第41話、『魔眼』持ちのハーフエルフ
「えっと……後ろの方はどなたですか?」
「幼馴染のルキ」
「こんにちわ、幼馴染のルキって言います」
次の日、ゼロが嬉しそうに現れた時、一瞬動きを止めアルフィナではなく、アルフィナの背後に居る『魔王』と言うような存在を目撃するのである。
明らかに敵意を見せている彼の姿に驚きつつ、ルキはゼロと言う人物を警戒しながら視線を向けている。
因みに触れさせないように、前に出ているようにも見えた。
「一人でも良かったんだが、どうしても一緒に行きたいとうるさくて……すまない」
「い、いえ、突然の事だからしょうがない!それに、僕が見たいってわがままを言ったんだから……」
「それならいいが……簡単にだけど、良い?」
「うん!」
「……じゃあ、君はこっちに来て」
アルフィナが長い棒を構えると同時に、ルキがゼロの隣に立ち、後ろに一歩か二歩下がった後、その場に座らせる。
彼女は周りに人がいない事、危険がない事を確認しながら、ゆっくり、そして鋭く、棒を振りかざす。
馴染みになっているアルフィナの剣の型を見たゼロはその姿を見ながら呆然と、目を輝かせるように食いついている。
「……」
ルキは目を輝かせているゼロの姿を見た後、再度アルフィナが振り下ろす剣に視線を向ける。
一歩、前に出て振り、剣を振る姿は昔より衰えているが、それでもアルフィナにとっては唯一の武器のようなモノだ。
少しだけ、持っている棒に魔力を流し込むようにしながら、振り下ろし、突く。
「あ……」
その時、ゼロが何かに気づいたかのように、小さな声を上げ、そして閉ざす。
何故声を上げたのか、ルキがゼロに声をかける。
「今、何か言おうとしたのか?」
「あ、いえ……あの、アルフィナさんって、魔力を持っているんですか?」
「ええ、少し」
「……そうなんですね」
興味ありのような言葉で言いかけるゼロの姿に、ルキはその時思わず首をかしげてしまう。
そして再度、アルフィナに視線を向けようとした時、何故か目の前に彼女の姿があった。
目の前にいるアルフィナの姿を見たルキはその場で硬直する。
「……ルキ?」
「う、あ……」
ルキの様子がおかしいアルフィナは首をかしげながら彼を見つめる。
何故、ルキが固まってしまったのか、それは彼女の姿は汗をかき、疲れた表情を見せている。
いつもより色っぽいような表情と姿を見てしまったルキには衝撃的な光景だったのだ。
顔面真っ赤に染まったルキの事など気にせず、アルフィナはゼロに目を向ける。
「……簡単なのだけど、どう?」
「すっごく……ものすごぉぉく、綺麗でした!すごい!アルフィナさんはきっと、隙のない剣士だったんですね!」
「……数年前の話だけど」
「それに、魔力を武器に流すって言うのは、普通なら出来ない芸当です!本当にすごい!」
「え……ゼロ、魔力を流してるってどうしてわかる?」
「ああ、それは簡単ですよ」
そのように言いながら、ゼロは両目が見えるように、前髪をかき上げる。
そして、アルフィナを見つめながら、笑顔でその両目を見せながら答えた。
「僕、『魔眼』持ちなんです。特に魔力の流れって言うのはわかるぐらい」
『魔眼』と言う言葉を聞いたルキは驚き、急いでアルフィナの前に立つ。
突然ルキが目の前に現れた事に驚いたゼロは目を見開き、声をかける。
「え、あ、あの、僕何かしました?」
「……確かに『魔眼』持ちだな……だから魔力の流れがわかったのか」
「ええ。あ、もしかしてルキさんも?」
「いや、俺は違う。ぶか……いや、知り合いが『魔眼』持ちで、そのような目をしていたからな」
「そうなんですね」
「だから警戒するんだ」
「え?」
「普通の『人間』は『魔眼』は所持出来ない」
この世界では、『魔眼』を持つものは人間ではないと言われている。
しかし、この世界は種族がたくさんいる。
アルフィナが暮らしていた聖王国のは人間たちが住む国だった。
だが、聖王国の外を離れてみれば、種族など他にもいる。
ゼロは人間の姿をしているように見えたのだが、どうやら違ったらしい。
ルキの言葉を聞いたゼロは笑いながら言った。
「確かに僕は普通の人間ではないですよ。父親が人間で、母親がエルフでしたから」
「……ハーフエルフか?」
「ええ、髪の毛で隠れているけど、耳も少し尖ってます。加えて僕の母はとても強い魔力の持ち主で、僕はそれを引き継いだって言う感じです」
「……それなら納得がいくな」
「ごめん、ゼロ」
警戒を解いたルキと、謝罪するアルフィナ。
二人の姿を見たゼロは大丈夫だという言葉を投げかけながら、二人に向かって話を続ける。
「気にしないでくださいお二人とも!確かに人間みたいな姿をしていて見分けがつかなかっただけで、警戒されるのも当たり前ですから」
「……本当にすまない。しかし、ハーフエルフか…確かに強い魔力だ」
「おかげで制御がうまく出来ないんですよー」
笑いながらそのように発言するゼロだったが、ルキとアルフィナそんなゼロの姿を見つめながら、静かに息を吐く。
「ゴホッ……」
ふと、息を飲んだ時に変なところに入ってしまったのか、思わず咳が出てしまったと同時、そのまま何回か咳が止まらなくなってしまった。
アルフィナは口を抑えながら、何度か咳をする。
「大丈夫か、アルフィナ?」
「ん……ゴホッ、ごめん。変なところに唾が入っただけだから……ゴホッ」
「それなら少し休みましょう。あちらの木陰が空いてます」
「アルフィナ」
ゼロとルキが声をかけながら、アルフィナを心配するかのように、ルキが彼女に手を伸ばし、肩に触れる。
「……」
ルキが肩に触れてくれた事で少し安堵な気持ちになりながらも、アルフィナは二人に誘導されながら、木陰に入り、腰を下ろすのだった。
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