第9話 実は幼馴染
全ての予定が終了し、帰ることに。
グラウンドで母親のクルマを見つけて乗り込むと、
「あんた、タカくんと同じクラスやんね!」
草杉家のやり取りと全く同じことが始まった。
いきなり嬉しそうに話しかけてくる母親。
突然話をフラれ、何のことかわからなかったから、
「え?誰、それ?」
聞き返すと、
「ほら、あんたの後ろの席に背が高いでカッコイイ、アイドルげな顔しちょー男ん子、おったろーが。気付かんやった?」
訳:アイドルみたいな顔している男の子いたでしょ
とのことで。
思ってもみないところからカッコイー彼に関する情報が転がり込んできた。
なるほど!タカくん、ね。
何も苦労することなく下の名前が分かってしまった!
それにしても、情報の提供者がまさかの母親だとは。
ワクワクドキドキ復活だ。
嬉し過ぎてニヤけそうになる。
あまりにも絶妙で、都合よすぎるタイミングだったから、
「い、いや、き、気付かんけど!」
かなり食い気味な反応になってしまった。
ヤベ!ウチ、なんちゅーリアクションしよん?
モーレツな勢いで恥ずかしさが込み上げてくる。
母親は劇的な反応をした挙句、大赤面してしまった娘を目の当たりにして、
あ…コイツ、ゼッテー気付いちょーな。しかもかなり意識しちょーやんか!
訳:気付いてるな。しかも、かなり意識してるじゃない
ソッコー見破る。
テンション高めの母親の話は尚も続行中。
名前の一部が分かったことで欲が出る。できればフルネームが知りたいので、どこかにヒントはないものかと注意しながら聞いていると、
ん?タカくん?
どうにも引っかかる。
なんか聞いたことのある名前やね?たしか小さい頃…。
幼稚園前後の記憶が甦ってきた。
そういえば、さっき!
教室の後ろで小さい頃から知っている、家によく来るおばちゃんと母親が仲よさげにお喋りしていたことを思い出す。
たしか、そのおばちゃんが「タカくん」のお母さんのはずだ。
あのおばちゃん!苗字、何やったっけ?お母さん、なんち呼びよった?
訳:なんて呼んでた
なかなかいいところに目を付けたけど、生憎母親は孝満ママのことをあだ名でしか呼ばない。
恥ずかしくて聞けないので結局はわからずじまい。
でも、
あのおばちゃん家に行ったとき、男の子おったもんね。そうそう。なんかそげなふうに呼ばれよった。
訳:そんなふうに呼ばれてた
遊びに行っていた時のことを思い出すことができた。
ん?ということは?
幼馴染なのである。
マジでか!
気付いてしまい、テンションが上がる。
なかなかの大収穫だ。
意識するとかなり身近に感じ出す。いい傾向だ。嬉しい。
家に帰っても母親のテンションは高いまま。
「写真あるばい。見しちゃっか?」
訳:見せてあげようか
なんと!
写真まであるようだ。
当然の如く、
「うん!見る!!」
またまた食い気味に反応(本人は全く気付いちゃいない)する娘に気付かれないよう苦笑しつつ、アルバムを引っぱり出してくる母親。
見てみると確かに男の子と一緒に写った写真が何枚もある。しかもちゃんと面影がある。
ここまでバッチシ写っちょーんに全然覚えてないとか…。あん時っち、いっつも恥ずかしかったんよね。だき、顔見きらんやったっちゃんね。
訳:写ってるのに
恥ずかしがり屋の性格に心底ガッカリした。
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