第15話 休憩

サポネと出会って3日目の昼頃。

宿場や集落からかなり遠くなって、あたりは小さな林と草原が広がっていた。


助手席のサポネがビックリしたような声を出した。

「サニィ、横の川に大きな魚が泳いでいるにゃん!」


ウィンブラを出てからここまで、平坦な土地が続いていた。

サポネはそもそも、ウィンブラの街から外へ出たことがなかったから、

見るもの全てが新鮮で、興味津々で、リアクションが可愛かった。


たった1日で、九郎はもちろん、俺も花梨もサポネにメロメロになっていた。


「そろそろ、休憩するか!」

「休憩!休憩!休憩!」

サポネが弾んだ声を出した。


車を停めた所は流れの緩い大きめの川の堤防だった。

青空の下、レジャーシートを敷いて、まずはコンビニ弁当を食べた。


「美味しいにゃん!」

ニコニコ顔で、もぐもぐと食べるサポネ。可愛い・・・

これまで使ったことなかったのに、器用に箸を使い来なしていた。


「あっ、ほっぺにご飯粒、ついてるよ。」

花梨がそっと手を伸ばし、サポネのほっぺについているご飯粒をつまみ、

ごくごく自然に、自分の口にいれた。

「「オカンか!」」

突っ込んではいたけど、九郎はすっごく羨ましそうだった。


食べ終わるとサポネは流れの緩い大きな川を眺めて、

耳とカギ尻尾をピーンと立てた!


「にゃ~!大きな魚がいるにゃ!」

「ホントだ!マスかな?うん、魚釣りでもしてようか?」

「やった!魚釣り!魚釣り!魚釣り!」

「でも、アッシ、ミミズとか無理!」

「じゃあ、ルアーでやってみようぜ!」


ランクルを再度、リアル化してもらい、初心者釣りセットを用意した。

リールの使い方を教えて、さあ勝負だ!


1時間ほどやってみたのだが、この辺りで釣りをする奴がいないのだろう、

スレていないからたくさん釣れた。


俺はマスを2匹、九郎はスズキっぽいのを3匹、

花梨はマスとスズキを1匹ずつ、サポネもマスとスズキを1匹ずつだ。


一番大きいのを釣ったのは九郎で、

サポネの釣ったのは両方ともかなり小さかった。

「サポも大きいの釣るにゃん!」


俺たち3人は少し離れたところで、サポネの頑張る姿を眺めていた。

「サポネ、楽しそうだな。ほんと、連れてきてよかったな~。」

「僕に感謝してよね!」

「アンタの場合、下心の方が大きいじゃん!」

「そ、そ、そ、そんなことないよ!」


「九郎、動揺しすぎ!

・・・それよりさ、サポネの二つ名を言えないって、なんでだと思う?」

「スキルが、隠密、追跡、索敵・・・とかだったよね。」


「う~ん、悪いことだってことだよね・・・泥棒とか?・・・暗殺者とか?」

「暗殺者はないわ!サポネだよ?」

「だよね、だよね!じゃあ、泥棒関係で決定じゃん。」


「じゃあ、次。俺たちのこと、いつ、どこまで、サポネに伝える?」

「今、いい関係を築いている途中なのに、

わざわざ波風を立てることはないと思うケド・・・」

「ナイショにしてたって言われても困るじゃん?まあ、タイミングを見て、かな?」

「うん、難しいよな・・・」


黙り込んで眺めていると、サポネの竿がガツンとしなった!

「にゃ~!」

俺たちは弾けるように立ち上がり、サポネの下へ走った。

「大きいぞ!」


川へ引きずり込まれようとするサポネ、

九郎が後ろから抱き着き、釣竿を握った。

「僕が竿を持っておくから、リールを巻いて!」

「ありがとにゃ!」


九郎がじわーっと釣竿を持ち上げ、

さっと降ろす時にサポネがリールを巻く。


それを繰り返すこと3分、ようやく魚が近づいてきた!

ナマズだ!大きい!

