第3話

 「落ち着いたみたいだし、ここなどの説明をしようか」


 不思議な空間にいて、落ち着いたかどうかは分からないが、説明はして欲しいな。急に説明もなく、ここに連れて来られたんだから。私が体調不良だと思って、早く休ませる為に急いで移動をしたんだろうけどさ。


「ここって何なの?ニコラス」


 相変わらず、私たちの周りをふわふわとしている、不思議な雲や霞が漂っている。吸い込んでしまっても特に違和感はないみたい。近づいてきた雲を掴もうと手を伸ばし、触れようとすればスルリと解けて霞になる。掴めそうだったのに、少しだけ残念に思う。


「ふふふ、手で掴もうとすればそうなるのだけどね……」


 そう言ってニコラスがどこからか、2本の棒を取り出してきた。そんな、まさか…。


「多分、るなが考えている通りだよ。一緒にやってみよう。難しくもないし、楽しいから」


 そう言ってニコラスは、2本のうちの1本を私に渡した。棒とふわふわの雲。お祭りなどで見かける、ふわふわで甘いあの…?


「まずは俺が手本を見せよう。見ててくれ」


 そう言ってニコラスは、漂ってきた雲に棒を刺した。それはまさに、お祭りなどで見かけるあのお菓子だ!……お菓子なの?


「ニコラス……って、食べてる!?」


 棒に刺したら綿飴に見えるけれど、元はその辺りを漂う雲だったし、食べられるかどうか分からないので、ニコラスに確認しようと彼を見てみれば、とっくに雲の綿飴を美味しそうに、ハムハムと食べていた。


「ニコラス!それって食べても大丈夫なの!?」


「美味しいよ。るなもやってごらん」


 そう言ってニコラスは、私に渡した棒を指?さして言った。楽しそうだし、やってみよう。ちょうど大きめの雲が近づいてきた。これにしようかな?美味しいって言っているし……。

 ニコラスがやっていた様に棒を漂う雲に刺してみる。どこからどう見ても、可愛らしい色のパステルカラーをした綿飴である。


「本当に食べても大丈夫なの?」


 やっぱり不安なので、確認をする。だってその辺りを漂っていたものだし……。


「食べても大丈夫だ。問題ないし、美味しい」


 今だにハムハムと食べながら、答えられた。まあ確かに、本当に美味しそうにニコラスは綿飴を食べているし、私も食べてみようかな。


 そっと一口、口の中に入れてみる。その途端まるで最初から食べていないかの様に、すぐに綿飴は口の中で溶けてしまった。

 普通に甘くて美味しい。どんな味かって?う〜ん……。いくつものフルーツの味が複雑に、美味しい様にバランスが取れている味!つまり、とても美味しいフルーティーなお味です。多分!味の感想を伝えるのって、意外と難しいんだね。それとも、私が下手なだけかもしれないな。


「るな、コレは刺すだけではなくてな……」


 そう言ってニコラスはまた、棒を2本どこからか取り出してまた1本を私に渡した。


「今度は霞の方をほら……」


 ニコラスはそう言って、今度は霞の部分に棒を近づけてクルクルと棒を回した。そうしたら私も目の前で見た事もある、霞が段々と綿飴になっていった。なるほど、雲は棒で刺して霞は棒にまとわり付かせるということか。


 綿飴って1回クルクルして作ってみたかったんだよね。待ちきれないから、早速やってみよう!


「えっと、霞に棒を近づけて……」


 クルクルと棒を動かす。すると綺麗に霞が棒にまとわり付き、綿飴になった。ヤバイ、めちゃくちゃ楽しい!


「うんうん、るなは綿飴を作るのが上手いな。美味しいから2つともペロリといけるだろ?」


「そりゃあもう、とっても美味しいからね!いけちゃうよ。」


 そうして、1人と1匹?で綿飴をもぐもぐ……する前に口の中で溶けているな。とりあえず、綿飴を2つそれぞれ食べ始める。




 あれ?ニコラスはここの説明をしてくれるんじゃなかったっけ?まあ良いか。美味しい綿飴を食べ終わってからで!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る