第3話 遭難者紅羽と海水(?)

私は状況整理のため海とは逆の方にある


木々が多く生い茂ってかなり奥まで続いている深そうな森の入口に少し入ったところで


細い木の棒を見つけてくる。


拾った細い棒で砂浜に簡易的な絵を書き始めた。


まず最初に自分の状況を絵に起こしてみようとしていたのだ。


画力に自信はないけど簡単な図だったらかけるからね。


私は自分の位置を中央に書きその次に方角を書こうとする。


方角を書いておけばあとの移動も楽になると考えたためだ。


今いる砂浜から…えっと…北ってどっちだ?


ハッとわたしはここでとんでもないことに気づく。


コンパスもないし、夜になって星を頼ろうとしても異世界の星が現代と同じな訳が無い。


そう…今の状態は無人島に流れ着いた遭難者と同じであることに。


今更とても重要なことに気付いてしまった私だが


こんなことで諦めるほど固めた決意は緩くはなかった。


状況整理も大事だがとりあえず生きるために


飲み水と食料の確保をしなければならない。


私は前世の記憶を最大限引っ張り出し、なにか思い出さないか思考する。


その結果一つ役に立ちそうなことを思い出す。


TVで簡単にできる海水のろ過装置の作り方を見たことがあったため


これなら飲み水の確保はできると思ったが、


そもそもそれにはペットボトルが必須だったはずである。


ここは異世界でペットボトルがあるわけもないし


そもそも辺りの砂浜にゴミが全然落ちていないのだ。


利用できるものがほとんどない。


これ………どうしよう。


異世界に転生して早速飲み水と食料の確保という難題が現れてしまった。


現代なら使えそうなゴミとかが落ちてるものだが


異世界はやっぱり違うと言う事なんだろう…


私は深いため息とともに頭を抱える。


異世界と現代は全く違うもんなぁ〜


…違うなら海水も普通の水と変わらなかったりして


流石にないかと思いつつも淡い期待を込めて海水を手で少し飲んでみた。


本来ならその行動は余計に喉が乾いてしまうミスなのだが


今回…いやこの異世界においてはミスではなかったようである。


私は海水を飲んだはずなのに海水の塩っぽさがまるでなく、


その水はもはやスーパーにおいてある天然水そのものであった。


異世界と現代の違いにはとことん驚いてしまうが


これで一つの難題である飲み水の確保は無事に終了


……とはいかないよなぁ


確かにこれは飲めそうな水だが


この広大な海の中には異世界であっても当然生き物はいるわけなので…


今飲んだ水も決して安全と言える訳ではない。


そこら辺を加味するとこの件はまだまだ終わってはいなかった。


この件は一旦保留にするしかないだろうと思考を切り替え


次の問題である食料について考え始めるのであった…

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