「よいしょっと!」

「大きい!50センチ以上あるぞ!」

「やったじゃ~ん!」


俺たち4人は、交互にハイタッチして勝利を分かち合った。

「ありがとにゃん!嬉しかったにゃん!」

サポネが満足したので、釣りは終了だ。

残念ながら、だれも料理が出来ないので、全部、リリースだ。


「そうそう、サポネも一応、拳銃練習しておくか?」

俺の言葉に反応して、九郎が拳銃をリアル化してくれた。


「・・・まえ、アゼットたちを殺した武器だよ。やってみるかい?」

「う、うん。」

「じゃあ、こう持って、よく狙って、引き金を絞るんだよ。」

「う、うん。」


カチッ。

「あれ?なんで?サポネ、もう一度。」

「にゃあ。」


カチッ。

「ちょっと貸してくれる?」

「こ、壊したかにゃ?」

サポネは半泣きになってしまった。あわわ!


バン!

俺がやってみたら、ちゃんと発射された!

九郎と花梨がやってみてもちゃんと発射した。


半泣きのサポネがもう一度試してみた。

カチッ。

「俺たち3人しか使えないのか・・・」

そう呟くとサポネが号泣した!あわわ!

どうやったら泣き止むんだ?


「サポはダメだから!仲間じゃないから使えないんだ!にゃ~!」

どうすればいい?


「三蔵が余計なことするからじゃん!

あ、その、サポネ、きっと大人しか使えないじゃん?」


「そ、そうだよ!危ないからね!もう少し大きくなったら使えるさ!

ほら、三蔵、お前が無茶を言ったからだぞ!

サポネに謝れ!」

花梨と九郎が激おこぷんぷん丸だ!


「いやいやいやいや。やってみないと分からなかっただろ?」

「「三蔵が悪い!!」」

「ええっ!」

「「サポネに謝れ!!」」


「・・・ごめんなさい。サポネは大事な仲間だよ。

どうか、機嫌なおしてくれないか?

みんなで甘いものでも食べようよ。

そうだ!コーラでも飲んでみるか?

シュワシュワだぞ~!」


「・・・甘いもの?・・・シュワシュワ?」

サポネが顔を上げてくれた!

涙は溜まっているけど、こぼれなくなったぞ!チャンスだ!


「おう。今日はケーキだ!イチゴショートだ。」

「ケーキ!食べるにゃ~!」

甘いものに釣られてご機嫌を直してくれた。ホントによかったよ。


・・・・・・・・・・・・・・・


翌日のお昼ごろ、雲一つない青空の下、小高い丘の上に着いた。

そこは辺りに高木がなくて、360度見晴らしがよかった。


「景色、いいねえ~。ここでお弁当、食べるじゃん!」

丘の上に1本だけ生えている高木の木陰にレジャーシートを敷いて、

賑やかにお弁当を食べた。


「さあ、もう出発しようか?」

みんな弁当を食べ終わるとすぐに提案したのだが、

帰って来たのは九郎のあくびだった。


それを見てクスっと花梨は笑った。

「ここでお昼寝するじゃん!」

サポネが耳とカギしっぽをピーンと立てて、

「お昼寝!お昼寝!お昼寝!」

嬉しそうに連呼した。


レジャーシートに横たわって目をつむり、

心地いいそよ風を受けていると急速に眠気が襲ってきた。


・・・・・・・・・・・・


かっぽかっぽと馬がのんびり歩く音と車輪の音が聞こえてきた。


少し手前で停止したらしく、足音は無くなったが、

4人とも起き上がって、音のなった方を見てみると、

1頭の馬が馬車を引いていて、御者は目つきの悪い若い男だった。


馬車の手前にゆったりと出てきたのは、若い3人の男女だった。

真ん中が、背が高く、筋骨隆々の20歳くらいの優しそうな戦士、

その右が、背は女子としては普通、黒く長い髪の20歳くらいの猫人の綺麗な女、

左が、背は男としては普通、同い年くらいのイケメン戦士だった。


「気持ちよさそうだな!」

デカイ男がにこやかに笑いながら話しかけてきた。

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