第10話 憂鬱再び!

 週明け(入学式は金曜日だった)。


 今日は一発目、ロングホームルームで自己紹介がある。


 あ~あ…好かんな。


 既に憂鬱さ満点だ。

 ブルーになりつつ「一言」を考えていると、その間にも趣味が被った子が増えてくる。


 同じことゆったら真似しよるみたいで嫌やな。どげんしよ。


 悩んでいる間に、


「はい。じゃ~、次の人。」


 自分の順番が回ってきてしまう。

 立ち上がった途端、これまでの人以上に注目された。

 結局言うことが何も決まらないまま順番が回ってきたこともあり、いよいよテンパってしまう。


 あ~ん、もぉ…そげん見らんでよ。

 訳:そんなに見ないでよ


 マジで泣きそうになってきた。

 恐る恐る教壇に上がる。

 突き刺さる視線が怖い。


 深呼吸し、落ち着いたつもりで発した言葉は見事、


「…き、き、木藤シェイコれしゅ。み、南小出身れしゅ。」


 噛み噛みだった。

 発音と滑舌の悪さも炸裂した。


 詰まった~っ!噛んだーっ!もぉ~、グダグダや~ん。


 やらかしたことでますます舞い上がる。

 おどおどしていたら、痛いほどに視線が突き刺さる。

 圧倒的可愛さ、見た目がほぼ外国人、というのは勿論あるのだけれど、今突き刺さっているのは胸。

 立つことによって激しく主張する。


 あ~ん、また胸見られよぉし…。


 恥ずかし過ぎて自然と猫背になってくる。

 縮こまりつつ、


「………しゅ、趣味は…」


 考えるものの、趣味と呼べるものはマンガを読むことぐらいしかない。

 既に自己紹介が終わったクラスメイトとも複数人被っている。


 こんなこと、わざわざ言わなくても良いのでは?

 真似したらつまらない子と思われるのでは?


 しょうもないことを気にし出したら、いよいよ何も無くなった。


「…えっ…と…」


 焦りまくるとさらに赤面し、変な汗が流れてきだす。

 永遠のように長く感じる時間。

 アタマの中は完全に真っ白。

 泣きそうだ。

 ついには諦めて、


「…しゅ、趣味はありましぇん…。」


 強引に打ち切り席に戻った。

 何も言えなかった挙句、無駄に引っ張ってしまったため、かえって悪目立ちする結果となってしまった。


 もうホント、消えてしまいたい…。


 縮こまって赤面しているうちに、またしても後ろの彼の自己紹介は聞き逃した。


 もぉ~~~っ!ホント、何なん?


 無様な性格を恨む。

 休み時間になると、友達から


「噛み噛みやったな!」


「炸裂したな!」


「いつもどーりやったね。」


 イジラレまくり、思いっきり笑われたので、


「う、うるさい!そげん笑わんだっちゃよかろーもん!」

 訳:そんなに笑わなくてもいいでしょ


 とりあえず怒ったフリをした。

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