第5話

「選ばれし者。俺たちがそう呼んでいるのは100年に1人現れる特別な子。今回は、るなが選ばれし者だ」


「特別って……。私は普通の人だよ? むしろ勉強が大っ嫌いってくらい」


 なんか、選ばれし者って聞くと特別な力とか優等生を思い浮かべるんだけれど。私にはそんな力はないし、成績も特別良くはない。最近のテストでは赤点を取ったし。


「俺たちがそう呼んでいるだけで特に本人に特別な力とかないぞ?」


「やっぱり?」


 特別な力……ないんだ。実はちょっとだけ期待していたのに。いや、物凄く期待をした。実は……っ! って感じで。


「100年に一度、この子だって頭にピンってくる子が生まれるんだ。ああ、いっつも現れるわけではないから、いなかったら次の100年ってね。最高で400年も開いた時もあったな」


「へぇ〜。……? ニコラスって、長生き?」


「るなよりも遥かに長い時を生きているな」


「やっぱりそうなんだ?」


 声だけを聞けば子供に聞こえるのに、口調と雰囲気が大人びているもんね。流石に500年は軽く生きているとは思わなかったけれど。


「前にも軽く言っていたが俺の、俺たちの役目はるなみたいに100年に1人選ばれた者の案内役と見守り役」


「見守り役って、ニコラスは私が生まれた時から、ずっと私を見ていたの?」


「るなが生まれた時は見に行ったが今までずっと見ている訳ではない」


 それは良かった。ずっと見守りという感じで見られていたら恥ずかしいもん!


「今までの選ばれた人も私と同じで普通の人だったの?」


「普通の者とそうじゃない者、両者がいたな。俺たちにはどちらも同じ人の子だが」


「ふーん……」


 普通じゃない人は、どんな人だったんだろうな? いや、私の前の選ばれた人たちがどうなったかも気になる。ニコラスにここに連れて来られたけれど、したことといえば美味しいものを飲んで食べたくらいだし。


「ニコラス。その選ばれし者である私は何かしなくちゃいけないの?」


 選ばれし者の役目とか? 難しいことはできないよ私は。テストで赤点取るくらいだからね!


「しなくてはならないことはない。選択肢が与えられるだけだし、選ぶ権利はるなにある」


「選択肢? 何の?」


 私は何を選ばなきゃならないんだろう。ニコラスは選ぶ権利は私にあるって言っているけれど……。

 気になってニコラスを見てみると、今までで一番真面目な顔をしていた。


「選ぶのは、生きていく世界線だ。さっきるなにパラレルワールドを知っているか聞いただろう。選ばれし者は自分の好きな世界線で生きることができるんだ」


「自分の好きな世界線……。私の好きな世界線?」


「ああ。世界は色々沢山あるからな。好きな世界で生きることができるんだよ、るなは。もちろん今の世界で生きていくこともできる」




 何だか、すごいことを言われている気がするなぁ。パラレルワールドって、もしかして本当にあるの? 好きな世界……? 私が賢い世界もあったりするのかな?

 ……ダメだ。急に聞くと何が何だか分からなくなっちゃう。


「まだ少し、説明が残っているからな。考えるのは後でも大丈夫だぞ」


「じゃ、そうする〜」





 頭がパンクしそうだけれど、説明はきちんと聞いておこう……。

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