第19話 セイコVS外人さん
休日。
いつもつるんでいるメンバーで隣町のイオンに繰り出した。
建物の真ん中を貫通するいちばん大きな通路を駄弁りながら歩いているときに、事件は起こる。
一人の外国人(白人♂)がキョロキョロしながら歩いていた。
迷ったのだ。
そんな時、視界の端に綺麗な金髪が入ってくる。
再度見てみると、間違いなく同族。
助かった!なんとかなった。
急いでいたため神に見えた。
途端に表情がパッと明るくなり、一直線に駆け寄る。
そして、
「Excuse me?」
何のためらいもなく話しかける。
駄弁りながら歩いていると、ハルが外国人を発見。
「あれ、外人さん。」
セイコを除く3人にいち早く報告。
遥花と朋美と葵は状況を把握するとともに、アイコンタクトでこの場から離れる準備。
直後、その外人さんは駆け寄ってきた。
同時にクモの子を散らすかの如く逃げていく。
鈍いセイコは、
「え?…え?」
突然の事態に対応できず、取り残されオロオロしだす。
そして、無事餌食。
超絶ネイティブな英語(外人さんなので当たり前。しかもオーストラリア系ではなくアメリカやイギリス系の流れるような英語なので、全く聞き取れない)で話しかけてくる。
優しい性格なのでどうにかしてあげたいのだけど、なんせ相手は本物の外国人。
恐怖の方が圧倒的に大きくて。
どうすることもできなくて。
結果、盛大にパニクる。
完全に顔から血の気が引いていた。
声がまともに出せない。
それでもなんとか、
「あ…あ…あのっ!ご、ご、ごめんなしゃい!う、ウチ…英語やらいっちょん喋りきらんもんやき!」
訳:全く喋れないから
意味不明のゼスチャーをしながら思いっきし日本語の、しかもコッテコテの方言で噛みまくりながら謝った。
今にも泣きだしそうなリアクションに、
え~…この子、喋れなかったんだ。
詰んだ外人さんは困り果てる。
話しかけるのは諦めた。
呆然と立ち尽くす外国人。
セイコ的にはこのままほったらかしにすることなんかできない。
少し考え、もうマジでどうしようもできないから、手招きのゼスチャーをしながら、
「…ちょー、一緒こっち来てくらしゃい。」
たまたま目についたインフォメーションのカウンターに連れて行くと、
「あ、あ、ああ、あの…う、ウチ、え、英語分からんもんやき、この人のコト、おお、お願いしましゅ!」
噛み噛みでオネイサンに丸投げした。
外国人が外国人を連れてきたように見えたオネイサンは、
え?どゆこと?
一瞬戸惑ったものの、半泣きのセイコを見るなり状況を把握。
無事、対応してくれたのだった。
どうにかピンチを切り抜ける事ができたセイコは、
え~…アイツら、どこ行ってしまったん?
辺りを見回し、逃げてしまった幼馴染たちを探す。
キョロキョロと不安そうに辺りを見渡していると、少し離れたところで隠れて見ていた幼馴染と友達は、ダッシュで戻ってきて、
「「「「あ~っはっはっは~!」」」」
「もうダメ!笑い死ぬ!」
「爆笑!」
「お前、美味し過ぎ!」
大声で大爆笑。
セイコは、
「お、お前ら!ホントにも~!たいがいせぇよ?マジで酷過ぎるぞ!」
大激怒である。
そんなリアクションにさらに大爆笑する。
セイコは、
「あ~ん、もぉ…怖かったぁ~…」
顔からは完全に血の気が引いてしまい、一目見て分かるくらい足がガクガクしている。
そしてついには涙をこぼし始め、
グス…すん…グス…
ベンチに座って大泣きである。
見た目がほぼ外国人のせいで、小さい頃から外に出るとこういったハプニングがホントよく起こる。
その度に幼馴染から置き去りにされ、全く同じ目に遭うのだ。
おかげで外国人は完全にトラウマと化していた。
幼馴染や友達は、
「セーシっちゃ、もぉ泣くなよ~。」
反省の色なんか全く見せることなく、いまだ大笑い中。
座って泣いているセイコをヨシヨシしながらちょっとだけ慰める。
そんな時。
王子様の登場である。
孝満含有率20%の北小軍団だ。
気付いたハルは、
「あ!あれ…タカたちやん。」
指をさす。
セイコを除く3人は「ニヤリ」と悪い笑み。
「声かけてみらん?」
「いーね!」
朋美に耳打ちし、かなりいらんサプライズを計画しだす。
何かを指さし、コソコソ話し合っている幼馴染たちに気付いたセイコはメガネをかけてそちらを見てしまい、
ヤバ!草杉くんたちやん!
大焦りである。
泣いている姿はなんとしてでも見られたくないのだが、なんせモロである。どうしようもなくモロなのである。
焦れば焦るほど涙は溢れ出る。
ウソ?止まらん!
絶体絶命。
目の辺りをグシグシやっているのだから、誰がどう見てもごまかしようがないほど泣いている。
男どもはこういう場面に出くわすと間違いなく心配するワケで。
展開を分かったうえで、
「おーい!こーまん!」
大声で呼ぶからホント質が悪い。
ふり返る孝満たち。
え?ちょ!うそ?なんで呼ぶん?
大慌てで拭うものの、いまだ止まってくれない涙。
泣いているセイコに気付き、心配になった孝満は駆け寄ってきて、
「あれ?木藤さん、何があったん?」
聞いてくるのだが、外人さんに話しかけられ怖すぎて泣いたとか恥ずかし過ぎて知られたくはないのである。
「へ?えっと…あの…。」
恥ずかしさが限界を一気に突破し、沈黙してしまうと、
「コイツね、さっき面白かったんよ?」
「そうそう。でったんウケたっちゃき。」
面白おかしく話そうとする気満々の遥花と朋美。
このまんまじゃ、さっきの恥ずかしい出来事、バラされてしまうやん!
涙は絶賛溢れ中。
嗚咽も治まってない。
でも、
コイツら止めんと!
泣き顔見られるのは諦めた。
「ちょ!エグ…もぉ!…グス…お前ら、また!」
「さっきね、セーシ、外人さんから…」
情け容赦なく続きを話しだす朋美は、
「もがっ!」
セイコから口をふさがれていた。
そして、
「もぉ…グス…言わんでよ…ね…恥ずかしい…グス…っちゃきね?」
お願いする。
でも。
遥花が、
「セーシ、外人から話しかけられてテンパって泣いたん。」
情け容赦なくバラす。
「もぉ…なんで言うと?」
涙目で不貞腐れた。
この場にいなくても光景が目に浮かんでしまう。
孝満は、
酷いなぁ。そーゆーコトしてやるなよ。
思いつつも、ヘタレなので言えるわけもなく。
心の中でそっと同情するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます