第5話 外道の金儲け方法


 メリガー男爵が、ユニーグス女伯爵に、多額の賠償金を払った報は、すぐに、広まった。

 何故なら、コレットは、受け取りを保留し、供託所に預け。公開されたからだ。


 故に、詐欺師が訪れた。




 ☆☆☆ユニーグス領主館



「ユニーグス伯爵様、孤児院の運営、見事です。孤児達に、新品の服と靴をプレゼントするなんて、このリッチモンド子爵、感動しました。

 なので、金貨50枚寄付をさせて下さい」



「まあ、有難うございます。助かりますわ。毎年、女神様の祝日に、プレゼントしていますの。お母様の方針ですわ。

 孤児の子たちが、外の子に会う時、寄付をされた古着だったら、もしかしたら、元の持ち主の子に出会ったら、さぞかし、辛いからと、・・・・」



 ・・・あ~、うっせい。孤児院の話になると、目を輝かせる。

 早く、話をさせろや。小娘!メリガー男爵から大金せしめたのを知っているんだ!



「・・・・お茶です」


「まあ、アリサちゃん。有難う」


 よし、話が途切れた。



「実は、ここだけの話です。実は、私、聖女様の財団法人の調査員でして、ええ、格付け☆3つになれば、基金から、補助金が出ます」


「まあ、何ですって!」


「この領の孤児院は、☆3つに相応しいです。推薦書を書きます」


「有難うございます!」


「ええ、但し、信用金として、金貨一万枚、必要になります。ご用意頂ければ、私が納めます」


「ございませんわ。そんなお金・・」


「メリガー男爵からは?債権証でも大丈夫ですよ」


「あれは、供託しておりますのよ。返そうとすると、『もっと、用意します!』とか言いますから、三ヶ月待って、改心を願っていますの」




 ・・・何だと、この女、使えない。お人好しだ。


「困りましたな。では、こうしましょう。屋敷を抵当に入れれば、それくらい用意出来ますよね。対丈夫です。☆3つになれば、毎年金貨千枚、支給されますよ。10年で元が取れます。どちらが得か」


「ええ、でも」



 この話を、黒髪のメイドは、ジィと聞いていた。





 ☆☆☆領内、商業ギルド前



「期待外れでしたな。子爵殿」

「おう、全くだな。金もらったら、やっぱり、落ちましたになるのにな。運が良いのか?

 あ、あの黒髪は、屋敷のメイドだったな」


 アリサが、二人の前を横切る。不審者のようだ。


 ソソクサ~ソソクサ~


 キョロキョロ~


 アリサが、手に何かを持って、挙動不審で急いで商業ギルドに入ろうとしていた。


「キャ」


 と転び。


 布に包んだ何かが、手からこぼれ落ちた。


 ポトン!


 子爵は、目を疑う。


((金!))


「おい、追うぞ。商業ギルドに入った・・・」




 ・・・・・




「アリサ様、ゴールドのお預けですね」

「鑑定する・・」

「分かりました」


「確かに、ゴールド!9キロでございます」


「うん」



 物陰から、こっそり、見ていた子爵は、混乱する。


(あの、女伯爵・・・金を持っているのか?あの金塊、金貨一万枚分の価値があるではないか?いや、そのようには見えなかった)




 ・・・



「君、話を聞きたい。金貨を上げよう。ほら」



 プイ!


 ・・・やはりだ。金貨の袋に見向きもしない。

 しかし、こういった輩は、自慢をしたがるものだ。



「すごいね。君、金は選ばれた人のところしか行かないのだよ」


「うん。金のなる木がある・・・」


「ほお、それは、ずごい。その若さで金の神に愛されているな」


「フフフ」



 ・・・私は、話を聞いた。メイドのくせにこうのたまう。


「私だけの鉱山があるの。金が落ちている状態」


「もしかして、鏖(みなごろし)が出た森か?」



「ううん。違う。あそこは怖くていけない。あ、ソロソロ時間だわ。じゃあ」



 ・・・ペラペラと話す小娘だ。さすがに、場所を教えてくれないか。



 確実に、儲かる話があるのなら、乗らない手はない。


 ワシは、女伯爵に、申し出た。


「特別に、領地開発をさせて頂きます」


「ヒィ、何故?昨日のお話はお断りしますわ」


「開発資金は、全て、ワシが出すから、鉱山開発をしたい。もし、金鉱山が見つかったら、そちらには、金の産出量の3パーセント渡そう。何もしないで、3パーセントだぞ!断る理由はあるまい!」


