第33話 ゴブリンキング

向こうに、さっきのよりさらにデカイ奴がいた!

「デカい!キングか!」


「うおおぉ!」

何故か吠えながらアクセルをべた踏みすると、

さらにスピードアップしてゴブリンキングを狙う。


手前のゴブリンどもが怯えて避けていくが、

ゴブリンキングはニヤリと笑い、巨大な鉄の棍棒を振り上げた!


ドン!

ゴブリンキングの後ろで九郎が投げた手りゅう弾が爆発し、

ゴブリンキングが少しバランスを崩した!


「うおおぉ!」

俺はランクルにすべての魔力を注いだ。

その時間、ほんの0.1秒。


振り下ろされる巨大な棍棒がランクルの屋根のガードパイプに激突するその直前、

ランクルを超加速させた!


ガツン!

ドゴン!

ランクルはゴブリンキングに激しくぶつかった!


ゴブリンキングは血反吐を吐き、よろめいたものの、まだ立っている!

80キロくらいの速さで衝突したのに!

化け物め!


ゴブリンキングがゆっくりと体を起こした!

その目は憎悪に燃えている!


また、ゴブリンキングが巨大な棍棒を振り上げた!


俺は全速でバックしながら、右手を外に出し、拳銃を撃った。

ドン!

狙いどおり、ゴブリンキングの右目に当たり、血が噴き出した。


ゴブリンキングが苦しんでいる隙に距離を取った。


そして、もう一度、ゼロヨンダッシュだ!

ガツン!


ランクルは、今度こそゴブリンキングを弾き飛ばし、

その体を踏みつぶし、乗り越えた!


直進しながら、バックミラーで確認すると、

ゴブリンキングはまだ、のろのろと上半身を起こそうとしている!


コイツ、不死身か?

「まだ、生きているぞ!」

「任せて!」

九郎がポイっポイっと投げた手りゅう弾の爆発をまともに喰らい、

ようやくゴブリンキングは動かなくなった。


死んだゴブリンキングの近くにいたゴブリンどもが大声を出すと、

ゴブリンどもは雲の子を散らすようにバラバラに逃げ出し始めた!


「追撃するぞ!」

群れの大きな方を追いかけ、手りゅう弾とサブマシンガンで殺しまくり

さらに躓いてコケた奴を踏みつぶしていった。


5分ほど追撃してその群れをせん滅すると、見渡す限りゴブリンがいなくなり、

ようやくホッと一息ついた。


「今日はこれぐらいで勘弁してやるか。」

「それ、負け犬のセリフだね。」

「「「あはははは!!」」」


追撃を止めて、辺りを確認しながらゆっくりと戻っていく。

「・・・まさか、屍山血河を直に見るとは思わなかったよ。」

「うん。でも、まあ、アッシたちが無傷でよかったじゃん?」


「ホントに、そうだね。

それにしても、ゴブリンをこれだけ殺しても、罪悪感が全く湧かないね。」

「マジな、マジそれな。」


「魔石はどうするにゃ?」

ようやく自分の仕事が来たサポネが声をあげた。


「キングとか上位種の魔石はゲットしたいな。

あっ、あそこにさっきの冒険者たちがいる。まずは話をしてみよう。」


ランクルでノロノロと近づいていくと、

座り込んでいた彼らはノロノロと立ち上がった。


戦いが終わって、闘志がゼロになっているようだ。


「花梨、飲み物、彼らの分もあるかな?」

「多分、だいじょぶ。」

少し手前で停車し、全員で車を降りた。

笑顔を浮かべ、ゆっくりと近づいていく。


オッサンが9人、10代の男が4人、20歳くらいの若い女が5人いたが、

俺たちの構成を見てびっくりしていた。


そりゃ、ゴブリンの大軍を木端微塵に粉砕したグループに、

子どもが3人もいたら驚くよね。


残りはチビに、ヒョロガリに、若い女が3人で、

大人も子供もジャージで、防具の武器も持っていないし。

正直、弱そうに見えるだろう・・・


相手の冒険者の若い女は5人とも美しくて視線が釘付けになってしまった。

そのうえ、人の魔術師、エルフの射手、ドワーフの神官、

犬人の斥候、猫人の戦士とバラエティに富んでいた。


「助けてくれてありがとう。

アタシがこの冒険者グループの代表、スパイス・ガールズのブルーメだ。

ちなみに金ランクなのじゃ。」

ブルーメはえっへんと胸を張った。


キタ~、のじゃロリ!

