第03話、変わり果ててしまった大切な幼馴染【魔術師サイド】


 道のりは本当に辛いモノだった。


 幼馴染であり、大切な友人であるアルフィナが『勇者』に選ばれたのだ。


 そして、聖王国に行く事になったと言われた時、自分の運命を呪った。


「あ、アルフィナ!私、頑張るから!頑張って一緒に行こう魔王退治!」

「え、でも……キーファは……」

「私、独学で魔術勉強する!結構魔力高いって言われたから!」

「……なら私も、頑張って剣術を磨く。そんで、魔術も磨いて、魔王を倒す。キーファと一緒に」

「うん!だから私の事、忘れないで!」

「友達の事、忘れるわけないじゃん」


 可愛らしい笑顔で答えるアルフィナの事は絶対に忘れない。

 アルフィナ――アルが大変なおもいをしないように、キーファは独学で魔術を学び、数年後には村きっての『魔術師』となった。

 そして、単体で聖王国に行き、見事に勇者一行に加わる事が出来た。


「キーファ!」


 再会した時のアルフィアの姿は忘れられない。

 アルフィナは『勇者アル』となり、そして『男』になっていた。


 あの時のアルフィナはもう居ない――けど、笑顔は変わらなかった。


 それから『聖女』と『聖騎士』が加わり、四人でパーティーを組み、魔王討伐に向かった。

 最後の最後では、うまくいかない事が色々とあったが。

 魔王は討伐され、これで平和が保たれる――はずだった。


 キーファは魔王討伐後、友人と離れるのは嫌だったのだが、もっと魔術を学びたいと思い隣国にある学園都市に足を踏み入れた。

 そこにはまだ知らない魔術がたくさんあり、魅了されながらも充実した毎日を送る事が出来た。

 因みに学園都市の臨時講師を務める事になり、忙しい毎日を送っていたので、身の回りを世話してくれる女中を雇う事にした。

 礼儀正しい、そして以前は冒険者をしていたらしい、メイドのプラムだ。


 充実した毎日を過ごし、ふとアルが気になったキーファは半年後、聖王国を訪れた。


「……何、これ?」


 キーファが聖王国で真実を知ったのは、魔王討伐から半年後の事だった。


「アルが、ざ、罪人……?」


 これは夢なのか、それとも現実なのか、キーファにはわからない。

 しかし、アルが、アルフィナが偽勇者として罪人になって投獄されているのは、どういう事なのだろうか?


「……キーファ様、お気を確かに」

「……アルが……アルフィナが……罪人って……そんなわけない。だって、私は見たもの……アルが魔王を討伐するところ……一緒に行って、それで……」

「キーファ様」

「嘘よ……嘘嘘嘘ッ!」


 どうして、アルが苦しまなくちゃいけないの?

 一体、何をしたと言うのだろうか?


 キーファは目を見開き、唇を噛みしめるようにしながら、自分を呪う。


(でも、一番許せないのが、のうのうと好きな事をして生きた、私だ)


 アルが、こんなことになっているなんて、全く気が付かなかったのだからと己を恨んだ。


 それから半年、死に物狂いで頑張った。

 まず、アルがどこに投獄されているのか調べ、事件の内容なども徹底的に調べた。


 勇者はアルではなく、聖騎士だった男――グリードが『勇者』となっており、王女であり『聖女』であるサラサの婚約者になっていたと言う話を耳にした。

 あの聖王国では、既にアルが勇者ではなく、『偽勇者』、『罪人』と言う形になっている。

 その情報を聞いたキーファは心臓を鷲掴みにされる勢いだった。


「アイツらが、アルフィナを連れて行っていたのに……ッ」

「キーファ様」


 拳を握りしめながら訴えている彼女の姿を、女中のプラムが近づき、隣に飲み物を置く。

 キーファをそれを一気に飲み干した後、プラムに目を向ける。


「プラム、私はこれからアルフィナ……いや、勇者アルを助けに行くから。プラムとの契約はこれでなしにしても良いかな?」

「それは私を解雇する、と言う事でしょうか?」

「うん……本当に申し訳ないんだけど……」


 これ以上何も関係ないプラムを巻き込むワケにはいかないと思い、キーファは彼女を解雇するために声をかける。

 しかし、考えていた言葉とは全く違う返答が帰ってきた。


「申し訳ございませんがキーファ様、それは肯定できません」


「え……」


 何故そのような発言するのか全く理解できないキーファは目を見開き、目の前の女性に視線を再度向けるが、彼女は相変わらずの無表情で、キリっとした表情をしている。

 今、彼女は何を言っただろうか?

 呆然としているキーファに対し、プラムは淡々と告げる。


「私、プラムはキーファ様の計画を全て耳に聞いております。そして、それを流す行動をするつもりはございません」

「え、な、なんで……」


「……私にとって、キーファ様とアル様はある意味、恩人なのですよ」


 いつものプラムは無表情で感情を表に出さない人物だった。

 しかし彼女はその時だけ、フッと笑みを零しながらキーファに笑いかけたのだった。


 それから数日後、プラムとキーファの二人は、アルが投獄されている場所を調べ、助けに行くのである。

 

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