「ええ、でも」


「分かった。王都の貴族院に契約書を登録しよう!」



 かくして、ユニーグス領の開発が進む。


 領民は雇われ、平野を、金鉱山探し。

 森へ出る調査団に、地元の冒険者が護衛で雇われた。



「ヒィ、すごい、税収だわ。どうしましょう。宿屋も予約が1年間・・・空きがない状態だわ!好景気よ!」



 ・・・あのメイドの後をつけさせているが、中々、森に行かない。

 もう、行かないのか?いや、あの純度、相当な鉱脈だ。

 あるに、違いない。違いないが・・・


「子爵、魔石の鉱床がいくつか。これも、地元民が、使っている程度で、開発しても割にあわないと、鑑定士が」


「ええい。絶対にあるはずだ!今まで貯めた金を全て、なげうってでも・・・もう、後戻りが出来なのだぞ!」





 ☆☆☆ユニーグス領、レンタル工房『ユニーグス鉱山』



 ドワーフ工房の一角に、アリサが借りた工房があった。『ユニーグス鉱山』と自らつけて、看板まで立てた。



「ドワーフのおじさん。今日で最後だね。今まで有難うございました」



「おう、もっといてもいいんだぜ。しかし、すごい、格好だな。それは何のために?」


「うん。鉛作業をするから、全身に防護衣、顔に粉塵マスク。ゴーグル、鉛を吸わないためだ」


「関心だな。後で見せてくれ」


「作業が終わったら」


「おう、何をしているか、分からないが、お互い秘術は見せない決まりだ。しかし、魔法は全く使わないのだな。あ、失敬」


 ドワーフは、魔力を感じないアリサの工房に興味を持たなかった。

 願ったり叶ったりだ。



「そう・・じゃ」




 ボオオオオオオオーーーーーーーー



 アリサのやっているのは、灰吹法、鉛を使い。粗銅から、金や銀を抽出する方法である。

 鉛を使うので、早死する者が多数いた。


 鉛が皮膚や肺に到達しないように、細心の注意が必要である。


 もし、この世界に広まったら、確実に、奴隷にやらせるだろう。


 だから、アリサは、誰にも話さない。


 外道の金儲けの方法だと思う。


 電解精錬が誕生するまでは、秘密事項だ。


 まだ、アリサは、その設備は召喚する方法を知らない。




 あの、見せ金も、ここで作ったものである。


 アリサは、「ユニーグス鉱山」の名前で借りた。


 苦しいが、嘘は言っていないと言っても良いだろう。




 しかし、アリサは、心配する。好景気になり。税収が上がり。

 あのお嬢様は、お金の魔力に狂わないだろうか?


 初めて会ったときの事を思い出す。




 ☆回想


 ☆森の中


『まあ、貴女、そんなに、ボロボロになって、お腹空いて、動けないのね』


『死ぬから、こうして、餓死をしようと寝ている。かまうな』


『ここは、私の領地よ。腹ペコで死ぬなんて、許しませんわ!屋敷にいらっしゃい。メイドとして、雇って差し上げますわ!』


「かまうと・・・」


 ガシ!


『うわ。抱きつくな・・』


『ここは、鏖が出るから、危険だわ。さあ、何かやりたいことあるでしょう。言ってみなさい』


『・・・・お母様の国に行きたい。日本という国』


『じゃあ、こうしましょう!その国が見つかるまで、屋敷にいなさい。時間のあるとき、探していいから!こんな小さい子が、グスン』


『・・・うん』



 ・・・・・



 ☆☆☆ユニーグス伯爵屋敷



「アリサちゃん!食べてみて、ブリオッシュにブリーベリーを入れてみたの!」

「・・・頂きます」


「皆で、食べましょう!おやつは一日、2回にするわよ!」



 リッチモンド子爵が破産するまで、ユニーグス領で好景気が続いた。


「フフフ、税収が上がったから、王国債を買うわ。その利子で、孤児院の費用を賄う基金を作れるわ。皆にも還元できるわ」



 ・・・このお嬢様は変わらない。



「アリサちゃん。王都に行ってみない?イケメンと会えるかもよ。行儀見習いよ。但し、恋の報告は必ずすること。建物をジロジロみないこと。ここと違って、知らない人に挨拶したり、ついて行かないこと。だけど、道に迷ったら、衛兵隊に聞くのよ」



「・・・はい」


 乙女趣味は、変われよ。とアリサは思った。






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