第41話 ミアンダー

次の日の午前中は、俺たちは歩いて村の周囲をパトロールして魔物を駆逐していた。

レベルアップしたからか随分健脚になったので、疲れはあんまりなかった。


ちなみに、九郎はコテージで新作プラモを製作中だ。


そして、午後は214人のスラティナ村の人たちを迎え入れるため

みんな、村の中を駆けずり回っていた。


と、何やら村人たちが大勢集まって、その中心で何やら騒ぎが起こっていた。

「どうしたの?」

様子を見に行ってみたら、

見知らぬ20歳くらいの、中々豪華な装備をしている男だけの

4人組パーティがいて、そのうちの一人がサポネの腕を掴んでいた!


サポネが酷く、怯えている!


それを見て、頭が沸騰した!

「サ、その子を放せ!」

「コイツは俺たちの奴隷だ!こんな所まで逃げ出すとは驚いたが・・・

このガキの名前はサポネ、12歳で【暗殺者】の二つ名を持っているんだ!

どうだ、俺たちがコイツの所有者だってことが分かっただろ?

おら、お前ら邪魔だ、失せろ!」


【暗殺者】!

そうか、だからサポネは教えてくれなかったんだな。

でも、そんなのカンケ~ねえ!そんなのカンケ~ねえ!


サポネ!

絶対に、守ってやるからな!


奴らは、しっしっと村人たちを追い払おうとするが、

村人たちは1歩だけ後ずさったものの、敵意を持って奴らを睨みつけている。


「おい、サポネの手を放せって言ってんだ!

あと、お前たちはどこのどいつだ?名乗れ!」


「あ~ん、クソチビのくせに偉そうに!

俺たちを誰だと思っている?

俺たちはカデック最強のクラン、バッドデイの左腕と呼ばれている

銀ランクのミアンダーだ!そして俺がリーダーのダズラだ!」

虎の威を借りる狐よろしく、ダズラは得意げに叫んだ。


だけど、俺も村人たちも眉一つ動かさなかった。


「それがどうした!

おい、ダズラ、聞こえなかったのか?

さっさとサポネの手を放せって言ってんだ、この雑魚!」

「ざ、雑魚だと!お、俺たちはバッドデイの左腕だぞ!」


「それがどうした!」

武器を持っていない村人とはいえ、100人くらいに敵意を持って

取り囲まれているため、ダズラたちはさすがに動揺しはじめた


「さっさとサポネの手を放せ!」

「くっ・・・わかった、わかったよ。」

ダズラが渋々手を放すと、サポネは素早く逃げ出し、俺の背中に隠れた。

「サニィ、ありがとにゃ・・・」


「おい、行くぞ。」

悔しそうなダズラたちだったが、そそくさと背を向けて歩き始めた。


だけど、手を放しただけでサポネを怯えさせた罪は消えない!

「おいこら、待たんかい!」

輩よろしく、ミアンダーを呼び止める俺。


「な、なんだ、もう用はないだろ?」

「おいこら!お前ら、カデックに帰ったらバッドデイにチクって、

大勢でサポネを攫いに来るつもりだろ?

この村を襲いに来るつもりだろ?」

奴らの顔色が変わった。


図星のようだ。まあ、当然だが。


「な、なんのことだ?俺たちはそんなこと・・・」

「選べ、こら!この村の奴隷となるか、死ぬか、選べ!」

オラオラ系で責め立ててやると、奴らはキレた。

「なんだと!そんなことが許されるのか?おおっ?

そっちがそういうつもりなら、やってやるぜ?」

奴らは得意な陣形をとって、剣に手をかけた。


「ああ、気の毒にな。魔物に襲われて銀ランクのなんだっけ?

4人組が全滅だよ~って話はよくあるぜ。で、どうする?」

トドメトばかりに挑発してやると、ダズルは覚悟が決まったようだった。

「やれ!」


剣を抜こうとしたダズルの左腕を、猛然とダッシュして切り落とした。

「ぎゃ~!」

襲い掛かってきた残り3人のミアンダーの左腕を切り落としてやった。

ゴブリンキング、マンティコアを倒したことで圧倒的に強くなっている~!


