第6話

 「パラレルワールドね〜」


 色々な私がいる別世界……。気になるな!

お金持ちの私もいいけれど、勉強のできる私っていうのも、気になるなぁ〜!


「楽しい想像をしているところ悪いが、生きる世界を選んだら、その選んだ世界で一生を終えるんだからな」


「パラレルワールドの世界を選んだら、さっきまでいた世界には戻れなくなるし、今までの関係性も変わる。今まで出会った者たちとの関係を、まっさらな状態にするか、今まで通り、積み重ねをしていくか……。よく考えるんだな」


 ……そっか、そうだよね。小説や漫画じゃないのだから、世界を好きに移動しまくることは、できないか。そう考えたら、どの世界が私にとって1番いいんだろう?


「ま、じっくり考えることだな。るなの納得のいく答えが出るのが大切だ。 ふあぁ〜」


 ……ニコラスが真面目に言ってくれているのは、ありがたいのだけれど。欠伸をしながら言わないでよ。猫だから眠いのかな?


「実際にどんな世界があるのか、分からないな。仮に、頭のいい私の世界の場合、今の私は頭がよくないけれど、そこに決めたら頭はよくなるの?」


「よくなる。と、いうよりもその世界にいた自分と、同化した知能になる。だから、自分の頭のいい世界に行けば、るなの頭もよくなるよ」


「そっか……。それは安心だね。せっかく頭のいい世界に行ったのに、元の頭が悪くて過ごしにくいのは、嫌だしね!」


 優秀な成績をとっている世界に行っても、知能が今の私と同じになっていたら、赤点とっちゃうし、その世界を選ぶ理由がないもんね。


「頭だけではなくて、身体もな。スポーツ選手の世界だったら、それ用の身体になるはずだ」


「そうなんだ」


 私がスポーツ選手……。考えられないし、なりたいとは思わないので、選択肢からはずそう。


「色々ありすぎて、迷う」


 選んだら戻ることができない。後悔なんかしたくもないし、どうしよう?


「パラレルワールドの世界もいいが、現実世界も忘れるなよ」


「それは、分かっているんだけれど……」


「?」


「パラレルワールドの世界のほうが、頭のいい私でお母さんに、色々言われたりしないのかなぁって……」


 普段からお母さんには、成績のことを言われてしまっている。赤点をとるとさらにうるさく言われてしまう。今回のように……


「そんなにお母さんに、なにか言われているのか?」


「まあね。でも、私も勉強をサボって、成績が落ちているからさ、お母さんが怒るのも小言を言うのも、仕方がないっていうか……」


「勉強はサボるなよ」


「だって、勉強は嫌いなんだもん!」


 どうしてお母さんも、学校の先生たちも、勉強しなさいって言ってくるんだろう。勉強は嫌いなのに!


「やっぱり、頭のいい私の世界がいいかも!」


 その世界だったら、お母さんに勉強のことを言われなくて、私も勉強ができて幸せなはず!







「ニコラス! 私、頭のいい世界に行くよ!」

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100年に1人と少女 エミリー @onemuna-usagi

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