第36話 お宅訪問。

 只今絶賛夏休み中。

 で、10日ほど経過したところ。


 外はモーレツに暑いため、外に出る気が全くしない。

 とゆーワケで、仕方なく(?)部屋でエアコンをガンガンに効かせ、マンガを読むことに専念していると、16時を回った頃。


「セイコ?」


 リビングの方から母親が呼ぶ声。


「なぁ~ん?」


 返事をすると、


「晩ご飯の買い物行くき、ついてきて。」


 だそうで。


 そーいえば、お菓子は今食べているこれがラスト。


 ならば、補充しとかなくては!


「は~い。」


 素直についていくことにした。

 今現在、人さまにはお見せできないどころか母親からも一言言われてしまいそうなカッコ(シャツ一パン一)。なので、外に出ても恥ずかしくない程度に着替える。


 準備が終わると助手席に乗り込みスーパーへ。

 到着すると駐車場のカート置き場から二段になったカートを引っぱり出し、母親についていく。


 先を歩く母親は「あーでもない。こーでもない。」と考えながら食材を選び中。

 その間見てないことをいいことに、少しでも気になる菓子を片っ端から放り込む。

 必要な食材を手にし、振り向いた母親は、


「なんね、これは?」


 カゴを見て呆れ果てる。

 そして、


「あんたね~…こげお菓子ばっか食べよったらホ・ン・ト、デブるばい?」

 訳:こんなにお菓子ばかり食べていたら


 痛いトコロを突かれた。

 実際この10日間で少しデブった自覚はあるのだが、そこは自分にすこぶる甘い。

 この量ならばもって数日なのに、


「いっぺんで全部食べるわけじゃないし。アヤ(妹)が一緒に食べても一週間以上はもつし!」


 まあまあのウソをついて、このハナシを有耶無耶にした。

 セイコママもそこのところは分かっているので頭が痛くなってくる。


 お菓子でいっぱいになったカゴにはもう何も入らない状態。このカゴは下の段に置き、新たに空っぽのカゴを上の段に置いた。


 ようやく晩ご飯の食材で満たされボチボチ終わりそうな雰囲気が漂いだした頃、母親の電話に着信。

 ポケットから電話を取り出し、


「なーん?」


 口調からして友達のようである。

 しばらく駄弁ったあと、


「なら、帰りそっち寄るき。んじゃ、またあとで。」


 通話が終了した。


 あ~。帰り、友達ん家に寄るんやね。


 大して深く考えることもなくレジを終わらせ、ハッチバックを開けてもらうと荷物を積み込み、走り出す…のだけど。


 あれ?この道…


 思いっきし見覚えのある風景。


 おばちゃん家に行くっちゃか? でも、電話しよるときの喋り方、お友達っぽかったしな。

 訳:おばちゃん家に行くのかな?


 微妙に不自然だったので母親の顔を見てみると…それに気付き、思い切りニヤケだす。

 そのことで、


 はっ!タカくん家!そーやん!タカくん家っち、おばちゃん家のすぐ近くなんやん!


 すべてを察した。

 ブチ上がるテンション。

 でも、気付かれたら恥ずかしいので、


「な~ん~?」


 誤魔化すために食ってかかるけど、作戦失敗。


「嬉かろ?ドキドキしよろ?」


 最初からバレていた。

 とりあえず、


「うるさい!」


 怒ったフリをした。


「そげん怒らんだっちゃよかろーもぉん。ただ、友達の家に野菜貰いに行くだけやんね。」

 訳:そんなに怒らなくてもいいじゃない


 大笑いしながらわざとらしい言い訳をする母親。


 くだらないやり取りをしている間に見覚えのある家に到着。

 クルマの音が聞きこえたのだろう。ピンポンを押す前に勝手口のドアが開いて孝満ママが出てくる。

 そして、


「よ!ホイ、これ。」


 差し出される夏野菜。


「おー!畑レンコン(オクラ)やん。よー出来ちょーやない!」

 訳:よく出来てるじゃない!


「そやろ?今年、なんか出来がいーっちゃん。」


「助かる。ウチんがたくさ、破れ鹿が出てきよーごたーっちゃんね。そーよ食われっしもーたき。ウチ、ナスとトマトならあるき、今度持ってきちゃーね。」

 訳:鹿が出てきているみたいでね。全部食われてしまったんだよね。


「いーね。楽しみしちょこ。」


 セイコはおしゃべりが途切れたタイミングで遠慮がちに会釈する。

 すると、


「セイコちゃん、いらっしゃい。タカ、部屋おるよ?行ってみてん。ノックはした方がいいきね。チン●いじりよるかもしれんき。」


 なんかもう…聞いてもないのに考えていたことを先回りして言われてしまう。しかもセンズ●中かも、な情報まで。●ンズリシーンは是非とも見てみたいのだけど、それはそれ。気になる男の子のお母さんからも気持ちを知られているのかと思うと、得も言われぬ恥ずかしさがある。

 真っ赤になってモジモジしていると、


「なんね?恥ずかしいんね?なら、呼んできちゃーね。」

 訳:呼んできてあげるね


 さらに恥ずかしい展開になってしまう。


「…あっ、ちょっ…」


 止めようとしたけど、恥ずかしさで声にならなくて、全然気づいてもらえなかった。

 そうしている間にも勝手口を開け、


「タカ~?」


 大声で呼ぶ孝満ママ。

 奥の部屋からは、


「うるさいね~…なんね?」


 お目当ての人の声。


「セイコちゃん来ちょーばい?」


「ふ~ん。」


 興味ない風を装った口調で返事したあと、


 パスッパスッパスッ…


 廊下を歩いてくるスリッパの音。

 いかにも今作った不機嫌な雰囲気を漂わせ、小汚いカッコで出てきてくれた。

 股間をチラ見するけど、勃起していた痕跡はない。どうやらコイてはいなかったようだ。


 目が合った瞬間、二人とも僅かだが明らかに表情が和らぐ。


 このリアクションに気付き、顔を見合わせニヤッとする母親×2。


「なんか好かん。あっち行こ?」


 生温い空気に耐えきれなくなった二人はこの場から離脱する。

 去り際。

 追い打ちをかけるかのごとく、


「するんやろ?先、帰っとくきね?」


「あんた、ゴム持っちょーんね?」


 冷やかされ、


「「うるさい!」」


 見事なまでに声が重なった。

 美味しいエサを与えられた母親たちは、家の中に消えていったタイミングで、


「あの子たち、息、ピッタシよね?」


「うん。これはもう疑いようがないよね!ホントにしだしたら面白いのにね。」


 大喜びしている。

 もうホント、どうしようもない親たちである。

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