが大人と幼児くらい違うのに、
全力の攻撃が防がれてしまうことにハイオーガが不審に思ったか、
疲れたか、一歩下がって呼吸を整えていた。
ハイオーガに向かってアルテはニヤリと笑った。
「体がデカいだけで大したことないな。」
言葉が分かったのか、雰囲気でバカにされたことが分かったのか、
ハイオーガが怒声をあげながら突っ込んできて、右手の剣を振り下ろした!
アルテは初めて、盾で受け流すと、そのせいで態勢を崩したハイオーガ。
アルテの黒い盾が光り輝いた!
「シールドバッシュ!」
アルテより倍くらいデカいハイオーガがはじけ飛び、
その右腕がぐしゃりと2度折れ曲がっていた!
「ひいぃ!」
ハイオーガが近寄ってくるアルテを見て、怯えた表情となって、
座ったまま後ずさりしていた。
アルテは慎重に近づいて行って、長剣でとどめを刺した。
「アルテ!アルテ!」
パメラが万歳しながら飛びあがって喜んでいた。
子どもらしい所もちゃんとあるんだな。
最後になったオポチュニティズの4人は
4匹のオークジェネラルと一対一で戦い始めた。
オークジェネラルのパワーに、オポチュニティズはすぐに防戦一方となった。
特にパワーが最もない斥候のライナーが剣を受け止めるために
バランスを崩して、見ているだけでひやひやした。
後ろでオポチュニティズの戦いを見つめていたサポネが一歩前に進むと突然消えた!
慌てて探すと、ライナーと戦っているオークジェネラルの背後に忍び寄っていた!
そして、後ろからジャンプしてオークジェネラルの頸動脈を短剣で切り裂いた!
頸動脈から血が凄い勢いで流れていることを見て、
ジェネラルオークは驚いていた。
サポネの攻撃に気付かなかったようだ。
ジェネラルオークはライナーに向かって2歩前に進んで、前のめりに倒れた。
サポネ!
鮮やかすぎる!
流石、暗殺者だ!
「ありがとう、サポネちゃん!」
「ライナー、カスパーの敵をやっつけろ!」
「はいっす!」
そして、オポチュニティズは苦戦しつつも残りのオークジェネラル3匹を倒した。
「し、しまった~!無傷で倒してしまった~!」
ウォーレンの絶叫が東の森に響いた。
前もって聞いたところでは、オポチュニティズ4人がかりで
オークジェネラルより格下のオークナイト1匹を倒せるかな?だったらしい。
予定通り、俺たちのパーティに入って、一気に強くなったよな。
「いや、しかし、九郎のお陰で楽勝だったな。」
「いやいや、みんなのおかげだよ。」
俺と九郎、花梨は右腕をぶつけ合い、左腕をぶつけ合い、
胸をどーんとぶつけて、最後、両手でハイタッチした。
「「「イエ~イ!」」」
「ちょっと、アンタたち!」
ブルーメが血相を変えていた。
「アタシたちもパーティに入れるのじゃ!
今日なんて、アタシたち、ほんの少ししか倒してないのじゃ!」
他のスパイス・ガールズもうんうんと詰め寄ってきた!
「なに言ってんの?
ハイオーガやグレイトトロールなんかは機関銃で死ななかったから
そこそこ行っただろ?
それに、俺、九郎、花梨、サポネ、パメラ、アルテと戦えるのが6人いるんだ。
パーティは10人までだろ?
スパイス・ガールズの5人は無理だよ。」
「うっ・・・じゃあさ、じゃあさ、アンタが外れればいいのじゃ!
アンタの代わりなんて誰でも出来るのじゃ!」
ブルーメがビシッと俺を指さした!
「アンタたちをパーティに入れるなんてゴメンだよ。」
固まった俺の代わりに、間髪入れず九郎が超低温の言葉で吐き捨てると、
ブルーメは言い過ぎに気づいたようだった。
「あっ・・・」
「初めて乗った戦車の砲弾を敵に当てる難しさが分からないから、
そんな馬鹿なことを言うんだろうけど、
三蔵だから、あんなペースで発射して全部当てるんだ。
三蔵じゃなかったら、10発に1発も当たらないから。
三蔵がいなかったら、みんな死んでいたから。
代わりがいくらでもいるのはアンタたちであって、絶対に三蔵じゃないから。」
九郎の静かな烈火の怒りに、
ブルーメだけじゃなく、スパイス・ガールズ全員の顔が青ざめていた。
俺でさえ、九郎がこんなに怒っているのを初めて見た。
「ゴメン。そういうつもりじゃ・・・」
「じゃあ、どういうつもりだったの!」
言い訳をしようとしたブルーメを九郎がぶった切った。
慌てて俺は九郎の怒りに震えている肩を抱いた。
「九郎、守ってくれてありがとう。
まあ、ブルーメはキツイ冗談を言えるくらい俺に気安いってことだよ。」
「そうそう。アッシもちょっとカチンと来たけどさ、
九郎の戦車が凄すぎて、アッシだって操作が簡単だと思っちゃうじゃん。」
九郎が睨みつけているブルーメの前に花梨が体を入れて、
九郎を真っ直ぐ見つめてニカっと笑った。
「ふ~。僕は言い過ぎたみたいだね。ごめんなさい。」
大きく息を吐いた九郎は、スパイス・ガールズに対して頭を下げた。
「いや、悪いのは全面的にアタシなのじゃ!
貴方たちは全く悪くない!
三蔵さん、本当にごめんなさい!」
先に九郎に謝られて、慌ててブルーメが頭を下げると、
併せてスパイス・ガールズ全員が頭を下げた。
「「「「「ごめんなさい。」」」」
「うん、じゃあ、これでさっきの話はなかったということで。
九郎、ジムニーで森の中に魔石を取りに行こうぜ。」
「うん。」
「サポも行くにゃ!」
「ありがとう、サポネ。」
「・・・三蔵、私も行っていいかな?」
おずおずとマリンが手を挙げた。
「ありがとう。でもさ、森の外の方が多いからそっちを任せるよ。」
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