第12話 歓迎会
残ったのは猫人の少女だけ。
身長120センチくらい、ピンク色の短い髪、金色の大きな目で、
また、大きな猫耳、カギしっぽ、全てが可愛らしかった。
ただし、瘦せすぎているし、その恰好はボロボロの古着でさらに小汚かった。
その少女はあっという間に死んだ奴らをアワアワと見比べると、泣き始めた。
「ダメにゃ!サポ、もうダメにゃ~。」
「どうしたの?大丈夫だよ。僕たちはキミを傷付けたりしないよ。」
勝手に九郎が優しく話しかけた。
うん、九郎の好み、ドンピシャみたいだ。
「ダメにゃ!このパーティが全滅したら、
なんでサポだけ助かってるって責められるにゃ~。」
えぐっ、えぐっと泣き続ける少女。
「・・・えっと、誰かが守ってくれたり、逃げたり出来ないの?」
「家族はいにゃいから、誰も守ってくれにゃいにゃ~。
それに、逃げたのがバレたら、奴隷の首輪が絞まって殺されてしまうにゃ~、
にゃ~ん!」
細い金属の首輪が少女のか細い首を禍々しく飾っていた。
「可哀そうに・・・」
九郎は少女を心配そうに見つめながら、
時々、チラッ、チラッと俺と花梨に視線をくれた。
「はあぁ~。」
大きなため息をついてから、花梨が少女に近寄って、奴隷の首輪に触れた。
消えた!奴隷の首輪が!
「花梨!どうやったんだ?」
「うん?奴隷の首輪だけ、アイテムボックスに放り込んだじゃん。」
「ええっ!ホントにゃ、にゃい、首輪がにゃい!
でも、でも、これからどうしたら・・・」
今度はべそべそ泣き始めた少女を見て、九郎が決然と声を上げた。
「僕たちと一緒に行こう!」
その後、恐る恐る花梨を仰ぎ見る九郎。
「・・・いいよね?」
さっきの決然とした声が台無しだ!
「・・・いいんじゃない?でも、手を出したら殺すから!」
花梨の目が怖すぎて、九郎がビシッと上官に対するように敬礼した。
「イエス、ロリ!ノー、タッチ!」
死んだ奴らの財布を奪ってみたけど、
小銀貨(1枚千円)20枚しか入っていなかった。
貧乏人め!
小汚い防具を剥ぐのは嫌なので、武器だけ奪って、
そのまましばらく待ったけど、死体は消えなかった。
「魔物の死体は消えたから期待したんだけどな。
この死体、どうする?」
花梨が不愉快そうに顔を歪ませた。
「放っとくじゃん。
っていうか、この街がイヤ。この子もいるし、さっさと別の街に行くじゃん。」
「そうだな、もっと、もっと東へ行くか!」
「「了解!」」
そしてダンジョンの出口に向かいながら、
九郎が愛想笑いを浮かべて少女に話しかけた。
「僕たちはトーエンっていうパーティで、僕が九郎、コイツが三蔵、
で、この綺麗な女子が花梨で、みんな16歳だよ。」
花梨に媚びている~!
花梨の顔がほころんでいる~、チョロイっす~。
「君の名前は?」
「サポネ、12歳にゃ。
助けてくれて、奴隷の首輪、外してくれてありがとにゃん。」
にゃんって語尾、可愛いすぎるだろ!
「家族とか、大事な人・・・恋人はいるの?」
あほか、九郎(こいつ)は!
12歳で恋人なんているワケないだろ!
「親兄弟はいないにゃ。孤児院で育ったからにゃ。
にゃんで、バッドカンパニーの奴隷にされて、恋人とは別れたにゃん。」
「「「マジで~!!!」」」
12歳で恋人と別れたんだ・・・なんて早い!三蔵、ショック。
「も、も、もう処・・・痛い!」
動揺しながらトンでもないことを訊こうとした九郎の頭を
花梨が本気ではたいた。
「どうする?俺たちはず~っと東に行くつもりだけど、一緒に行くか?」
「いいにゃ?」
「いいけど、その・・・元恋人とか、いいのか?」
「いいにゃ!
アイツ、サポが二つ名をもらったから、
バッドカンパニーに売り飛ばしやがったにゃ!」
「「「うわぁ~」」」
ドン引きする3人を見て、サポネはニッコリと笑った。
「もう、これ以上悪くなりようがないにゃ!
