音符が跳ねる時

アキノリ@pokkey11.1

第?章 逆転

恩返し

フォルティシモ・ラブ

俺の名前は須郷。

須郷燕(すごうつばめ)。

高校3年生から起こった強烈ないじめを受けてしまった俺は引き籠りになってしまった。

それからかれこれ3年は経過した。

高校に行けなくなってから3年が経ったのと同じだ。


何も先手を打たず。

ただ情けなく後退ばかりを繰り返し青春は過ぎ。

高校3年生から引き籠りになったので。

歳は20を過ぎ。

年齢は21歳になってしまった。


俺は何をしているのだろう。

死んだ方がマシだろう。

そう思える人生だ。

思いながら俺は今日も平日の午前11時に起き上がる。

それから荒れた部屋を見渡す。


積みあがったラノベ。

漫画、フィギュア。

壊れた部屋。

何もない世界。


ただひたすらに絶望だった。

だけどこんな俺だが昔は...いや。

彼女ももう俺の事なんか忘れているだろう。

日にあまり当たれない彼女。

俺はそれでも素敵なその女性に接触できていた時期があったのだ。


その彼女の名前は佐藤美月(さとうみつき)と言った。

当時、中学3年生。

つまり今...高校3年生だろう。

何所で何をしているか分からないけど。


「...まあ懐かしい記憶だな」


彼女は...難病を患っていた。

皮膚の難病だった。

そして彼女は...いじめを受けていた。

皮膚が荒れていたのもあって(ゾンビ、ゾンビ)とののしられる様に。

俺はその姿を見ながら何も出来ずただ茫然と見ていた。


何故なら確かに恐ろしいと思っていたから。

容姿があまりにも...その。

怖いと思っていた。

だけど彼女がずっと泣いている姿を見てからそうもいかなくなった。


いつしか俺は彼女を守る様な行動を取っていた。

彼女を守りたい。

その一心で亡くなっている母親から教えてもらった大切な心を持って周りに宣言する様に接していた。


「彼女はゾンビじゃない」


そう言いながらだ。

彼女は俺を見ながら笑顔をいつしか浮かべてくれるようになった。

何というか彼女は...ゾンビじゃなかった。

とても可愛らしい笑顔で俺に接してくれたのだ。


だけどその頃。

皮膚の難病が更に進行し彼女は治療の為にアメリカに行かざるを得ず。

俺と別れなければならなかった。

そして彼女は去り際に俺に対してこう言ってきた。


「須郷くん。私、この皮膚治して貴方の元に必ず帰るから」


そう言ってからそのまま彼女は治療の為にアメリカにご両親と渡った。

当時...中学3年生だった彼女。

そして俺は高校3年生だったのだが。


当然、アメリカとなると通信料の問題でなかなか電話などが難しい。

その為に俺は彼女とは永遠の別れになるだろう。

そう覚悟していた。


そして今に至る。

俺は何をしているのだろうか。

彼女は...幸せになっているだろうか。

そんな事を思いながら俺は窓から外を見る。


「...やれやれ。こうしていても仕方が無いな」


呟きながら俺は立ち上がる。

それから俺は家の中を趣味の代わりに掃除をする。

そして俺は昼食を作っていた。

その時だった。

インターフォンが鳴った。


「...?...新聞か?」


そんな事を呟きながら俺はドアを開ける。

そして目を擦った。

そこに何故か猛烈なかなりの美少女が立っていたのだ。

猛烈な、っていうのは。


栗毛色の丁度前髪あたりに壊れそうな髪留めを着けた長髪。

それから黒縁眼鏡を掛けており。

微笑みが絶えない様な白のキャンバスの肌。

少しだけ大きなあざの痕跡がある。

制服を着ている。

それもこの辺の高校の制服とかでは無く律儀なお嬢様の制服らしきものを...って待て。

誰だ?


「...あの。どちら様」

「帰りました。ただいま。須郷くん」

「...いきなりただいまって言われても...って...まさか...」

「私です。...佐藤美月です」

「...!!!!?」


俺は愕然としながら美月を見る。

唖然とかそういうのじゃない。

最早変わり過ぎて誰かも分からなかった。


すると彼女はいきなり前髪の髪留めを外した。

安物の髪留めだ。

俺がお小遣いで買ったものだ...が。

パラパラと散る髪の毛に俺は見惚れてからそのま赤面する。


「視力が日に当たって落ちてしまいました。だから眼鏡を掛ける様になりました。だけどそれでも私は変わらずこれを愛用しています。...髪留め。...有難う御座います」

「あざの痕跡は...その治療の跡って事か」

「そういう事です。少しだけ残ってしまいましたけど。...でも元気になりました。お陰様です」

「...そうか。...彼氏とか出来たのか?」

「何を言っているんですか。私は3年間は準備期間で人生の全てを貴方の為に捧げようと思った。貴方という婚約者以外、絶対に考えられないです」


「私、実はですね。治ってから皮膚が治ってから貴方を想って...色々と飛び回り学んだんです。それも...飛び級で卒業しました」と笑顔になる美月。

俺は顎が落ちた。

「ば、馬鹿な。そんな優秀な野郎が俺と、け、結婚するのか!?」と言う。

すると彼女は「そうです。で。経済学で学んだ事を活かして会社も作ったんです」とニコッとする。


「私、貴方を心から愛しています」

「...!?」

「だから...今度は私が救われた分、私が貴方を救います。必ずです。その為に。18歳になりました。婚約したいです。結婚して下さい」


彼女は満面の笑顔になった。

「今まで支えてくれて有難う」と言いながら、だ。

そして彼女は笑顔になって俺を見てくる。

それから俺をハグして来た。

俺はその彼女を受け止めながら真っ赤になる。


これは...俺と彼女の...奇跡の歩みの物語だ。


fin

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