第8話 偽異世界人
あれから、魅了薬使いが逮捕されてから、
私は、ブラウン侯爵令嬢マリアベル様のレディースメイドになってしまったのです。
お話苦手なのです!
「あら、話しているじゃない」
ドレスも似合わないのです!
「まあ、私の見立てが・・・さっきから、心の声がただ漏れよ」
「アン先輩、リボン可愛い」
「ヒィ、そんなことないのです」
マリアベル様と黒髪族のアリサさんに持ち上げられているのです。
黒髪族であるアリサさんの素性は内緒なのです。旦那様とお嬢様しか知らないのです。
必然的に、私の名が広まったのです。
「「「まあ、この方が忠義メイド、アン様!」」」
「可愛い」
「アン様、お嬢様を助けて頂き有難うございました」
王都の別邸の使用人達はクビになり。新たに、領地から使用人が来たのです。
お嬢様は、基本的に、現地の人を雇用するのです。
だから、王都孤児院出身の私でも雇ってくれたのです。
それが、今回裏目に出たのです。忠誠心が浅かったのです。
そして、旦那様がいらっしゃったのです。
「うむ。報告で聞いた。アンがいなければ、アリサ殿が来る前に亡くなっていたかもしれない。感謝に堪えない。有難う」
「ヒィ、旦那様、頭を下げないで下さい!」
そして、アリサさんは・・・マリアベル様から、衝撃的なお話をされたのです。
「アリサさん。本当にありがとう。感謝をしているわ。だから、はっきり言うは、貴女のお母様の故郷は、異世界なのよ。行く方法はないわ」
「・・・薄々感じていました。まだ、この世界になじめない。ずっと、お母様と一緒に、隠れていたからかもしれません」
「あ、アリサさん。私、転生者の知り合いがいるのです」
「まあ、アン、王都出身よね。お休みをあげるから、会ってきなさい」
「はいなのです。アリサさんとお出かけなのです!」
☆☆☆王都市場
転生者の知り合いがいるのです。孤児院の後輩なのです。ここは、芸人のスペースなのです。
日々、異世界語りをして、皆様から、お金を頂いている子がいるのです。名前は、マリーなのです。
稼いだお金で、皆でご飯を食べるのです。とても、感心な子なのです。
「皆に、お土産なのです!蒸したイモなのです!」
「「「有難う」」」
「アン姉ちゃん。お久しぶり。ドレス、似合っている。出世したの?」
「えへん!レディースメイドになったのです・・・ならされたのです。荷が重すぎなのです。グスン」
「「「「可愛い!」」」
「お姫様みたい」
「マリーちゃん。実は、異世界のお話をして欲しいのです。こちらは、アリサさんで、異世界に興味あるのです。お友達になって欲しいのです」
コク「・・・・・」
「わかった。黒髪のお姉さん?まあ、黒髪で、自分が転生者だと、勘違いする人が多いさ。本物の転生者であるあたいが、本物の異世界のお話をしてやるさ」
アワワワワ~~~~
「失礼なことを言ったら、ダメなのです!お話をするのです」
・・・アリサさんは、本物の黒髪族なのです。
アリサさんが気に入れば良いのです。
「あたいは、異世界では、お貴族様の子だった。ゴーレムの護衛騎士がいたんだい」
「えー、すごいのです!」
「異世界の王都は、人口100万人で、空に浮かんでいたんだい!」
「え、都市が、すごいのです!」
「一日、三食で、毎日、ホロホロ鳥を食べていたんだい!」
「ホロホロ鳥を・・・異世界は、お、恐ろしいのです!」
スゴイ話なのです。
「・・・・・・」
アリサは終始黙っていた。
子供が、転生者を騙って、小遣いを稼ぐのは、罪がないだろうと思う。
この少女、ポジションは大事にする。
アンの顔を立てた。
「・・・なるほど。マリーちゃん」
「フフフフ、黒髪の姉ちゃん。相談に乗るよ」
「おう、ここか?偽異世界人がいるところは?」
その時、アカデミーのローブを羽織った5人ほどの一団が現れた。
