第8話 ~感情・性格・心象~どう描くか
〇キャラクターの感情をどう描くか
小説という媒体が、アニメーションや映画。劇とは何が違うか。
それは、心象というものを直接的に言葉で表せることです。
もちろん、漫画でも映画でもそれを示す事は出来る。
然しながら小説はそれをより直接的に、言葉にすることができます。
文章そのものを、彼らの心にすることができるのです。
・小説における感情
人間の感情は、基本的に喜怒哀楽で表す事が出来ます。
ある現象に対して、人は怒ったり悲しく成ったりします。
しかし、そんな簡単なものではないですよね?それは皆さんが生きてきて実感しているでしょうし、古今東西の優れた芸術に描かれています。
我々が生きているうちに、もっとも抱く感情は”灰色”なんじゃないでしょうか?
私は、誰かに怒られた時自分の恥ずかしさを悔いると共に、その遠因となった事由に対して他責の思考を持ちます。そしてその他責をしている自分を更に恥じて、しかし抑えきれぬその怒りにぐちゃぐちゃになります。これは、怒でもなく哀でもないですね。
小説ではこういうような、外面からでは見えにくい心象を自由自在に描くことができるのです。
もっとも、すべて書きゃいいってもんでもないんですけどね。
・キャラ付けにおける感情
キャラクターを設定する上で、そのキャラの特徴となるのが感情の度合いです。
例えば、仲間の死という事象に対してそのキャラクターがどう思うのか、というような表題はよく引き合いに出されますね。
例えば、Aというキャラクターは人間らしくその原因を激しく憎悪すると共に仲間の死を悼みます。対してBは表面上では黙々と葬儀の準備を進めつつも心の奥では納得しきれていない、みたいな。
しかし、ここで勘違いしてはいけないのは、”人間の感情をキャラクターが超えてはいけない”という事です。以下の章で詳しく書きます。
・共感できないキャラクターができる原因
共感できないキャラクターが出来上がる原因。それはずばり、人間らしさの欠如です。小説は心情の描写あってこそです。それなのに、その要素を頓珍漢な事ばかり書いていたら当然魅力半減ですよ。
たとえばクール系。「まぁ、所詮こんなものか」「〇〇はこの世界の人には厳しいだろう」というようなキャラ。これが、例えば敵のキャラクターだったりすると逆に魅力になったりするのですが、主人公や自陣営のキャラクターにするのはお勧めしません。追放ざまぁやスローライフ系はこいつらばっかりですね。
達観しているには、それなりの理由が無ければ説得力がありません。例えば、老練な戦士とか、天才キャラとか。でも、そうゆう奴が主人公だと話作りが難しくなる場合もあります。
人間性や心の揺れ動きというのは、年と反比例です。歳をとると人間は落ち着いてゆきます(もちろん、一般的なキャラクターイメージの話)
ですので、若い主人公が歳不相応な感性を持っていたり、人間的ではない感情を持っていたりするとキャラクターがなんだか、人間から離れて他の生物の様に感じられてしまいます。これが”人間の感情をキャラクターが超えてはいけない”の意味です。
・感情を描くときのポイント
感情を描くとき、皆さまはどのように描いているでしょうか?文章は小説の醍醐味ですのでお手本というものはほんとはないんですが、ある程度の指針は示しておきましょう。
以下は現在この創作論と同時連載中の「ガチ騎士のエレオノーラ」の一場面です。
例)
「おぉー!!大きいぞ!あれは!」
伯爵と家臣たちはまるで喜劇でも見ているかのように手を叩いて面白がった。
俺は呼吸を整える。
イノシシは、正面から行ってはダメだ。あの分では、列車や車に撥ねられるのと大差ない。下手に手なんか出して見ろ。
四肢は千切れて宙を舞うだろう。
イノシシはまた方向転換してこちらへ向かってくる。
だいぶ興奮しているようで、逃げえる様子はない。
俺はそれに足がすくんだ。
そして自分の判断を後悔した。
本当は彼女のためなんかじゃない。俺のエゴのためだ。
変わりたい、という一心で俺はこんな無謀な提案に乗ってしまったんだ。
俺はエレオノーラの方を向く。そこに映った彼女の顔は、顔面蒼白で今にも泣きだしそうな表情をしていた。
俺はそれを見て、何をしていたんだと再び気を取り戻す。
いくらムカついても、女性を泣かせるなんてことがあってはならない。それがたとえ、エレオノーラだとしても。
ーーー
ここで使われている感情の描き方には幾つかパターンがありますね。
①直接的な言葉で描く。
「伯爵と家臣たちはまるで喜劇でも見ているかのように手を叩いて面白がった」
”面白がる”という言葉で彼らの”喜”を表しています。最も簡単な書き方です。
「自分の判断を後悔した。」
もそうです。安易な言い方だとして、できるだけ避けようとする方もいるみたいですが、婉曲表現が多くなりすぎても小説は成り立ちません。私の場合は最も登場頻度が多いと思います。
②外的な様子から心象を表す。
「俺はそれに足がすくんだ」
の様に本能的な体の動きから感情を連想させる方法です。ここでは”恐怖”を表しています。私は文章を書くときにリズムを意識しているので語呂が良いとバンバン使います。
③複雑な心境の羅列。
「本当は彼女のためなんかじゃない。俺のエゴのためだ。
変わりたい、という一心で俺はこんな無謀な提案に乗ってしまったんだ」
①で示した直接的な「喜怒哀楽」に収まらない場合は、この様に思っていることをそのまま書いたりします。
この場面では、後悔の中に自分自身を変えたいというプラスの心象の一方でそれを押しつけて、他人に負荷をかけているという申し訳なさも感じている。というごちゃごちゃな心境を描きました。
まぁ、わかりにくくなる場合もあるのでとにかく書けばいいってもんでもないんですけど。
④その他
比喩や古事を引いて、それだけでその時の心境を表したりすることもありますね。
「アウステルリッツのボナパルトのように」とか「蝶のように」のような。まぁ、これだけで読者に理解してもらうのはだいぶ難度が高いでしょう。
他の表現もだいたい、単一では表現しかねます。①の例だって、②の要素が入ってますからね。ここに示したのはあくまで一例。どうやって書いたらいいかわからないなら参照することをお勧めしますが、そこそこ書けるようになったら自分の表現を模索することをお勧めします。
以上
※しぶとくランキングに残ってます。応援ありがとうございます。
同時連載の「ガチ騎士のエレオノーラ」もよろしくお願いします。
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