第3話 軍事チート能力者と獣人族②


 ☆☆☆ノース王国、軍営


 アクア領まで進軍した王国軍、ノース王は、アクア伯爵と謁見した。


「申し訳ございません。聖女様を殺され、その日のうちに、制圧されました。「じゅう」というものは厄介です」


「アクア殿、何も言うな。卿は自分の信じる道を行け」


「籠城戦を行う。日干し作戦だ」


「分かりました。否の返事を持ち帰らせてもらいます」


「・・・帰るのか?」


 信じる道とは妻子のいる避難所まで行く猶予をもたせたが、この男は残るのか?


「御意にございます。まだ、孤児が残っていましたから、孤児だけでも解放するように交渉します」


「年金と子息には爵位を約束しようぞ」


 ああ、厄介だな。鏖も、王国内をウロウロしているのに、今度は、凶悪な転移者か。



 都市アクアを王国軍1万2千人が包囲した。




 ☆☆☆



「何故?否だって!」

「そんな。馬鹿な。こちらには、銃があるんだよ」


「まあ、いい。撃って出るよ。僕が先頭に出る」


「いえ、太一様は、後方で指揮を執って下さい。太一様がいなくなれば、武器弾薬の補給がままなりません」


「でも、敵軍を見ないと、指揮も執れないじゃない!!」


 山猫軍が結成されてから、僕は銃や弾の補充係。

 納得いかないよ。


「城壁までですぞ。敵軍は一キロ先の平原に陣を引いています」


「大丈夫だって、ここからじゃ、弓どころか。銃だって、とどかない!」


 太一は、城壁の上で、王国軍を見た。


「何だ。展開しているみたいじゃない」


「大丈夫です。太一様、各国に散らばった山猫たちに、この地に結集するように、呼びかけています。万の軍勢が集まって、じゅうを配れば、この王国を手中に出来ます」



 シュン!


 光を引く光速の何かが、太一の上を通過した。曳光弾だ。


「あれ、蛍じゃない。もしかして、妖精?」


 次の瞬間、


 ガキン!


 太一の胸当てに、64式小銃7.62ミリ弾が、貫通した。


「ウゲ、グホン!」


 バタン!


 太一は倒れ、そのまま起きて来なかった。


「「「タイチ様!」」」


 ポワ~~~


「ヒィ、じゅうが消えて行くぞ!」

「このじゅうは、幽体だったのか?!」


 彼らは、自分らの他に、銃を召喚できる者がいるとは、想像も出来なかった。

 更に、銃を近接戦闘で使っていた。

 更に、遠くからの狙撃は、、想定外であった。




 ☆☆☆




 城壁、500メートル先の平原で、一人の少女が、伏せ撃ちの姿勢で銃を構えていた。

 銃口から、かすかに白い煙が立つ。


 弾倉には、曳光弾と、通常弾が、交互に入っている。

 閃光弾で撃ち。次に修正する目的である。


「・・・・・終わった」


 彼女は偽装網を片付け。そのまま草丈に隠れ。城壁の100メートル前まで進出し。


 空間から、自衛隊のLAMを出す。使い捨ての対戦車兵器だ。

 伏せ撃ちの状態で、城門を撃つ。


 シュ~~~~


 ドカン!


 迎え撃つはずの山猫軍は、狼狽していた。


 太一が息絶えたのと同時に、銃が消えたからだ。


 そして、少女は、城門内に突入した。




 ☆☆☆王国軍陣営


「大変です!物見から連絡!アクア城門が吹き飛び。中で、乾いた雷の音がしています。じゅうで戦いが起きています!」


「ええい。何が起きている!仲間割れか?」


「否・・」


 王はタメを作り。一言、発した。


「鏖(みなごろし)が現れたのだろう」


「勇者のなれの果て、秘匿勇者の暴走と噂されている・・・あの化け物」


「理由は分からないが、何か目的があるのだろう。雷音が鳴るまで、我が軍は待機だ」


「「「御意!」」」


 しばらくすると、城門に、アクア伯爵と、孤児達が現れた。

 すぐに、保護をされ、王の前へ連れて来られ、事情を聞かれる。


「誰に助けられた?」


「あの背格好は、少女です。牢屋を粘土のようなものを、爆裂させて、鉄格子を吹き飛ばし、我らを解放してくれました。お礼にマフラーを渡しました」


「ますますわからん。しかし、助かった」


 山猫族は、略奪を是とする習性がある。

 都市には不向きな種族だ。


 人族の子供をさらい。奴隷として育てようとしていたとは、この転移者は分からなかったのか?それとも、異世界人は凶暴なのか?

 聖女殿の孤児院が襲われた・・・


「陛下、他国の山猫族が、我国に集まっている動きがあるとの各国から通告がありました」


「よし、2000の軍兵を残して、国境を固めるぞ。辺境伯にも連絡だ」


「「「「御意」」」


 この報告で、王の鏖への関心は薄れてしまった。




 ☆☆☆ユニグース家



「・・・ただいま戻りました」


「まあ、大丈夫だったの。異世界人が不良獣人族と一緒になって、魔道具で暴れているのよ。この領も危険だわ・・・」


「うん。通って来た。だけど、仲間割れして、全滅した・・・言っていた」


「本当!」


 この屋敷には、アクア伯爵家の夫人と令嬢が避難して、滞留している。


「メイド殿・・・父は、父は、無事かしら。何か聞いていない」


「うん。丸い顔で、口ひげの貴族の服を来ていたおじさんが城から出てくるのを見た・・・アクア伯爵と言っていた。このマフラーをもらった。寒そうだからって」


「「「まあ!」」」

「お父様のマフラーだわ!」


「良かったですわね。アクア夫人、ミリンダ様」

「ええ、今日中に向かいます。今までありがとうございました」



 ・・・・・



「あら、アリサちゃん。そう言えば、お母様の国、手がかりは見つかったの?」

「うん。まだ」


「そう、手がかりが見つかると良いわね。あら、お面、どこかの部族のお土産?」


「・・・そう」


 自衛隊のフェイスガードを見つかったが、部族のお面としか思われなかった。

 まだ、少女が、鏖だとは、誰も想像すらしていない。



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