第10話 飲酒

オーガルザ王国の首都ウィンブラを高い城壁がぐるりを囲んでいた。

城門では、兵士が厳しく目を光らせていた。


ドキドキしながら、証明書がないって伝えてみたら、

俺も、九郎も花梨も軽装だったので、胡散臭そうに、

全身くまなく舐めるように見られた。


ドキドキしたけれど、小銀貨3枚(3000円)取られて、

城内に入ることが出来た。


城内は、石造りの建物がずらりと並んでいる大通りは大勢の人が歩いていて、

その向こうの方には、大きな宮殿が見えた。


イリス教国の首都ラテランの街は巡礼者、

商売人なんかが楽しそうに歩いていたが、

この街はなんとなく、殺伐としている感じだ。


ちなみに、ウィンブラの城壁の南側、

歩いて30分ほどの所にダンジョンの入り口があるから、

この街の南側は冒険者たちの街となっているそうだ。


なので、町の南側で一番高級そうなホテルに宿泊することになった。

なぜ、高級かというと、花梨が

「お風呂に入りたい!」

「三人でお酒を飲みたい!」

っていうから。


俺と九郎が異世界転移のお約束、ダンジョンに行こうって提案したら、

「汚い!危険!気持ち悪い(魔物)!暗い!

それに、アッシ、空中で戦えないじゃん!」

から行きたくないっていう花梨を納得させるための条件だ。


確かに、花梨の空を歩く能力が使えないのは痛いけど、

行きたいんだ、ダンジョンへ!

行ってみたいんだ、ダンジョンへ!


そして、この世界に来て初めてお風呂に入った!

これまでは花梨のクリーンの魔法で体を綺麗にしてもらっていたんだ。

この世界ではそれが普通で、商売人とかは臭い人はいなし、

俺たちもそれで問題はなかったんだけど・・・

シャンプー、リンスはもちろん、シャワーもなかったけど、

それでも、最高に気持ち良かった!


お風呂を上がったあとに、部屋飲みすることになった。

ちなみに、この世界では12歳くらいから飲酒可だ。


「ヤッホー!」

ご機嫌で現れた花梨はお風呂上りだから化粧がなくって、

いつもよりぐっと幼いカンジだった。


そして、俺と九郎の間に割り込んで座ったので、

シャンプーとかのいい匂いがしてクラクラした。


花梨がワクワクしながら、ワインボトルを開けて、グラスに注いでいく。

「「「かんぱ~い!」」」

「美味い!」

「「不味い!!」


ワインってもっとフルーティな味だと思っていたわ!

俺と九郎の舌はお子ちゃまだから合わなかったが、


花梨は気に入ったようで、たちまち飲み干してしまった。

「美味い!ねえ、三蔵、注いで!」

「はい!」

「美味い!九郎、注いで!」

「はい!」

花梨はご機嫌でクイックイッと飲み干していく。

コイツ、大丈夫かしらん?


「アンタたちも飲んで、飲んで!」

「「はい!!」」

結局、ボトル2本を飲み干してしまい、3人とも酔っ払い、

超ご機嫌になってしまった。


「ねえねえ、二人とも、恋バナしようよっ!」

「「カモン!」」

「ムフフ!三蔵は花梨のことが好きだったの?」

「キタ~!うん、今、思えば、兄妹みたいなモンかな~。」

「またまた~、強がっちゃって!」

酔っ払い花梨がウリウリと俺をつついてきた。


「でもでも、俺って毎日、楽しそうだろ?」

「う~ん、そうだね。

はっ、ダメよ、ダメ。アッシを好きになっちゃぁ、ダメ!九郎もね!」

花梨はにんまりしながら、俺と九郎の頬をツンツンした。


「「ならない、ならない!」」

「またまた~、アッシって可愛いでしょ?」

二人とも真剣に答えたのに、信じられなかったようで、

花梨はあざとい笑顔を二人に向けた。


「「可愛い!!」」

「ムフフ!性格もいいじゃん?」


「「まあね!!」」

「ムフフ!じゃあ、好きになっちゃうっしょ~!」


「「ならない、ならない!」」

「オカシイ、オカシイ!

三蔵なんて、いつもアッシの胸の谷間を、鼻を伸ばして覗いているじゃん!」

「ぐはっ!気づいていたのか!」

「視線が痛いから丸わかりだわ!突き刺さっているわ!

なのに、なんでよ、なんでよ!」


顔が良くって性格もいい、俺に至ってはその魅力的な胸に釘付けって認めたのに、

好きにならないことで花梨は怒りだした。

自分を好きになっちゃダメって言ってたのに、勝手なヤツ。


「年上好きだから。」「年下好きだから」

「「ワカる、ワカる~!」」

俺と九郎は互いを指さして、ゲラゲラ笑った。


「どういうこと、どういうこと?」

「三蔵は優しそうなお姉さんがいると、視線が釘付けになるよ。」

「そういう九郎は、元気な少女が大好きだよな!」

「三蔵はいいけど、九郎はヤバい!」


「大丈夫!この世界じゃあ、12歳から結婚出来るから!」

「「調査済だ!ヤバい!!」」


「犬人とか、猫人の少女ってさらに、さらに可愛いんだよ!

でも、大丈夫、法は犯さないから!イエス、ロリ!ノー、タッチ!」

九郎がゲラゲラ笑いながら、空のコップを高く掲げた。

コイツも超酔っぱらっている~!


「花梨はどうなのさ?」

呆れて首を振った花梨に尋ねると、体を乗り出して話し始めた。


「聞いちゃう、聞いちゃう?

アッシはねえ~、身長180センチ以上、細マッチョ、濃いいイケメン、

金持ちで、強くて、アッシに優しくって・・・」

「「ない、ない!!」」


「ある、ある!アッシは特別なお・ん・な、だからね。きっとどこかにいる!」

「「ない、ない!!」」

「ハモるな~!」


「「ぐほっ!!」」

花梨のエルボーが脇腹に突き刺さって、俺と九郎は悶絶した。


俺たちが座りなおすと花梨がきりっと表情を改めた!

「ところで、君たちに倫理を問う!」

なんだろう?


「当然、愛をささげるのは一人だけ、だよね?」

ギロリ!花梨の目が怖い!


「「異世界はハーレムに決まっている!!」」

だけど、俺と九郎はブレなかったよ!


花梨が怖くて、ハーレム作れるかよ!

とか思いながら、そーっと隣を見てみたら、花梨がエヘラとニヤついた!


「だよね、だよね~!アッシも異世界ハーレム、作ってみせる!」

「「作ってみせる!!」」

「「「かんぱ~い!」」」

その後も酔っ払いの下品な話が続いた・・・

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