マリーに日本語で話しかける。
「何だい。お兄さんたち・・」
「(小さい娘、おはよう。答える。異世界にドラゴン、いくらいる?)」
「え、なんだい。あたいは、転生者だい!」
「アハハハハハ、これは、ドルンの異世界語だ。答えられないな」
「偽者だ。異世界人詐称罪で、連れて行くぞ!」
「馬鹿だな。異世界人は、城や教会で保護される。こんな所にウロウロしているハズがない」
「「「ギャハハハハハハハ」」」
ザワザワザワ~~~~
周りの芸人達は弁護する。
「おい、俺たちは、偽者だって、とっくに、知っているよ」
「子供のやることだ。勘弁してやれよ」
「そうだよ。結構、楽しいよ」
「うるさい。嘘つきは、泥棒の始まりだ!お前らも連行するぞ!」
「やめるのです!マリーちゃんは、本物の転生者なのです!」
「ほお、なら、女神教会に何故、保護を求めない」
「お前も同罪だ。そのドレス、どこの家門だ!」
「私は・・・・」
ダメなのです。お嬢様に迷惑がかかるのです。
「アリサさん!お嬢様に、私は辞めると伝えるのです!お屋敷に行くのです」
「・・・分かった」
アリサは、躊躇なく、そのまま去った。
・・・これでいいのです。アリサさんとお嬢様に迷惑を掛けてはいけないのです。
「私が責任を取るのです!マリーちゃんたちは、孤児院に行くのです!シスター様にお話して、保護を求めるのです!」
「「「姉ちゃん!」」」
「あ、あたいが、勝手に、異世界人と・・」
【待て!異議あり!】
その時、メイド服、そのままに、ゴーグルとフェイスガートを装着したアリサが現れた。
手には木銃を持っている。銃剣格闘で使う道具である。別人になっているつもりである。
「何だ。さっきのメイド・・・」
「黒髪なだけのメイドじゃないか・・」
アリサは、ドルンに日本語で話しかける。
「(おい、お前、ヒドイ、日本語だ。日本の人口を答えてみろ)」
「・・・・(話す。ゆるく)」
今度は、ゆっくり話す。
「(馬鹿は。些細なことにこだわり。大本を見失う。お前は、アカデミーで何を学んでいた)」
「え、聞き取れない・・・適当に話しているだけじゃないか?」
カチン!と来たが、珍しくこの少女は我慢し、
マリーに、大陸共通語で問うた。
「マリーちゃんは、何歳?」
「・・あたいは、10歳・・・」
「王国法では、12歳の見習いになる歳までは、殺人、強盗等凶悪犯罪以外は、罪に問われないハズだが・・・」
「いいから、やっちまえ!」
「「「おう!」」」
「魔道、対異世界武器戦術!ウォーターウォール!」
水の壁が、アカデミーの学生たちの前に現れる。
周りの飲食店のエールや、水が、たちまちなくなる。
「ああ、やめてくれよ。魔道で集めるなよ」
「フフフ、アハハハ、いいか。その武器は、鉄礫だ。鉄礫は、水は通りにくい。空気の800倍の密度があるからだ!」
「どうだ。お前は、鉄礫が効かない我らの魔道に、絶望して、死ぬのだ!」
「そうだ。返し技で、ウォータカーターが飛ぶぞ。おっと、今、崩したら、隙が出来るからやらないがな」
「・・・・・馬鹿なの?」
アリサは、そのまま、早足で、水の壁に突っ込んだ。
右足を大きく踏み込み。勢いを貯め。飛び込む。手に、持っていた木銃を突き出す。
銃剣道の刺突技である。
「「「何!」」」
「グワ」
アカデミーの一人に、木の銃口が、みぞおちに刺さる。本物の銃剣ではないが、激痛が走る。
返して、銃床で、横にいる魔道師の顔にたたきつける。
あっという間に、5人は、酩酊した。
(・・・・「「「何!」」」じゃねえよ)
とアリサは、心の中で、つぶやいた。
悪魔と呼ばれた勇者~不良貴族を狩る少女 山田 勝 @victory_yamada
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