第40話 タカくん登場!

 部屋でエアコンをガンガンに効かせ、新しく買った漫画を読みながら、スナック菓子をボリボリ食いながら、これでもか!といわんばかりにダラケ切っているところに、


 ガチャ!


 ノックも無しに部屋のドアが開けられ、


「あんた、たいがいにしちょきなさいよ!一日中クーラー当たりっ放しやないね!電気代勿体無いき外行け!庭木に水でも撒いてきなさい!はよ!」


 いきなり怒られた挙句、超絶強引な水撒き指令。

 これは偶然を装って孝満に逢わせ、恥ずかしい思いをさせるためなの作戦だけど、そんなことを知る術がないセイコは、


 何なん、お母さん?でったん強引やし。っちゆーか、いっつもはこげなことではらかかんのに、なんで今日に限ってはらかいちょん?意味わからんし。それに、なんでこげアチーのに水撒きやらせないかんの?

 訳:いつもはこんなことで怒らないのに、なんで今日に限って怒ってんの?水撒きなんかしなくちゃいけないの?


 目が点になりつつも、心の中で大ブーイング。

 突然降りかかった理不尽。

 どうしても納得いかないため、とりあえず、


「えー!なんでよ!こげアチーのに水撒きやらせんばい!」


 NOの意思を見せるが、


「『えー』じゃない!この頃あんたずっと昼間クーラーかけっぱなしでダラケちょろーが!電気代勿体無いし身体壊すぞ!女ん子がカラダ冷やすっち、どげなことかわかっちょろーが?それにお母さんが見てもすぐわかるぐらいデブっちょーぞ?お腹の肉、触ってみてん?」


 母親の方が一枚も二枚も上手だった。

 いかなる場合にも絶大な効果を発揮する魔法の言葉、「デブっちょーぞ」で追いつめられる。


 夏休みに入ってデブった自覚はかなりある。

 というか、あり過ぎる。

 おかげでガラスのハートをザックリと抉られた。


 もー…何なん?


 超絶面倒臭いけど粘っても怒られ続けるから、大した着替えもせず(只今タンクトップ&人さまにはお見せできないパンツだったため、お父さんの前だけ穿く=×、穿かされる=○ショーパンだけ身に付けた)不貞腐れながら庭に出ると、ホースを持って蛇口を捻る。

 そんなセイコを見て母親は、


 ぷっ!アイツ、やっぱしちゃんと着替えもせんで出ていきやがった。タカくんきたらゼッテービックリするぞ。


 笑いが止まらなくなる。

 これから起こるであろう「ハプニング」という名のセイコ孝満劇場を、外が良く見える特等席から観劇することにした。




 水撒きを始めて数分後、


 キ―――ッ。


 ブレーキ音と共に自転車が止まる。

 反射的にそちらに目を移すと、


「…へ?く、草杉くん?なんで?」


 まったく予期していなかった意識しまくり男子登場!

 驚きのあまり、ホースを持ったまま固まってしまった。

 数瞬の後、辛うじて再起動するものの、今のカッコはどうだ?

 頭の中でちょっと復習。


 超絶ラフな格好=自分的には人様にお見せしちゃいけない格好。


 そして極めつけは!


 ノーブラだった。


 ここで。


 セイコは極度の暑がりなので薄着を好む。特に夏場の休日ともなるとなおさらだ。部屋にいるときなんかブラの類は一切しない。それどころか下もお見せできないパン一がデフォルトだ。せいぜい父親の目に触れる場面で何か羽織って申し訳程度に隠す(そうしないと母親から注意される。本人的には別に見られても一切問題ない。何なら一緒に風呂に入ってもいいくらいお父さんは好き)だけ。


 といったことを頭に置きつつ。


 休日だから完全に油断しきっていた。

 今着ているのは淡い水色のタンクトップ(男物)。

 ということは。

 首元も腋も大解放なわけで。

 谷間も横乳も見ようとしなくても簡単に見えてしまう。

 しかも淡い色で水が跳ねているため、かなりの面積透けてしまっている。

 見た目はほぼ白人なのだけど、肌の色だけが日本人。よって、乳首などといった部分の色素は少しだけ濃かったりする。そのため、白人によくある境目がぼやけた乳輪ではなく、クッキリなのだ。


 セイコの姿を確認すると同時に


 へ?木藤さん、乳輪見えてない?


 気付く孝満。

 初めて目にした同級生のナマ?乳輪。そして圧倒的にデカい(乳自体も乳輪の直径も)。


 たまらなくセクシー!