代表者はオッサンじゃなくって、人の魔術師だった!


ブルーメは、小柄で、濃い茶色の髪をツインテールにしていて、

童顔の可愛い女だった。

そして、胸も可愛いサイズ。


「うん?失礼なことを考えていないか?」

ブルーメの大きな目がすーっと細められた。


「ととと、とんでもない。

俺たちはカデックにきたばかりのトーエンっていう冒険者パーティだ。

俺は三蔵。

そっちは大丈夫か?ケガはないか?」


「ケガがないヤツなんていないのじゃ。

だけど、アンタたちが来なければ、

みんな、死んでいたかもだから文句はないのじゃ。」

ブルーメがサバサバと答えると、彼女たちみんな肯いていた。


「まず、重傷者はこちらへ。私が治します。」

「えっ!こんな子どもが?」

「ふっふっふ、パメラ様の魔法で癒されるとは、貴様ら幸せだぞ。

さあ、こっちへ。」

パメラと、得意げなアルテが重傷者たちを連れて少し離れると、

パメラが一人ずつ、回復魔法を施し始めた。


「おおっ!マジで傷が!痛みが消えていく!凄い回復魔法だ!」

さっきまでうめき声を漏らしていた男が喜びの声をあげていた。


それを横目に、ミレーネにお願いした。

「俺たちにはお茶を、彼女らにはスポドリを配ってくれるかな?」

「うん!」


ミレーネがみんなににスポドリを手渡し、

彼女たちにはペットボトルの蓋の開け方を教えて、

「これ、すっごくおいしいの~。」

って笑顔で勧めた。


ミレーネが天使の笑顔を浮かべているから、みんな疑うことなく、

得体の知れない飲み物を飲み干していく。


「ぷは~。マジ、美味しいのじゃ、これ。染みわたるのじゃ。」

「おう、凄く美味しい。」

「生き返るわ~。」


彼女らが感想を言い合い、スポドリを飲み終わってから問いかけた。

「よかったら、事情を教えてくれ。」


「ああ。この向こうにセベシュ村っていうのがあるのじゃ。

さっき避難していく人たちとすれ違っただろ?

彼らがセベシュ村の村人でだいたい、300人くらいいるかな。


村の近くにも、少し前から魔物がたくさん出るようになっていたんだ。

ここからカデックに往復すると2日かかるから、

アタシたちは村に家とメシをタダで用意してもらう代わりに、

夜だけ、護衛として雇われていたのじゃ。


昨日までは多くて20くらいだったから、

ぼろ儲けだって思っていたんだけどな。


日の出とともに、めちゃくちゃたくさんのゴブリンが襲って来たんだ。

村の家畜をおとりにして、逃げ出したんだけどさ、

追いつかれちゃってどうしようかって泣きそうになっていたのじゃ。

ホント、助けてくれてありがとう。」


「どういたしまして。

村に残っている人はいないの?」

「それは大丈夫なのじゃ。

こんなこともあろうかと何度か練習していたらしいからな。」


「おおっ、優秀だな。

それにブルーメたちも、殿なんて怖い仕事、よく逃げなかったよな。

そのおかげで、村人たちはちゃんと逃げ切れたみたいだ。

ほんと、凄いよ。」


「それがアタシたちの仕事なのじゃ!」

ブルーメたちは俺の称賛に誇り高く胸を張っていた。

誰かさんは薄いけど。


「うん?お前、失礼なことを考えているだろ?うん?」

ブルーメの大きな目がすーっと細められた。すっごく剣呑!


「ととと、とんでもない。

じゃあ、これからどうするの?」

「ああ、若いのに、村人を呼び戻しに行ってもらったのじゃ。」


「えっ、村に戻るの?荒らされているんじゃないの?