にゃんで、ついて行くにゃん!」
この言葉に九郎の表情が輝いていた。
当然、そんな九郎を花梨はジト目で見ていた。
サポネの案内で、ウィンブラの街中を、
バッドカンパニーの一団に会わないように歩いた。
そして、東門に着いたころには日が暮れそうになっていたが、
気にせずそのまま城門をくぐって東へ向かった。
さっきまでルンルンで歩いていたサポネは流石に不安そうになった。
「・・・にゃあ、手ぶらで街の外で野宿はどうかと思うにゃん。」
最近、マッドウルフの群れが出るって話にゃ。」
九郎がニヤリと笑った。
「大丈夫。もうちょっとだけ歩いてくれたら、イイもの見せてあげるよ。」
「うわぁ、なんか幼女誘拐現・・・」
「黙れ!」
際どい冗談を言いきる前に九郎にマジ切れされた!
車が隠れる場所を見つけた頃には、日は半分暮れていた。
九郎がプラモのランクルを取り出し、大切そうに地面に置いた。
「何、食べようか?」
「歓迎会だから車の中で弁当はダメでしょ。
バーベキューがいいんじゃない?」
サポネは耳と尻尾をピーンとした。
「バーベキュー!」
「肉はこの前食べたばっかりだから、海鮮がメインでどうかな?」
「「OK~!!」」
ワクワクしているサポネを横目に、
プラモに置いた九郎の手に俺と花梨が手を重ね、それぞれ煩悩を解き放った。
「これはにゃんにゃんにゃ~!」
手のひらサイズのプラモから、全長5メートルへのランクルのリアル化に、
サポネは耳、カギしっぽはもちろん、体全体がピーンと伸ばしながら
可愛い驚きの声をあげた。
ランクルのバックドアを開けると・・・
伊勢エビ!殻付きカキ!殻付きホタテ!そして、マグロと鯛、サーモンの刺身!
さらに、カルビ、ロース、タンが少々!オ~、ゴージャス!
それを見たサポネはまた可愛い驚きの声をあげた。
「美味しそうにゃ~!いっぱいあるにゃ~!美味しそうにゃ~!」
俺と九郎がバーベキューの準備を始めると、
花梨が未練たらしくバーベキューを見続けているサポネを引っ張って、
車の陰に隠れた。
伊勢エビ、カキ、ホタテ、そして肉が焼けてきて良い匂いが広がってきた。
「にゃん!」
可愛らしい掛け声とともに現れたサポネは
俺たちとお揃いのジャージに着替えていた。
「ど、どうかにゃ?」
恥ずかしそうにクルリと回転したサポネ。
「「可愛い~!!」」
「ありがとにゃん・・・」
ますます恥ずかしそうになって、サポネは俯いてしまった。
「もう、いい匂いがしてるじゃん!さあ、乾杯して、食べよう!」
花梨がやってきて、コップにジュースを注いでいった。
サポネが飲んだことがないに違いない桃の100%ジュースだ。
「「「新しい仲間に、乾杯~!」」」
初めての乾杯なのか、サポネはドギマギしていていた。
「ありがとにゃん!」
サポネははにかみ笑いしながら、ぎこちなくコップをぶつけて、
桃ジュースを一口飲んで驚きの声をあげた。
「美味しいにゃ!甘くて、とろりとして、めちゃくちゃ美味しいにゃ!」
「ほらほら、伊勢エビ、牡蠣、ホタテ、刺身、肉、なんでも食べなよ。
サポネは少し太れば、もっともっと可愛くなるんだから!」
あらあら、花梨が甲斐甲斐しく世話を始めた!
それを九郎が羨ましそうに見ている!
俺と九郎が食べ始めた伊勢エビをサポネは真似して食べ始めた。
「にゃんにゃんにゃ~、この美味しさは!はふはふ!」
美味しそうに海鮮をひととおり食べ終わると、今度は肉に手を伸ばした。
「肉!柔らかくて最高にゃ!タレも甘辛くて最高にゃ!
こんな美味しいの、聞いたこともにゃいにゃ!」
口の中を肉でいっぱいにして、
もぐもぐしているサポネの幸せそうな顔、助けてホントよかったよ。
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