第15話 嫌われる理由

 孝満のルックスはアイドルといっても通用するくらいによろしい。


 が。


 絶望的に圧倒的に致命的にモテない。


 というのも、女子に対して非常に調子に乗りやすい性格で、なおかつしつこくてウザい。

 そんな困ったキャラなので、余所のクラスにも秒で噂が浸透し、一年が終わる頃には同学年に恋愛対象として考える女子はいなくなっていた。


 といったことを踏まえつつ。


 ボチボチゴールデンウィークの足音も聞こえてきだす4月下旬。

 余所の小学校出身者とも仲よくなり始めると同時に孝満の暴走が始まった。


 休み時間、


「あ!そうそう。昨日見たXVIDEO、でったんスゲかったっちゃき!出し入れしよったら泡立ってきて、チ●ポ白くなっていくんよね!そこだけで3回抜いたばい。」

 訳:超凄かったんだよ


 突如始まるエロい話。

 力説すると、スマホを出して検索し、


「ほら!これ!」


 自慢げに再生しだす。

 音量も下げずに再生するものだから、アヘ声が教室中に響き渡る。

 大ウケし、画面に釘付けになる男友達。

 彼らにはモーレツにウケているし、大盛り上がりもしている。

 だが、ここには女子もいる。その中には性的なネタを苦手とする者がかなりいるワケで。

 それまではいい雰囲気でお喋りも盛り上がっていたのだが、思ってもみなかった展開に戸惑い始める。

 孝満には空気を読む能力というものが微塵も備わっちゃいない。そしてさらに痛いことに、苦笑されているのをウケているのと盛大に勘違いするトコロが大いにある。

 男子に一通り見せ終ると、今度は女子達にまで見せ始めた。

 顔を背ける数名の女子。

 嫌悪感が限界に達し、この場から離脱する。

 そして、


「草杉っちサイテーなんよ?」


「ホント。ウチ、あのオトコ、スケベやきでったん好かん。」


「あげな人間やったっちゃね?でったん幻滅。」


「犯されるかもしれんよ。」


「気を付けちょったがいーよ。」


 広めて回ったせいで、関わりの無かった女子からも自動的に嫌われることになってしまう。

 この時点ではまだ許容範囲だった女子も、繰り返されることにより次第に嫌気がさし、徐々に離れていく。




 これだけでもかなり致命的なのに、


「ねえねえ。週に何回ぐらいマ●ズリコクん?」


 デリカシーのない質問をどストレートにしてくる。

 当然、


「はぁ?そげなことせんよ?」


 否定されるのだが、


「いやいやいや。オレがしよるのにせんわけがないやん。ちなみにオレ、毎日4~5回コクし、今日も帰ってコクばい。」


 謎理論を振りかざし、聞かれてもないセンズ●事情を披露。


「オレもおしえたっちゃき、おしえてよ?正直になろうや。」

 訳:おしえたんだから


 それと引き換えにしつこく食い下がり、聞き出そうとする。

 最終的には、


「もう!どっかいけクソバカ!二度と喋りかけてくんな!」


 本気で怒らせてしまう。




 こうして女子から順調に嫌われていく孝満を心配した治朗は、


「タカちゃん?エロい話は男のばっかの時だけにしとかんと。彼女できんくなるばい?」


 注意するのだけど、聞くのはその時だけ。


 あまりにもこんなことが続くものだから、ついに一部の耐えかねた女子から生徒指導の先生にチクられてしまう。

 帰りのホームルームが終わると同時に生徒指導の先生(かなりヨゴレ風味)が教室に入ってきて、


「おい!草杉。今から相談室来い。話がある。」


 厳しい口調で呼び出し。


 なんやろ?


 わけも分からずついていくと、相談室に入った途端、無言でボッコボコにされた。

 顔は腫れ、鼻や口から血を流す孝満。

 先生は殴り終ると、


「拭いちょけ!」


 ティッシュの箱を顔面目がけて力いっぱい投げつけた。

 鼻に詰めていると、


「お前やねぇんたい!汚した床やらを拭いちょけっち言いよったい!」

 訳:お前じゃないんだよ!拭けって言ってんだよ


 さらに怒られた。

 拭き終ると今度は長時間の説教。家に帰り着くと21時を回っていた。




 翌日。

 チクった女子の一人が孝満の変わり果てた姿に気付く。

 その瞬間、


「ぷ!」


 思い切り吹き出した。

 すぐに一緒にチクリに行った友達に報告し、


「アイツ、でったんボコられちょーっちゃき!ウケる~。ざまーみさらせ。いい気味じゃ!」

 訳:超ボコられてんの


「効果あったね。」


「脳挫傷で死ねばよかったんに。」


「あっこまでしてもらえるんなら、また生徒指導の先生に頼もうね。」


「なんかチクるの、楽しみになってきたね。」


「うん。」


 みんなでその姿を遠目に見ながら大喜びしていた。

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