第2話 海岸での目覚め

ゆったりと流れる波の向こうから太陽が昇っている。


水の上を羽が4つあるおかしな鳥が飛び、


太陽の光があたって輝く砂浜には


サソリのような尻尾が生えたちっちゃな蟹達が住処を出て活動を始めていた。


その砂浜には一人大の字に倒れて目を覚まさない少女がいる。


そんな少女が起きるきっかけはとても些細なことであった。


ゆったりした波が風に吹かれて少し勢いを強め、砂浜を侵食する。


高校の学生服を着ていた少女の指先に波によって押し出された水が少しだけ触れた。


その水はとても冷えていて、少しだけ触れたはずなのに


日本人だったら夏に必ず全身で浴びたであろう小学校のプール前に入るシャワーのような異様な冷たさを感じさせる。


その感覚は現代から転移してきたばかりの少女を起こす衝撃にはでかすぎたのだ。


「冷っっっっっった!!!!」


自分でも鼓膜が破れるかと思うくらいの大声を出してしまう。


私の声で活動を始めた蟹達も命の危機を察し急いで住処に戻っていった。


異様な冷たさで目を冷ました私は服についた砂を払いつつ立ち上がる。


服についた砂を払い終えた私を待っていたのは現代とは一線を画す美しい景色だった。


目の前に広がる海は透き通って、


4つ羽の鳥は水面すれすれを飛び獲物を探している。


太陽の光を反射し輝いている砂浜ではまたサソリのような蟹が横歩きで獲物を求めて闊歩していた。


この景色は現代では絶対にありえない景色で、


異世界に来たという事実を私に優しく教えてくれる。


「そっか…来たんだ…異世界に!」


私はぎこちない動きで斜めに両手を上げ


深呼吸し異世界の空気を全身を使って堪能した。


それは以前の私には二度とできなくなったことで


消毒の匂いしかしなかったあのときとは違い


海独特の匂いを感じる。


その長らく感じれなかった海の匂いと体を自由に動かせる感覚も


私が異世界に来た実感を助長する増強剤になった。


そんな感動に満ちている私を他所に太陽はどんどん光を強めながら昇っていく。


光を強めている太陽を見ながら私は決意を固める。


"今度の人生こそは充実した毎日を送ってやる!そしてやりたかった漁業を寿命で死ぬまでやってやろう!"と


その決意は絶対揺るがない硬い岩のようだった。


そして私は今の状況をまとめて


夢であった漁業開始の目標までの長い道しるべを建てていくのである…


一方その頃神様の方に動きがあった。


神様は転生前に私がいた神秘的な空間に一人の天使を呼び出している。


そして神様はその天使に何かを告げ、天使もそれに納得したようだ。


杖をかざし私を転生させた時のように呼び出した天使を光で包んでしまう。


一体何があったのだろうか...

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