ていうか、ゴブリンがまだ、村を占拠しているんじゃないの?」


「アンタたちがゴブリンキングを倒してくれたんだろ?

キングが死んだら、ゴブリンはバラバラに逃げ出すらしい。

村に残っていても、たぶん、大したことないのじゃ。


ちなみに、少し前に、スラティナ村っていうのが、魔物の攻撃に耐えきれず、

村を捨ててカデックに逃げだしたのじゃ。

だけど、城内に入れてもらえず、今も場外でキャンプしているらしい。

・・・屋根があるだけ、村の方がマシなのじゃ。」

最後、ブルーメはめちゃくちゃ不味い物を口に含んだ表情となった。


「ブルーメさんが最後ですよ。」

パメラがブルーメの一番大きな傷に手を当てて、回復(小)を唱えた。


「おう、痛みが引いたのじゃ。

ていうか、疲れもなくなったし、魔力も少しだが回復した?

それに、15人もの回復を軽々とするなんて!

君、アタシたちの仲間になってくれないか?」

ブルーメが熱っぽく、パメラの両手を掴んだ。


「こらっ!パメラ様に触るな!誘うな!」

が、アルテに妨害され、しぶしぶ手を離した。

ふと見てみれば、奴ら全員、パメラのことを熱っぽく見つめていた。


パメラ!

子どもから中年まで!

男も女も虜にするなんて!

恐ろしい子!


「パメラはさる貴族の御曹司らしいぞ。手を出すなよ。」

大きな声で言ってやったら、男のほぼほぼはガックリしていた。


だけど、一人のオッサンだけは余計に喜んでいた。

業が深い奴がここにもいるぜ。


「なあ、アタシたちは村へ行くけど、アンタたちも来てくれないか?」

「もちろん、いいよ。」


「ありがとう。村へは、アタシたちスパイス・ガールズが先に行くのじゃ。

みんなはここで待って、村人を連れて来てくれ。」


オッサンと少年たちに村人の護衛を任せて、

スパイス・ガールズの面々が歩き出し、俺は慌てて歩調を合わせた。


ランクルには九郎、パメラ、アルテ、グレイス、ミレーネが乗って、

俺たちの後をゆっくりとついてきていた。

歩きながら、お互いの自己紹介をしていった。


スパイス・ガールズ・・・カデックに3つある金ランクパーティの一つ。

・ブルーメ(リーダー) 人間の魔術師、23歳。

俺と同じくらい小柄(150センチ)で、

濃い茶色の髪をツインテールにしている可愛い女。

態度はデカいが、胸は控えめ。のじゃロリ。


・アメリア エルフの精霊弓手、25歳。

背は普通で銀色の長い髪、切れ長の目、めちゃくちゃ綺麗な女だ。

エルフのイメージどおり、もの静かで胸はない。


・ブレンダ ドワーフの神官、23歳

天パの黒い豊かな髪、背は俺より小柄だが豊満で、可愛らしい顔。

大きな盾と金棒を楽々と持っていて、小柄と大きな武器のギャップが素敵。


・マリン 犬人の斥候、23歳

茶色の髪をポニーテールにしていて、背は高めの綺麗な女だ。


・ウィロー 猫人の戦士 髪はショートで三毛猫っぽい。背は一番高い。

すらりとした綺麗な女。


う~ん。凄い。種族がバラバラで、職業もバラバラ、それでいて美女ぞろい。

こんな奇跡あるか?

目の前にある!


だから、絶対に、仲良くなるぞ!

そして、俺のハーレムに・・・


「いてててて!」

花梨が俺の耳をグイグイ引っ張っていやがる!


「またまた、綺麗な女とお知り合いになれて良かったわね。

それも、5人も。オホホ。」


「どんなキャラだよ?

さっき、出会った神父はイケメンだと思ったけど?」

「それ!三蔵、ナイス!

スポドリ渡す時、手を握っちゃったわ!

ワイルド系が理想だけど、上品系もやっぱりいいじゃん、いいじゃん!」


「だろ?」

「はあ、早く帰って来ないかな?

もう、アッシらが退治しちゃったケド。」

「だね。」

花梨がご機嫌になって一安心だ。

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