無くなった左腕を押さえ、怯えているミアンダーを冷然と見下ろした。

相手をビビらすには、自分がどれだけイカレているか見せつけることだって、

なんかの本に書いてあったっけ。


「バッドデイの左腕だっけ?

お前らの左腕が無くなったらどうなるんだ?

右腕を目指すのか?

まあ、すぐ死ぬから関係ないか。」

嫌味を言ってから、剣をダズルの鼻先に突き付けた。


「ぐうぅ・・・た、助けてくれ、頼む!奴隷でもなんでもなるから。」

「それがご主人さまに向かってきく口か、このボケが~!」

ダズルの頭を蹴り飛ばしてやった。


「ひいぃ!すいません!どうか、助けてください!お願いです!

どうか、俺たちを奴隷にしてください!お願いします!」

鼻血を流しながらダズルが叫び終わると、

ちょうど、パメラ、アルテ、花梨、スパイス・ガールズが現れ、

左腕を失い、大量の血を流している4人を見て絶句した。


「・・・これは・・・三蔵さん、やりすぎです。」

奴らに同情したらしいパメラに叱られてしまった!


「だって、こいつら、サポネを攫って奴隷に戻そうとしたんだぜ!」

「うん、三蔵、殺してしまえ!」

たちまち、花梨がキレた。


「う~ん、やっぱり、殺すのは・・・ちょっとだけやりすぎです。」

ちょっとだけなんだ!パメラも怒ってる!


「なあ、ブルーメ、奴隷の魔法って使える?」

「あ、ああ、簡単なヤツならね。」

「じゃあ、こいつ等を俺たちの奴隷にしてくれ。」


「奴隷になって、ちゃんと反省したら、左腕、治しますからね。」

俺の言葉にパメラが被せてきた。


えっ?

切り落とされた腕って、くっつくの?4人もだよ?

そういや、俺の手も治してくれたけどさ、

それって、上位の神官なら当然なの?


でも、村人たちはパメラだから当然だと思っているぅ~!


奴隷になって、本当に左腕を治してもらったミアンダーは

左腕が動くのを見て泣いて喜んで、パメラを拝んでいた。

村人たちはそれを微笑ましそうに見ていた。

また、つまらぬ信者が増えてしまった。


うん、奴隷として頑張れよ。


パメラとミアンダーを横目にブルーメが話しかけてきた。

「・・・なあ、お前たちってホント、オカシイのじゃ。」

「・・・スマン。ところで、パーティとクランのことを一から教えてよ。」

「はあぁぁぁ!お前たちは、ホントに!」

ブルーメにドン引きされちゃった!


「パーティは経験を共有するが、最大10人までなのじゃ。

ただし、現場に一緒にいないと駄目だが。」

「10人?まえに、6人までって聞いたけど・・・」

「それはダンジョンのボス部屋に入れる人数で、

魔の森では関係ないのじゃ。

ただ、人数が多くなるほど人間関係が難しくなるから、5人以下が多いのじゃ。」


「ふむふむ。人間関係、難しいよね!」

「・・・ハーレム野郎が何言ってんだ?」

ブルーメはジト目で俺を見ていた。


「・・・じゃあ、クランは?」

「何にもないな。ただ、グループの一員ってだけなのじゃ。

メンバーは会費を払って、庇護してもらい、トップは会費でウハウハだけど、

メンバーがやられたときはやり返す必要があるのじゃ。」

「じゃあ、ミアンダーだっけ、あいつ等は裏切ったからって

呪い殺されるワケじゃないんだ。」

「それは奴隷だろ。」

「なるほどね・・・でも、俺たちの名前を、知らない場所で使われたらイヤだな。」

「じゃあ、クランは作らないでおくのじゃ。」


夕方近くなって、新しいプラモへの魔力の充填が完了したらしく、

晴れ晴れとした顔で九郎が外へ出てきた。

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