9.リアルとリアリティ(バトル6)

 バトルに関してはそろそろ終わるかなと思う今日この頃です。

 一度畳んで、また書きたいことが出来たら続きから書くのもありですかね。

 今回は戦闘描写関連ですが、物語全体にも言えることを書こうと思います。

 「それっぽさ」についてです。


 サブタイトルにも書きましたが、こと小説に関しては必ずしもリアルである必要はないのかなと思います。

 ここで言うリアルとは、現実に必ずしも起こりえること、実現可能性という意味です。

 小説なのに言葉に対して厳密性を欠くのはいかがなものかと思いますが、まあ許してください。

 対してリアリティ、これも曖昧な表現になりますが、こちらは現実に起こりそうだな、起こるかも? 起きないかも? でもやっぱり起きるかも? そう思わされる状態のこととします。

 リアリティの方がより緩い扱いということですね。

 これは元の言葉の意味とは少し異なるので、その点についてはご注意ください。


 さて、話を戦闘描写に戻しましょう。

 前回でも触れましたが、普通の人間は5分も戦えばへとへとに疲れ果てます。

 私なんか1分でギブアップすること間違いなしです。

 じゃあ物語の中で必ず戦闘を5分以内に終わらせる必要があるか。

 答えはノーですよね。

 状況によってはゆるゆるとダラダラと戦い続けるシーンだってあるでしょうし、そこに制約を設けるのはマイナスが大きいと言えます。

 じゃあ登場人物たちに半日ぶっ通しで戦わせるのは?

 断続的であれば問題ありませんが、絶えず剣を振り回し続けるのはNGですよね。

 前者はリアルすぎるし、後者はリアリティに欠けるわけです。

 リアルであることはよい事ですが、リアリティがあれば描写は許容されるというのが私の考えです。

 もちろんノンフィクションを謳ってフィクションを書くようなことはまずいですが、なにせ「半身転生」はフィクションなので。


 大まかに私の意見を述べたところで、戦闘描写におけるリアリティを追求してみましょう。

 敵だけではなく味方も死ぬ、これはリアルですよね。

 味方だけなぜか都合よく覚醒する、これはリアリティに欠けますよね。

 連戦続きの格上が普段なら歯牙にもかけない三下に敗北する、これもリアルですよね。

 じゃあ片腕欠損状態で止血もせずに半日戦い続けるのは?

 これはリアリティに欠けますよね。

 そんな感じで何がOKで何がNGなのか決めていくと、物語におけるリアリティを担保するためのレギュレーションが構築されます。

 基準はありませんし、正直面白ければいいと思います。

 冷静になってみたらこんな設定が罷り通るのはおかしいだろうと思っても、その場のノリと勢いと面白さで押し通せるのならそれもいいでしょう。

 そんなこんなで、物語における「いい塩梅」というのを模索するのはやっぱり大事なんじゃないかなと思います。


 それっぽさ、リアリティが大事だよという話を一通りしたあとで、「半身転生」におけるリアルじゃない話をしましょう。

 例えば死者の蘇生。

 あの世界とこの世界では死の定義が若干ことなるのですが、まあズルだしリアリティに欠けますよね。

 死者は蘇らない方が緊張感がありますし、物語当初はそういう方向性で考えていた時期もありました。

 ただ、これは生き返りがアリの方が面白いな、幅が出るなと判断してリアリティを放棄したのです。

 その代わり生き返りに関するレギュレーションや方法論、人間がそれを制御する魔術システムについてはそれなりに設定を練りました。

 リアリティを放棄するときというのは、言い換えれば物語の中でしか通用しないことわりを定義するということでもあります。

 だから死者の蘇生機構に環蛇の理ウロボロスシステムなんて名前を付けたんですけどね。


 他にもエクストラスキルに関する描写は度々人智を超越することがありました。

 これは通常スキルとは異なり、エクストラスキルが純粋な神の力の一端であるという理由でゴリ押しました。

 神に至る道、神と同等の何かに成るためのプロセス、そういう意味を持たせるのは初めから決まっていたので、それなら多少リアリティを犠牲にしても面白く勢いのある描写を優先していいと考えたわけです。


 あれ、リアリティを遵守する大切さを説く回なのではないのか?

 そういうニュアンスになってしまったのですが、実際には違います。

 確かに基礎としてリアリティを大事にするのは重要ですし、特に私はそこを意識して書いてきました。

 ただ、私の技量ではリアル一筋だと物語が単調になってしまうので、面白さを手に入れるために部分的にリアリティを棄却しました。

 要するにバランスということです。

 リアリティを追求するのはあくまでも話に整合性を持たせるためで、それは設定の瑕疵が読者にバレることで面白さが低下することを防ぐためで、それは最終的に面白い話を作るためのルールです。

 だからリアリティを追及してつまらない話になったら意味がありません。

 だってフィクションですから。


 リアリティを欠いた分、空いた穴にはより面白い空想を注ぎ込む。


 単にリアルに書くより遥かに難しい作業ですし、同時に面白い部分でもあるでしょう。

 今思いついたのですが、物語を「面白くさせない」ためにリアリティを追及して、物語を「面白くさせる」ためにリアリティを捨てる。

 こう書けばバランスが大事なことが一目瞭然ですよね。

 伝えたいことが言語化できて気持ちがいいです笑。


 綺麗に終われそうなので、今回はこの辺で。

 次回はそうですね、修行やら訓練やらについて書きますかね。

 では。

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