第11話
フブキの引き渡しが終わった少し後のジェイル邸にて
「フブキ!フブキはどこにいる!」
「バラド様⁉︎落ち着いて下さい!」
あるメイドが今までにないほど落ち着きのないバラドに困惑しながらも落ち着いて言葉をかける
「フブキはどこに居るんだと聞いているのだ!」
そんなことを言うとメイドは少し躊躇った後
「…フブキさんなら今頃新たな主人の元に行かれましたよ」
その一言にバラドはさらにヒートアップしてしまう
「ど、どういうことだ⁉︎なぜそんなことに⁉︎一体誰が決めたのだ!」
「決めたのはお父様ですよお兄様」
答えはメイドからではなく階段の上から声が聞こえて来る
「ユリカ!」
ユリカを見てバラドは少し落ち着きを取り戻す
「お前は知っているのか?」
「はい、と言っても大まかにしか把握していませんが」
「それでも構わない。知っていることを教えてくれ」
そしてユリカが教えてくれる
「お父様の執務室に入った時に偶然ある手紙が見えたのです。
そしてその手紙には『息子と一緒に侍女を学園に通わせたかったのですが叶いませんでした。ですがジェイル家からは2人も侍女が入学できたと聞きました。もしよければお二人のうちどちらかお一人譲って頂けないでしょうか。』と。」
それを聞いてバラドは話にならないと言うように
「そんな舐めたような取引を父上が受けるはずがないだろう?」
いつもあれだけ家名を気にしている父がそんな話に乗るわけがないとバラドは信じていない様子だ
「ですが現実はシラユキさんが引き取られています」
「それはそうだが…」
「そこから考えられるのは『そうと多くのお金を積まれた』あるいは『シラユキさんの存在が家に悪影響を与えると判断したか』のどちらかではないでしょうか」
その言葉を聞いた途端にバラドは何か思い出したように崩れ落ちてしまう
「その様子だとおそらく後者の方でしょうか。すいません簡単なものでいいので何か作っていただけますか」
そう言ってメイドと一緒に食堂に向かって行った
バラドは日頃から屋敷の中でもシラユキに『役立たず』など『無能』と言っていたことはもちろんバラドの父の耳にも入っていてそれを鵜呑みにしていたからこそ今回の取引に応じたのだ
『役立たず』で『無能』な従者を追い出しながらお金をもらうことができる
ジェイル家としては美味しい話でしかなかったのだ
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その後自分の部屋に戻ったバラドは誰にも聞こえないような声で1人呟く
「シラユキが従者として引き取られたのなら従者として『無能』なことを示せば相手が手放す可能性がある。今度は私個人で引き取れば良いのだ。そうすればまた手元に帰って来る。そうすれば…」
もうバラドの頭の中にはシラユキを『取り戻す』ことでいっぱいになっているのだった
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