第43話 愛(=?そこまで「愛」じゃない)犬とお散歩。
夏休みもほぼ中盤に差し掛かった頃。
セイコはこれでもか!といわんばかりにダラケていた。
まぁ、「超」が付くほどのインドア派なので、友達から誘われでもしない限り、部屋にこもりっきりでダラダラしているのだけど。
いつもの如く午前中に宿題を済ませ、ベッドに寝転がって最近買ってきたマンガを読んでいると、
「セイコ!あんたこの頃、毎・日・毎・日、一・日・中、エアコンかけちょろーが!電気代激し上がっちょーし、デブるぞ?っちゆーか、もうだいぶんデブっちょーの、分からんのか?身体壊すぞ!たまにはコロ(飼い犬で雑種の♂。その時の気まぐれで「犬が欲しい」と言ってしまったら、父親が保健所で殺処分待ちの仔犬をタダで貰ってきた。今は既に飽きてしまっていて、散歩もたまにしかしない)の散歩でも行ってこい!」
母親から激しく怒られた。
…はっ!この展開!もしかしてタカくん絡み?
数日前の出来事が頭をよぎり色めき立つものの、すぐに見破られ、
「そげんいっつもいっつもタカくん来るワケなかろーが。ばーか。遊びたいんなら自分で誘え。」
訳:そんなにいつもいつも
呆れられた。
予想は見事にハズレ。
おかげでこの上なく恥ずかしくなった。
孝満が絡んでないのなら何のメリットもない。よって、いよいよ行きたくないわけだが、毎日ダラケている自覚はものすごくある。行かないと行くまで怒られ続ける…のもあるけど、実際2~3kg肥えているので、運動はしとかないと。
必要に迫られ、無理矢理重い腰(胸もデカいがケツもデカい。よって、物理的にも重い)を上げるのだった。
外に出るとなると、着替える必要がある。
が、はたして、今のカッコはどうだろうか?
只今上半身には突起物(平常時なので格納状態。よって、まだ滑らかな曲面。しかし、淡い色なので、乳輪はハッキリと確認できる)を隠す性能を持ち合わせていないタンクトップが装着されている。
下半身は普段通りお見せできないタイプのパンツのみ、といった状況。
これではとてもじゃないが、外に出られない。否、出てもいいが通報を覚悟しないとなのである。
だから、まずは着替えから。
「あ~…面倒くせ~。暑いのにこの上から服やら着たくないのにな~。」
ぶつぶつ文句を言いながらタンクトップを脱いで、乳首透け対策にスポブラ(保持力及び突起物の隠ぺい力弱)装着。
谷間を隠すため、窮屈じゃない程度に首元の開いたTシャツを着て、さらにド派手なアロハシャツをジャケットの如く羽織る。前はとめない。
よし!これで不意に乳首勃起したとしても隠せるはず…よね?すれ違う人に気付かれることもないやろ。
余裕をぶちかましながら、下は膝まであるハーパンを穿く。
完成だ!とりあえず誰に会ってもおかしくないカッコになった。
んじゃ、行こっかね。
勝手口を出たところに掛けてあるリードを手に取ると、コロのところに向かう。
ヒマを持て余し、日陰で寝転がっていたコロはセイコに気付くと飛び起きて、大喜びで暴れまわる。
この興奮した状態で行動範囲に入ってしまうと太ももに飛びかり腰を振りだす。これをやられると爪が食い込んでヒジョーに痛いから、ギリ届かない位置にしゃがみ込んで手を伸ばし、散歩用のリードと繋いである鎖を繋ぎ替える。
頭を撫で、そちらに気を逸らせている間にリードを接続。
ここまでは大成功だったのだが、鎖を外していると後ろ足で立ち上がり、
ん?
太腿から脛にかけて流れ落ちる生暖かい感触が。
ナマ足にウレションをかけられていた。
皮膚の温度を奪いながら流れ落ちてゆく生暖かい液体の感触がなんとも気持ち悪い。
「あ~っ、もぉ!」
イラッときて、
ベシッ!
「ふぃ~ん!」
とりあえずコロの頭をぶっ叩く。
一旦家に戻って風呂で洗い落としてから鎖を外すと、いざ!散歩へ!!
いつもは父親と散歩に行っているコロ。
今日は相手がセイコなので気分が変わって嬉しいのだろう。いつも以上に勢いよく駆けていく。
まあまあ大きい犬だからかなり強い。
情け容赦なく車道に飛び出ようとするから、わたり終るまでは要注意。
横断歩道で立ち止り、リードを短く持ってクルマの列が切れるのを待つ。
待っている間も引っ張りまくるコロ。
ヨロヨロしながらも、車道に出ないようにする。
やっとクルマの列が途切れ、いつもの散歩コースである土手に出た。
川が広範囲見渡せる土手。
最初の水門に差し掛かると、そこには釣り人。
短いサオを持っていることからバス釣りだとわかる。
この地域では極めてありふれた光景。
今、タカくんもバス釣りしよるやか? 逢えんやか?
超絶期待しながら散歩を続行するのだった。
しばらく歩くといつも折り返す橋。
やっと折り返し地点やね。
回れ右すると、
ビンッ!
座り込んで戻ることを拒絶する。
「ぅわっ!」
リードを持った手にものすごい重み。
立ち止まったら、さらに先まで行こうと引っ張り始める。
え~…コロ、どこまで行くとよ?ここで折り返すっちゃないん?
そして僕は途方に暮れるby大澤誉志幸ぐらい途方に暮れながらも仕方なくついてゆくことに。
満足するまで散歩させてやらないと、家に帰りたがらないのだ。
北小学校の校区に突入してしばらく経つのに、いまだ全く帰る気配なし。
コロ、ま~だ帰ろうとせんな。一体どこまで行くんよ?今引き返しても帰るのキツいっちゆーのに。
完全に嫌気がさし、不貞腐れながらついていく。
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