 とか言っている場合じゃない。

 ムラムラ真っ盛りの男子中学生が、こんな絶景なんか見た日にゃ~目が逸らせなくなるのは当然で。

 結果どーゆーことが起こると…勃起である。

 即座に血液の流入が開始された海綿体。


 暮れ~なずむぅ町のぉ~♪…っち、それは海援隊!


 じゃなくて!


 下半身に装着してあるのはシマノの村田基氏もビックリのパッツンパッツンお子様半ズボン。なので、チン●は決して大きい方じゃないのだけど、急激に締め付けがキツくなり、腰が引けてくる。

 パンツに引っ張られて皮が剝け、カメが頭を出してしまい粘膜に刺激。

 強い力で締めつけられているため快感とはとても言い難い、というかフツーに痛い。

 ママチャリにまたがっているのにドロップハンドルのロードバイクに乗っているような姿勢になってしまっていた。

 モーレツにあからさまな変化だったため、気付かないわけがない。


 マジで?タカくん勃起しちょーやないん?


 下半身事情を推理するセイコ。

 下ネタには興味あるお年頃だから、そういった変化には特に敏感なのだ。

 推理はというと、勿論大正解である。


 起ったち●こ、ナマで見てみたいな❤


 といったセイコの願望は置いといて。


 大人しく控えめで恥ずかしがり屋な性格なもんで、色々と限界を突破してしまい、


「ぅわっ!」


 変な声を出すと共に、その場に座り込む。

 そして、よくないことに胸を隠すため、ホースを放り出してしまう。

 自由を得たホースは蛇の如くうねり、暴れ始める。

 吐き出された水がセイコを直撃するのは最早お約束。

 おかげで木端微塵にビショビショ。


 ドジッ娘炸裂!


 全身に水を被ってしまい、タンクトップは勿論のこと、ショーパンまで完全に透け透け。

 パンツのデザインや柄まで容易に確認できてしまう。

 余談だが、マ●毛も明るい金髪なので三角地帯はそこまで黒くならない。


 水を撒き散らしながらウネウネと暴れ回るホースはやがてセイコの顔を捉える。

 顔面をやられたセイコは、


「うわ!ちょ…。」


 泳げないため、予期せず顔に水がかかると盛大にパニクる。

 水から逃れるために脊髄反射的に立ち上がり、射程外へと退避。

 タンクトップをめくり上げ、グシグシと顔を拭いはじめる。

 おかげでもっと大変な光景に!

 下乳はモロ見え、というか、乳輪が1/3ほど見えてしまっている。

 数秒前のずぶ濡れ姿とは比べ物にならないくらい目のやり場に困る。

 孝満は目を逸らさなければならない場面なのに、凝視したまま固まってしまっていた。


 拭い終わるとハッとなり、


 ウチ、今っ!


 やらかしたことに気付く。

 顔や耳が一気に真っ赤になったかと思うと、徐々に涙目になっていく。


 下されたタンクトップの双丘の頂上付近には先ほどまでは存在しなかった「ポチッ」が出現していた。

 陥没していた部分が頭を出したのが原因だ。←34話、35話「ムカデ」参照

 孝満が勃起したことと、お見せできない姿を見られたことにより身体が勝手に反応してしまったらしい。


 先程まで感じなかったタンクトップとの摩擦で、


 ウソ?ウチ、乳首勃起してしまっちょーやん!中身出てきてしまっちょーし!


 モーレツに恥ずかしい事実に気付いてしまったセイコ。



 この状況を見逃す孝満ではない。


 セイコちゃんっち陥没乳頭やったんやね!だき、ノーブラでも滑らかやったんやん。


 乳首事情を正確に把握してしまっていた。


 互いにドキドキが止まらない。


 のは、いいとして。

 なんかもう…究極にいたたまれない。


「い、いや、ね…こ、これは…えっと…」


 なんか言おうとしているけどパニクっているため、言葉が出てこない。

 ジワリと涙を浮かべ、アワアワと狼狽え中。


「え…あ…」


 だいぶ…いや、モーレツに意識している女の子の涙を見てしまったことにより、ちょっとだけ我に返った孝満は、ずっと見ていたい気持ちを押し殺し、冷静なフリをしてあっち向く。

 そして、


「はよ着替えてきぃ?」

 訳:早く着替えておいで


 優しく促した。


 グスッ…


 鼻をすする音。

 ほぼ泣いてしまっていた。


「…う、うん。ちょ、ちょっと待っちょってね?」


 どうにか返事すると、暴れるホースを警戒しながら恐る恐る蛇口に近寄って水を止め、家に向かって走りだす。

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