第16話 厳重注意
こんなアホ孝満なのだが、セクハラをしない女子が一人だけいる。←南小出身者という意味。北小の女子はそもそも孝満に寄ってこない。
セイコだ。
いちばん被害に遭いそうなキャラなのに、これまで一度も遭っていない。というのも、早い段階で「母親の幼馴染の子供」で、なおかつ「幼馴染」という情報を得ているため、親の耳に入ることを恐れて実行に移せないし、お気に入りだからできないのだ。
帰り道。
「セイコっち草杉から何もされんよね?」
「それ、思った。」
「なんで?」
「…う~ん、なんでやろーね。た、た、多分、お母さんがあっち方お母さんとお友達やき、気まずいんかもね。」
「そっかー…羨ましい。ホント、アイツ嫌!」
「草杉、あげんヤラシイヤツとか思わんやったやぁ~。フツー、女の子にオナニ●ネタとかフッてくる?しかも、でったんシチケーっちゃき。まぁ、しよーっちゃけどね。だけんっちゆっておしえるワケないやん、ねー?」
訳:超しつこいんだから。だからといって
「ホントっちゃねー。ウチやら乳揉ましてとか、先っぽ入れさせてとか言われたばい。」
「ウチ、実際胸揉まれそうになったし。あと、挟んでとかゆってきて、チャック開けてチン●マジで出そうとしよったきね。」
「ウチ、机になんかかってお喋りしよったら腰振られたばい。」
訳:机に寄りかかって
「マジで?ホント、サイテーやね。」
「ウチ、でったん幻滅したき!」
「もうアイツ、顔見るのもイヤ。」
被害者はみんな大激怒である。
この中の何人かは視界に入るのさえ苦痛だと言っている。
孝満に対してのイライラでエキサイトしまくる友達。
まだ一学期も始まってそんなに経ってないというのに、取り返しのつかないところまで行ってしまっているようだ。
この会話を横で聞いていたセイコは、
よしよし。順調にライバル減っていきよる。もっとヤラシイコトしてこのまんま0になれ!
強く願うのだった。
が、しかし。
こうしている間にもセイコは孝満から順調に優しくされ続けていたため、好き好き指数が日に日にアップしている。そしてついには「お気に入り」から「恋愛感情」へと進化する(気付いてはいない)ワケで。
こうなってくると考え方も大きく変化する。
他の女の子にヤラシイコトすんの、でったんイヤやな。
独占欲が強くなり、嫉妬するようになってきたのだ。
フルボッコにされた数日後。
「いーじゃないですか、奥さ~ん。」
懲りずにヤラシイ顔しながらおしゃべり中の女の子の腰に手を掛け、カックンカックンし始める。
「止めろ!クソこーまん!どっかいけ!」
激怒して、蹴りを入れる。
そのまま生活指導の先生にチクられ、
「コラ!草杉!あれだけ言われたのに、まだ分からんのか!」
その場で足を払われてコキ倒され、馬乗りに。
先生はグーパンで顔面を殴り始める。
数分後、血まみれ孝満が完成した。
まったく学習しないアホさと、しつこさ。たびたびやられるフルボッコ。
他の女子から嫌われるのは嬉しいけど、身体に触るのは絶対嫌!ボコボコにされるのも見てられんし。
限界が近付いていた。
そしてさらに数日後の休み時間。
「たいがいせぇよ?お前、ホントぶち殺すぞ!」
教室内に友達の怒声が響き渡る。
続いて蹴り。
原因は勿論孝満。
懲りずにいらんことをして怒られたのだ。
その許し難い光景に、
また!草杉くんは、もぉ~!
ついに限界を迎える。
ヘラヘラと笑いながら、
「あ~、ごめんごめん。間違って腰振ってしもーた。」
全く悪い素振りも見せず、意味わからん言い訳をしている孝満に歩み寄り、真正面に立つと、
「く、く、草杉くん?お、女の子にそげなえっちぃことしたら、ダメよ?」
強い口調で注意。
その威力は絶大で。
お気に入りの女の子から初めて本気で怒られた孝満は、
ヤバい!セイコちゃんから嫌われたらオレ…。
かつてない罪悪感&危機感に見舞われる。
これがきっかけとなり、孝満は一切のセクハラを止めた。
しばらくすると被害者女子達は、
「あれ?この頃あのバカ何もしてこんくなったよね?」
気付き始める。
そして、この現場を目撃していた女子から、
「そーいやあんとき、セイコから怒られよったね。」
「セイコ、すごいね!」
「ありがとう!」
「あのバカ、あれから何もせんくなったよ!」
礼を言われてしまった。
セイコはというと。
ウチ、自分のためにゆっただけなんやけどな。でも、他の女の子にえっちぃことすんのはイヤやきね。
なんてことを考えているのだが、他の女の子のためにもなったので、結果オーライだ。
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